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2014年10月19日 (日)

「物語のない事実は、文字が全部消えてしまった道路標識にすぎない」~『ゴッサムの神々』ほか

『ゴッサムの神々』リンジー・フェイ(著)/野口百合子(訳)
(創元推理文庫 2013年邦訳)

1845年、ニューヨーク。バーテンダーのティムは街を襲った大火によって顔にやけどを負い、仕事と全財産を失ってしまう。新たに得た職は、創設まもないニューヨーク市警察の警官だった。慣れない仕事をこなしていたある夜、彼は血まみれの少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走って気絶した彼女の言葉どおり、翌日胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。だがそれは、ニューヨークを震撼させた大事件の始まりにすぎなかった…(文庫扉より)


Thegodsofgotham 少し前に、ロンドン警視庁に殺人捜査課が創設された当時を舞台にした小説(『刑事たちの三日間』)を読んだけれど、これは警察という組織が初めて組まれたニューヨークの物語。
時は、アイルランドからの移民が母国のジャガイモ飢饉から逃れてニューヨークの港に続々と押し寄せてきており、旧住民による彼らの排斥運動が起き、プロテスタント対カトリックの対立もエスカレートしている最中。しかし、「自分の身は自分で守る」という開拓時代からの精神が根付く地に、警察組織ができても、市民からはそれほど歓迎されていないようだし、ましてや最初に警官に雇われた民族混成部隊には、職にあぶれていたごろつきや乱暴者もいる…。犯罪者たちの隠語を理解するには、その道に通じたメンバーも必要ということらしい。

アメリカの歴史はもちろん、主人公のティムと分署長の兄ヴァルとの確執、ティムの初恋の行方などの展開も読ませたし、ほかの登場人物たちもなかなか魅力的。表紙のイラストから、ヤングアダルトな小説をイメージしていたけれど、かなり歯ごたえあった。ひとつには文章にクセがあってするすると読みこなせなかったというのもある。翻訳のせいかなと最初は思ったが、もとからそんな感じなのかも。読みなれると味わいになるような表現方法かな。


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『緋の収穫祭』S・J・ボルトン(著)/法村里絵(訳)
(創元推理文庫 2014年邦訳)

「血の収穫祭」と呼ばれる伝統的な儀式が残る英国の小さな町。ある日、教会の墓地の塀が崩れて、そばにあった幼い少女の墓が壊れてしまう。だが墓からは、そこに眠っているはずのない二人の子供の遺体までもが発見された。少し前まで土には埋められていなかったようで、頭蓋骨には酷い損傷があった。この地でかつて何があったのか? 血塗られた町の秘密を暴く戦慄のミステリ…(文庫カバーより)


Bloodharvest S・J・ボルトンの3作目。地主のような一家が、古くからのしきたりとともに、よそ者には見えない権力で支配する小さな町。そこに新たに引っ越してきた一家には、3人の子供たちがいて、遊び場となっている隣接した古い教会の墓場で弟が幽霊と会話し、その秘密を兄にも話そうとしない。一方、末っ子の妹は常に何者かに見張られていて、ついには誘拐未遂まで起こる。一家の危機を察した、隣人であり、やはりこの町に新任としてやってきた司祭ハリーと、精神科医エヴァは、町で育った子供たちに現れる風土病を手がかりに、謎に迫っていく。

閉鎖的な町とか、奇っ怪な出来事、不気味な伝統儀式など、なんとなく横溝正史風。暴かれた真相もえぐいわ…。期待を上回る鬼畜なゲス野郎の登場で、ワクワクした。しかし、この作家はいつも初々しい少女が好むようなラブロマンスも絡めてくるんだよね。そこを邪魔と感じる人もいそう。読ませるんだけども。

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