« 2014年7月 | トップページ | 2014年11月 »

2014年10月

2014年10月19日 (日)

地理にも強いリーチャー 〜『最重要容疑者」ほか

『最重要容疑者』リー・チャイルド著/小林宏明訳
(講談社文庫 2014年邦訳)

冬のネブラスカの夜間。ヴァージニアに向かおうとしていたジャック・リーチャーは、州間高速道路の路肩で目当ての車に拾われた。だが、運転席と助手席の男二人は辻褄の合わない話を続け、後部座席の女は不安げに黙り込んでいる。そのころ付近では、殺人事件発生の報を受け、FBIが動き始めていた。リーチャーは最悪の事態に陥ったことを悟った…(出版社サイトより)


Wantedman 孤高のアウトロー、ジャック・リーチャー・シリーズはこれで17作目。翻訳されたのは6作目。
出だしこそ、期待どおりだったんだけどね…。アマゾンのコメント見ても、がっかりしている人が多い。敵のアジトに3人で乗り込もうとするあたりから、これはあかんと思った。ちょっと『アウトロー』とかぶるところもあったしね。古い作品の翻訳を待ちますか。

リーチャーが銃で決闘をする場面があるのだけれど、リーチャーがとったあの作戦は、パトリック・デウィットの『シスターズ・ブラザーズ』での決闘シーンと同じで、あっちではいかにも姑息だったのに、ここではリーチャー流の正義のもとに正当化されていて笑った。無敵という設定だから構わないけどさ…。


***********************************************************

『夜愁』サラ・ウォーターズ著/中村有希訳
(創元推理文庫 2007年邦訳)

1947年、ロンドン。第二次世界大戦の爪痕が残る街で生きるケイ、ジュリアとその同居人のヘレン、ヴィヴとダンカンの姉弟たち。戦争を通じて巡り合った人々は、毎日をしぶとく生きていた。そんな彼女たちが積み重ねてきた歳月を、夜は容赦なく引きはがす。想いは過去へとさかのぼり、隠された真実や心の傷をさらけ出す。ウォーターズが贈るめくるめく物語。ブッカー賞最終候補作…(文庫カバーより)


Nightwatch ミステリージャンルではなさそうだからと読み残していたサラ・ウォーターズ作品。
心の描写がうまいなあ。そして、生々しい! 自分にも覚えのある感情にドキリとしたり。
いい作品でした。百合作家という呼び方はこの人にはもはや軽すぎるね。戦時下という特殊な事情もあるだろうけど、同性同士が引かれ合うのがごく自然に描かれていて、愛について、恋愛と友情にそれほどの違いはないのではないかという気分にもなってくる。

終戦間もない1947年に始まり、1944年、1941年と過去に遡っていく構成の群像劇。男装していてミステリアスなケイ、同居人への一方通行の思いに身を焦がすヘレン、不倫関係に嫌気を感じ始めているヴィヴ、身内でもない老人の家に閉じこもって暮らすヴィヴィの弟ダンカン。読み終わったあとは、最初の1947年の章で感じたかすかな光を頼りに、彼らの未来が好転したことを祈りたくなる。


***********************************************************

『北雪の釘』ロバート・ファン・ヒューリック著/和邇桃子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2006年)

北方の国境近く、北州に知事として赴任したディー判事。以来数カ月というもの平穏な日々が続いていた。ところが、町で無残な女性の首なし死体が見つかったことから、判事の周辺はにわかに風雲急を告げる。いずこへともなく姿を消した被害者の夫を名指して糾弾する家族。だが被害者の衣服が消えていることに判事は首をひねる。あるいは土地の名士の娘が数日前から失踪した件とも関係があるのかもしれない。事件の目鼻もつかぬうちに、高名な武道家が浴場で何者かに毒殺される事件も起きた。そして判事はかつてない窮地に追いこまれることに…(裏表紙より)


