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2014年10月19日 (日)

地理にも強いリーチャー 〜『最重要容疑者」ほか

『最重要容疑者』リー・チャイルド著/小林宏明訳
(講談社文庫 2014年邦訳)

冬のネブラスカの夜間。ヴァージニアに向かおうとしていたジャック・リーチャーは、州間高速道路の路肩で目当ての車に拾われた。だが、運転席と助手席の男二人は辻褄の合わない話を続け、後部座席の女は不安げに黙り込んでいる。そのころ付近では、殺人事件発生の報を受け、FBIが動き始めていた。リーチャーは最悪の事態に陥ったことを悟った…(出版社サイトより)


Wantedman 孤高のアウトロー、ジャック・リーチャー・シリーズはこれで17作目。翻訳されたのは6作目。
出だしこそ、期待どおりだったんだけどね…。アマゾンのコメント見ても、がっかりしている人が多い。敵のアジトに3人で乗り込もうとするあたりから、これはあかんと思った。ちょっと『アウトロー』とかぶるところもあったしね。古い作品の翻訳を待ちますか。

リーチャーが銃で決闘をする場面があるのだけれど、リーチャーがとったあの作戦は、パトリック・デウィットの『シスターズ・ブラザーズ』での決闘シーンと同じで、あっちではいかにも姑息だったのに、ここではリーチャー流の正義のもとに正当化されていて笑った。無敵という設定だから構わないけどさ…。


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『夜愁』サラ・ウォーターズ著/中村有希訳
(創元推理文庫 2007年邦訳)

1947年、ロンドン。第二次世界大戦の爪痕が残る街で生きるケイ、ジュリアとその同居人のヘレン、ヴィヴとダンカンの姉弟たち。戦争を通じて巡り合った人々は、毎日をしぶとく生きていた。そんな彼女たちが積み重ねてきた歳月を、夜は容赦なく引きはがす。想いは過去へとさかのぼり、隠された真実や心の傷をさらけ出す。ウォーターズが贈るめくるめく物語。ブッカー賞最終候補作…(文庫カバーより)


Nightwatch ミステリージャンルではなさそうだからと読み残していたサラ・ウォーターズ作品。
心の描写がうまいなあ。そして、生々しい! 自分にも覚えのある感情にドキリとしたり。
いい作品でした。百合作家という呼び方はこの人にはもはや軽すぎるね。戦時下という特殊な事情もあるだろうけど、同性同士が引かれ合うのがごく自然に描かれていて、愛について、恋愛と友情にそれほどの違いはないのではないかという気分にもなってくる。

終戦間もない1947年に始まり、1944年、1941年と過去に遡っていく構成の群像劇。男装していてミステリアスなケイ、同居人への一方通行の思いに身を焦がすヘレン、不倫関係に嫌気を感じ始めているヴィヴ、身内でもない老人の家に閉じこもって暮らすヴィヴィの弟ダンカン。読み終わったあとは、最初の1947年の章で感じたかすかな光を頼りに、彼らの未来が好転したことを祈りたくなる。


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『北雪の釘』ロバート・ファン・ヒューリック著/和邇桃子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2006年)

北方の国境近く、北州に知事として赴任したディー判事。以来数カ月というもの平穏な日々が続いていた。ところが、町で無残な女性の首なし死体が見つかったことから、判事の周辺はにわかに風雲急を告げる。いずこへともなく姿を消した被害者の夫を名指して糾弾する家族。だが被害者の衣服が消えていることに判事は首をひねる。あるいは土地の名士の娘が数日前から失踪した件とも関係があるのかもしれない。事件の目鼻もつかぬうちに、高名な武道家が浴場で何者かに毒殺される事件も起きた。そして判事はかつてない窮地に追いこまれることに…(裏表紙より)


Chinesenailmurders 挿絵が楽しいこのシリーズ、久々に手にした。1989年の『中国鉄釘殺人事件』の改訳版。
いままで読んだ中では、あまり印象に残らない作品。最初は新鮮だったこの国のこの時代の設定に慣れてしまったからか…。
市井の描写など面白いとは思うけど、古代以来の中国文化にまったく詳しくないと、そこに仕掛けられている遊びにも気づかず読んでしまうところがあるからなんともいえません。

巻末にロバート・ファン・ヒューリックについての解説文が載っている。オランダの外交官であり、広範な教養をもつ文人であり、房中術の研究家で、古代中国を舞台にした小説だけでなく散文や書画作品でも才能を発揮したとか。大使として何度も日本に派遣されているので、日本でもディー判事シリーズが刊行された当初は知名度も高かったんでしょうか? 

シリーズ作品が原案となったツイ・ハーク監督の映画「王朝の陰謀」はわざわざ映画館まで見に行って、けっこう満足した覚え。この夏に公開された続編「ライズ・オブ・シードラゴン」は行かずじまい。面白かったんだろうか。

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