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2015年1月 3日 (土)

「だれかがおれの人生のすべてを破壊しようとしている」〜『死んだ人形たちの季節』『刑事たちの四十八時間』

『死んだ人形たちの季節』トニ・ヒル著/宮﨑真紀訳
(集英社文庫 2014年邦訳)

取調べ中、呪術医オマルに暴力を振るい、休暇を取らされていたカタルーニャ州警察のエクトル・サルガド。復帰後、実業家の息子の転落死の調査を命じられ、バルセロナの街を奔走する。一方、オマルがおぞましい痕跡を残して失踪。呪術医の魔の手はどこに向かうのか? セックス、金、ドラッグ、いじめ、人権問題……さまざまなバルセロナの姿が複雑に絡み合っては浮かび上がる…(文庫カバーより)


Elveranodedosjuguetesmuertos バルセロナ警察三部作の第一部だそう。まずは珍しいスペインのミステリ小説ということでご当地らしさ期待したが、そっちは控えめ。ローカル色がさほどないという意味で普遍的、かつモダンな警察小説だった。主人公のサルガド警部をはじめ、相棒を務める新入りのレイラ・カストロ女性刑事なども、わりと辛口で好きなタイプです。

転落事故死と自殺と思われた2人の死が実は、という内容。うーん、なかなかにグロテスクな顛末だった。これはあれかな、ミイラ取りがミイラになるというやつ? ちょっと違うか。裕福な家族の軋轢、無関心が生んだ悲劇ですね。

もうひとつの出来事、アフリカ人少女の売春組織にかかわっていた呪術医オマルによるサルガド刑事への復讐は続編に引き継がれるのか、どうなのか。大きな謎を残して終わる。最終章でいきなり半年も過ぎているので穏やかではない。

ローカル色がないと書いたけど、スペインの格差社会が見え隠れするし、サルガド自身がアルゼンチン出身であったりと、南米やアフリカからの移民や出稼ぎが多そうな土地柄もうかがえるので、続編も楽しみに待つ。
そうそう、サルガド警部もこういった小説の主人公の例に漏れず離婚経験者だが、元妻の新しいパートナーが同性というのが珍しい。


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『刑事たちの四十八時間』アレックス・グレシアン著/谷泰子訳
(創元推理文庫 2014年邦訳)

英国中西部の炭鉱の村で、夫婦と幼児が突如失踪した。ロンドン警視庁のディ警部補とハマースミス巡査部長が捜索に派遣されたが、与えられた時間はわずか2日間。地下の坑道のため沈みゆく村を襲う原因不明の奇病、発見された不気味な目玉と血染めのドレス……。謎に次ぐ謎が刑事たちを翻弄する…(文庫カバーより)


Blackcountry 前作の『刑事たちの三日間』は、19世紀末、ロンドン警視庁に殺人捜査課ができたばかりという設定に新鮮味を覚えたが、田舎が舞台のこの2作目では、すっかりよくあるタイプの警察小説に。不気味な言い伝えが信じられている村というのも、わりとよくあるし。しかもそれほど効果的ではなかったような…。
しかし、メインとなる事件のほうの殺人犯の正体にはびっくりしたなあ…ちょっとずるいとも思ったけど、ゾッとした。その人物が鍵を握っているのは分かっていたんだけど、まさかストレートにそこに落ち着くとは。これってもしかして史上◯◯◯な殺人鬼か?

捜査に費やせる時間は2日間しかないのに、ハマースミス巡査部長は病に感染。しかも極寒の吹雪の中で、時間をロスすれば救える命も救えなくなるかもしれないというスリリングな状況なのに、なぜかディ警部補の身重の妻が炭鉱村までのこのことやってきて、捜査の邪魔をするのが解せず。いちゃいちゃしてないで早く捜査に出かけろって思った。
でも、こののんびりした感じがシリーズの個性といえば個性ですね。レギュラーの登場人物たちが終始楽観的であるのもそうかな。検査官とその知恵遅れの助手のほんわかした関係などは好きですが。

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