Chinesenailmurders 挿絵が楽しいこのシリーズ、久々に手にした。1989年の『中国鉄釘殺人事件』の改訳版。
いままで読んだ中では、あまり印象に残らない作品。最初は新鮮だったこの国のこの時代の設定に慣れてしまったからか…。
市井の描写など面白いとは思うけど、古代以来の中国文化にまったく詳しくないと、そこに仕掛けられている遊びにも気づかず読んでしまうところがあるからなんともいえません。

巻末にロバート・ファン・ヒューリックについての解説文が載っている。オランダの外交官であり、広範な教養をもつ文人であり、房中術の研究家で、古代中国を舞台にした小説だけでなく散文や書画作品でも才能を発揮したとか。大使として何度も日本に派遣されているので、日本でもディー判事シリーズが刊行された当初は知名度も高かったんでしょうか? 

シリーズ作品が原案となったツイ・ハーク監督の映画「王朝の陰謀」はわざわざ映画館まで見に行って、けっこう満足した覚え。この夏に公開された続編「ライズ・オブ・シードラゴン」は行かずじまい。面白かったんだろうか。

「コミンチャーモ(さあ、はじめよう)」〜『カルニヴィア2 誘拐』ほか

『カルニヴィア2 誘拐』ジョナサン・ホルト(著)/奥村章子(訳)
(ハヤカワ・ミステリ 2014年邦訳)

イタリア駐留米軍基地の建設現場で発見された人骨は、第二次世界大戦中に謎の失踪を遂げたパルチザンのものだった。当時何があったのか? その頃、憲兵隊の大尉カテリーナと米軍の情報将校ホリーは、米軍少佐の娘ミアの誘拐事件の捜査を始める。犯人は基地の建設反対を訴えて、ミアを責め苛む映像をインターネットで全世界に配信する。狡猾な犯人に苦慮するカテリーナとホリーはSNS「カルニヴィア」の創設者ダニエーレに協力を求めるが…。(裏表紙より)


Abduction イタリア・ヴェネツィアを舞台にした”国際スリラー”3部作の2作目。
ともに米軍基地のあるイタリアと日本において、アメリカの影響力はとてもよく似ているというのが、政権も自由に操ろうとするCIAの工作など多くの史実を題材にしたこのシリーズを読むとよく分かるよね。いやむしろ、現在の日本もこうなのかもしれないという思いが強くなる。マスコミは大々的には暴かないけれども。

あと、誘拐グループが少女に行う”拷問ではない”強化尋問手法は、CIAが編み出したもので、グアンタナモやアフガニスタンのパルワン収容所などで実際に行われてきた(いまだ行われている)ものであるというのも衝撃的だ。著者のもとにアメリカの読者からクレームが寄せられることもあるって、さもありなん。

その昔、携帯電話の登場がミステリ小説を大きく変えたと言われたが、今はSNSや動画配信やWiFiといったさまざまなインターネットサービスがモダンミステリーならではのストーリーを生む。このシリーズ作品では、広く普及したそれらがごく当たり前のこととして出てくるので、異国が舞台であっても、普段からネットをよく利用する読者には親しみを持って読めるかも。

しかし、アメリカ国家安全保障局のネット監視プログラム「PRISM」に収集された個人のネット履歴から犯人を特定していくところは怖いわ〜。パソコンの履歴を消せばいいといったそんな単純なものではないんだね。

前作に続き、旬の郷土料理などのグルメの描写も楽しかった! そして、カテリーナの性的奔放さがパワーアップ。イタリア人にはこれが普通? まったく恐れ入るよね(笑)


***********************************************************

『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン(著)/野口百合子(訳)
(創元推理文庫 2014年邦訳)

捕虜収容所でユダヤ人のあんたに親切とはいえなかったナチスの将校が生きているかもしれない――臨終の床にある戦友からそう告白された、87歳の元殺人課刑事バック・シャッツ。その将校が金の延べ棒を山ほど持っていたことが知られ、周囲がそれを狙ってどんどん騒がしくなっていき…。武器は357マグナムと痛烈な皮肉。最高に格好いい主人公を生み出した、鮮烈なデビュー作…(文庫カバーより)


