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2014年11月

2014年11月30日 (日)

今はまだ死ぬわけにいかない。〜『その女アレックス』ほか

『その女アレックス』ピエール・ルメートル著/橘明美訳
(文春文庫 2014年邦訳)

おまえが死ぬのを見たい――男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが……しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ…(文庫カバーより)


Pierrelemaitre 母国フランスでリーヴル・ド・ポッシュ読者大賞ミステリ部門、イギリスでCWA賞インターナショナル・ダガーを受賞。我が国でも、年末恒例の各所での翻訳ミステリー人気投票で、どうやら今年のナンバーワンを総なめしそうな作品。
売れてるみたいだし、いつの間にそんなに話題になっていたのかな? 文春だから? それともこういう驚きの仕掛けで唸らせる作品のほうが幅広いミステリ小説ファンに受けるってことですかね。

3部からなるサスペンス小説だが、これだけはっきりした3部構成も珍しい。アレックスという女性に対する印象が、第1部、第2部、第3部でがらりと変わるのは見事。確かに面白い!
しかし、ひっかかるのは硫酸に執着するようになった出来事だよ…うーん。題材として好きではないんだけど、でもここまでしないと、アレックスというヒロインの個性が成り立たないのかな。
一方で警察小説シリーズとしては、主人公のカミーユ警部が身長145センチのチビであることがたびたびネタにされてユーモアもあり、フロスト警部のフランス版ぽいところあり。家が裕福でいつも高級なファッションを装っているルイ、署でも捜査先でもタバコをねだったり備品をくすねたりが習慣となっているけちんぼのアルマンという捜査チームの仲間とは、厚い信頼関係が築かれており、警察小説といっても、ずいぶんほのぼのとしている印象だ。フランスのコメディ映画によくあるノリというか。

パリ生まれの著者が作家デビューしたのは、55歳のときとか。遅くデビューした作家の作品というのは、それまでの仕事の経験などから得た人生の機微が詰まっていたりするので、そこは期待したい。奇抜な展開に目を奪われたけれど、読ませる文章でもあったことは確か。


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『三銃士の息子』カミ著/高野優訳
(ハヤカワ・ミステリ 2014年邦訳)

さあてお立ち会い。人類史上最高のスーパーヒーローをご紹介しよう。かの三銃士を父に持つその名も〈三銃士の息子〉だ。なにしろダルタニャンの機知、アトスの気高さ、ポルトスの精力を一身に受け継いでいるのだから天下無敵も道理。そんなヒーローが、美しくも無垢で薄幸のヒロインを救うべく、悪の権化の公爵殿と闘うんだから、コレを見逃す手はない! かのチャップリンも脱帽したとかしないとかいう、ユーモアの神様カミが放つ冒険巨篇…(裏表紙より)


Cami こちらもフランス製。1919年に刊行されたユーモア小説。『三銃士』をはじめとするダルタニャン物語の続編パロディということらしいが、三銃士は未読なのですあしからず。

えっと、これは童話ですね。しかも、頓智で危機を乗り越えていくという…。私が幼い子供なら、早く続きを読んでくれと親にせがんでいたことでしょう? 著者自身によるヘタウマなのか素人くさいのか分からない挿絵も童話感を高める。

三銃士の息子(主人公なのに名前がない)の一行がスペインで出会う、「人道的な闘牛」を主催するキュウリモミータが、シュールすぎてインパクトあった。名前もね…。三銃士の息子の従者ミロム(アゴがしゃくれた小さいおじさんでいつも上げ底ブーツを履いている)も読み進めるにつれてかわいいと思えてきた。おや、なんだかんだで最後まで読んでしまいましたよ。

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