Dontevergetold バック・シャッツという名前がカッコイイね(本名はバルーク)。殺人課刑事時代の活躍はいまでも署内の伝説。「ダーティー・ハリー」のモデルにもなったらしい87歳が、大学生の孫の助けを借りて逃亡ナチを見つけ出すという設定も痛快そうじゃん。でも、連続殺人が起きるあたりから、単純にスカッとする話ではないと気づき…。

お年寄り探偵なら、L・A・モース『オールド・ディック』やロバート・ゴダート『還らざる日々』のほうが好きだな。本作は主人公が、ユダヤ人迫害の被害者として、70年近く経た今もナチに対する憎しみをまだ生々しく持っていたり、小説の中でも宗教の話がちょこちょこ出てくるあたりが、閉鎖的な感じがしてしまうというか…。(ちなみにイスラエルの組織が追うナチ戦犯はアメリカ国内だけでもまだ数百名いるらしいけど!)
さらに老いについての自虐っぽいユーモアも、さすがに87歳(作中で88歳の誕生日も迎える)ともなると笑えないというか…。しかし、これ、続編もあるのか!びっくりだわ。


***********************************************************

『救いようがない』リンウッド・バークレイ(著)/長島水際(訳)
(ヴィレッジブックス 2014年邦訳)

家族思いだが極度の心配性のSF作家ザック。近所の少女が殺害されたことから、都会は危険と不平たらたらの妻子を連れて郊外に移り住んだが、そこで今度は死体を発見。さらに気のいい隣人にもじつは裏の顔が…。郊外も物騒に思えてきた矢先、家族の不用心さを戒めようと、よかれと起こした行動で、なぜか命まで狙われだして…(文庫カバーより)


Badmove ストーリーに破綻があるわけでもなく、キャラクターもしっかりしていると思う。なのにどうなんだ、この単純さ、退屈さは…。正直、時間をムダにした。『失踪家族』の著者という時点で躊躇はしたのに、表紙デザインが小説風だったものでついね…。

これを読んでいたときにちょうどTVドラマ「ブレイキング・バッド」を立て続けに見ていた。小説に登場する心配症の父親は、あのドラマの主人公のように病気になったり、犯罪に手を染めたりということはないけど、まさにあんな感じの(シーズン1あたりの)絵に描いたようなアメリカ風の家族だし、父親が家族のために良かれと思って起こす行動がどんどん墓穴を掘っていくところが似ていなくもなかった。

「物語のない事実は、文字が全部消えてしまった道路標識にすぎない」~『ゴッサムの神々』ほか

『ゴッサムの神々』リンジー・フェイ(著)/野口百合子(訳)
(創元推理文庫 2013年邦訳)

1845年、ニューヨーク。バーテンダーのティムは街を襲った大火によって顔にやけどを負い、仕事と全財産を失ってしまう。新たに得た職は、創設まもないニューヨーク市警察の警官だった。慣れない仕事をこなしていたある夜、彼は血まみれの少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走って気絶した彼女の言葉どおり、翌日胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。だがそれは、ニューヨークを震撼させた大事件の始まりにすぎなかった…(文庫扉より)


Thegodsofgotham 少し前に、ロンドン警視庁に殺人捜査課が創設された当時を舞台にした小説(『刑事たちの三日間』)を読んだけれど、これは警察という組織が初めて組まれたニューヨークの物語。
時は、アイルランドからの移民が母国のジャガイモ飢饉から逃れてニューヨークの港に続々と押し寄せてきており、旧住民による彼らの排斥運動が起き、プロテスタント対カトリックの対立もエスカレートしている最中。しかし、「自分の身は自分で守る」という開拓時代からの精神が根付く地に、警察組織ができても、市民からはそれほど歓迎されていないようだし、ましてや最初に警官に雇われた民族混成部隊には、職にあぶれていたごろつきや乱暴者もいる…。犯罪者たちの隠語を理解するには、その道に通じたメンバーも必要ということらしい。

アメリカの歴史はもちろん、主人公のティムと分署長の兄ヴァルとの確執、ティムの初恋の行方などの展開も読ませたし、ほかの登場人物たちもなかなか魅力的。表紙のイラストから、ヤングアダルトな小説をイメージしていたけれど、かなり歯ごたえあった。ひとつには文章にクセがあってするすると読みこなせなかったというのもある。翻訳のせいかなと最初は思ったが、もとからそんな感じなのかも。読みなれると味わいになるような表現方法かな。


***********************************************************

『緋の収穫祭』S・J・ボルトン(著)/法村里絵(訳)
(創元推理文庫 2014年邦訳)

「血の収穫祭」と呼ばれる伝統的な儀式が残る英国の小さな町。ある日、教会の墓地の塀が崩れて、そばにあった幼い少女の墓が壊れてしまう。だが墓からは、そこに眠っているはずのない二人の子供の遺体までもが発見された。少し前まで土には埋められていなかったようで、頭蓋骨には酷い損傷があった。この地でかつて何があったのか? 血塗られた町の秘密を暴く戦慄のミステリ…(文庫カバーより)


Bloodharvest S・J・ボルトンの3作目。地主のような一家が、古くからのしきたりとともに、よそ者には見えない権力で支配する小さな町。そこに新たに引っ越してきた一家には、3人の子供たちがいて、遊び場となっている隣接した古い教会の墓場で弟が幽霊と会話し、その秘密を兄にも話そうとしない。一方、末っ子の妹は常に何者かに見張られていて、ついには誘拐未遂まで起こる。一家の危機を察した、隣人であり、やはりこの町に新任としてやってきた司祭ハリーと、精神科医エヴァは、町で育った子供たちに現れる風土病を手がかりに、謎に迫っていく。

閉鎖的な町とか、奇っ怪な出来事、不気味な伝統儀式など、なんとなく横溝正史風。暴かれた真相もえぐいわ…。期待を上回る鬼畜なゲス野郎の登場で、ワクワクした。しかし、この作家はいつも初々しい少女が好むようなラブロマンスも絡めてくるんだよね。そこを邪魔と感じる人もいそう。読ませるんだけども。

2014年10月18日 (土)

「この闘いにおいては、人々は生きるか死ぬかなのです」〜『北京から来た男』ほか

『北京から来た男』ヘニング・マンケル(著)/柳沢由美子(訳)
(東京創元社 2014年邦訳)

凍てつくような寒さの早朝、スウェーデンの中部の小さな谷間でその惨劇は起きた。村のほぼ全ての家の住民が惨殺されていたのだ。ほとんどが老人ばかりの過疎の村が、なぜ? 女性裁判官ビルギッタは、亡くなった母親がその村の出身であったことを知り、現場に向かう。現場に落ちていた赤いリボン、ホテルの防犯ビデオに映っていた謎の人影。事件はビルギッタを世界の反対側へと導く…(出版社サイトより)


Kinesen スウェーデン作家マンケルのノンシリーズ作品。これも国際問題や人権に関心の高いマンケルらしい作品だった。著者の人柄や考え方が主人公(この作品は女性だけど)に投影されていると感じるのも同じ。いつもよりイデオロギーを押し出したところもあったけども、やはり終盤はエンターテインメント色が増し、ハラハラさせて一気に読ませる。ロンドンの場面はちょっと力技かなと思ったけど、面白かったです。殺人の動機など事件の背景は、同じノンシリーズの『タンゴステップ』に似てるかも。

マンケル作品では、これまで東欧やアフリカ、中米、南米など異国からの訪問者がストーリーに密接にかかわっており、本作もタイトルのとおり。単に中国人が登場するだけでなく、物語はいきなり19世紀半ばに飛んで、貧しい中国人兄弟が開拓時代のアメリカで味わった苦難が綴られたり、主人公が北京に観光旅行に出かけたりと、主題が中国そのもので、最初の空前の大量殺人事件もかすむほどのスケールといいましょうか。改めてテレビドラマがどうなっているのか…お金がかかってそうだね。

アフリカの豊富なエネルギー・鉱物資源に目をつけた中国は、2000年に中国アフリカ協力フォーラムを発足させて以降、毎年巨額をアフリカに投資。企業とともに労働者も送り込む政策は「新植民地主義」と批判されるが、いまではアフリカの最大貿易国。2010年には将来の食糧難を見越して、アフリカの未開の農地開発にも乗り出している。
小説では今の中国の象徴として、この農業協力フォーラムが題材となっていた。欧米の食いものにされてきた貧しい国が経済大国となり、先進国がやってきたことを繰り返す。そんな歴史の因果が込められた本だった。


***********************************************************

『特捜部Q ―知りすぎたマルコ―』ユッシ・エーズラ・オールスン(著)/吉田薫(訳)
(ハヤカワ・ミステリ 2014年邦訳)

「特捜部Q」――未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の一部署である。「Q」が今回挑むのは、外務官僚の失踪事件だ。真面目で心優しいこの官僚は、出張先のアフリカからなぜか予定を早めて帰国後、ぷっつりと消息を絶った。背後には大掛かりな公金横領が絡むようなのだが……。事件のカギを握るのは、叔父が率いる犯罪組織から逃げ出したばかりの15歳の少年マルコ。この賢い少年と「Q」の責任者カール・マーク警部補がすれ違い続ける間に、組織の残忍な手がマルコに迫る…(裏表紙より)


本が分Marcoeffekten厚いほどうれしくなる特捜部Qシリーズも、もう5作目か!早い!
構成はいつもよりあっさりめだが、いつもより国際色豊か、そして、ロマの少年マルコの「逃亡劇」がメインストーリーになっている。犯罪組織の首領ゾーラや、謎のアフリカ人殺し屋から終われ、警察にも頼れないからと、孤独な逃亡を続けるとても賢い少年マルコが、ついに「Q」の前に姿を表したときのメンバーの反応が最高だったね。カールもアサドもローセも善い人だ!

アフリカへの援助を隠れ蓑に公金横領。そこには国際的な犯罪組織や官僚が絡んでおり、下っ端の汚れ仕事を引き受けるのがロマ集団。まあ大抵どの世界でも汚れ仕事は、社会の底辺に押し付けられる。といっても、この小説に登場するロマ一族の首領は、アメリカ生まれのヒッピー崩れの犯罪者で、恐怖によって集団を束ねている様子。子供たちに物乞いやスリをさせて稼ぐロマは現実にもいるのだろうが、ここでは彼らも被害者として扱っているところが著者の良識を感じさせてよい感じです。というか、それがノーマルというものか。


***********************************************************

『レクイエムの夜』レベッカ・キャンドル(著)/宇佐川晶子(訳)
(ハヤカワ文庫 2010年邦訳)

心臓を刺されて死んだ若い男。警察署の〈身元不明死体の廊下〉に張り出されていた写真の一枚に、わたしは弟を見つけた。美貌の女装歌手として愛されていた弟はなぜ殺されたのか? 絶対に殺人犯を突き止める。そう決意してひそかに調べはじめたものの、わたしの息子だと主張する謎の幼い少年が現われたことにより、社会の裏にうごめく様々な思惑と対峙することに…(文庫カバーより)


Traceofsmoke_2 ハワイ在住のドイツ人作家による、ナチス政権前夜のベルリンを舞台にしたミステリ。主人公の新聞記者ハンナは、いつもの記事ネタを得るために警察署を訪れ、そこに身元不明の殺人事件の被害者として弟エルンストの写真を発見しショックを受けるが、彼女には警察にそれを告げられない理由があった。シオニストとして政府から目を付けられている友人とその息子をアメリカに亡命させるために、ハンナと弟は身分証明書を貸していたのだ。ということで、ハンナはたったひとりで犯人を探すが、弟の周辺にも、警察にもナチスがいるし、弟の所持品からは持っているだけで命を狙われるのが確実な品々が見つかるし…。

いちおうサスペンスフルな歴史ミステリであるわけだが、あまりそういう印象が残らないのは、謎の幼い少年アントンの存在だな。この子が、やることしゃべることいちいち大人たらしで、可愛いくてたまらん。ハンナとアントンの関係は、映画「グロリア」(カサヴェテス版)を思い出させた。主人公はあんなに渋くないけどね。

« 2014年7月 | トップページ | 2014年11月 »

インデックス

無料ブログはココログ