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2014年10月19日 (日)

「コミンチャーモ(さあ、はじめよう)」〜『カルニヴィア2 誘拐』ほか

『カルニヴィア2 誘拐』ジョナサン・ホルト(著)/奥村章子(訳)
(ハヤカワ・ミステリ 2014年邦訳)

イタリア駐留米軍基地の建設現場で発見された人骨は、第二次世界大戦中に謎の失踪を遂げたパルチザンのものだった。当時何があったのか? その頃、憲兵隊の大尉カテリーナと米軍の情報将校ホリーは、米軍少佐の娘ミアの誘拐事件の捜査を始める。犯人は基地の建設反対を訴えて、ミアを責め苛む映像をインターネットで全世界に配信する。狡猾な犯人に苦慮するカテリーナとホリーはSNS「カルニヴィア」の創設者ダニエーレに協力を求めるが…。(裏表紙より)


Abduction イタリア・ヴェネツィアを舞台にした”国際スリラー”3部作の2作目。
ともに米軍基地のあるイタリアと日本において、アメリカの影響力はとてもよく似ているというのが、政権も自由に操ろうとするCIAの工作など多くの史実を題材にしたこのシリーズを読むとよく分かるよね。いやむしろ、現在の日本もこうなのかもしれないという思いが強くなる。マスコミは大々的には暴かないけれども。

あと、誘拐グループが少女に行う”拷問ではない”強化尋問手法は、CIAが編み出したもので、グアンタナモやアフガニスタンのパルワン収容所などで実際に行われてきた(いまだ行われている)ものであるというのも衝撃的だ。著者のもとにアメリカの読者からクレームが寄せられることもあるって、さもありなん。

その昔、携帯電話の登場がミステリ小説を大きく変えたと言われたが、今はSNSや動画配信やWiFiといったさまざまなインターネットサービスがモダンミステリーならではのストーリーを生む。このシリーズ作品では、広く普及したそれらがごく当たり前のこととして出てくるので、異国が舞台であっても、普段からネットをよく利用する読者には親しみを持って読めるかも。

しかし、アメリカ国家安全保障局のネット監視プログラム「PRISM」に収集された個人のネット履歴から犯人を特定していくところは怖いわ〜。パソコンの履歴を消せばいいといったそんな単純なものではないんだね。

前作に続き、旬の郷土料理などのグルメの描写も楽しかった! そして、カテリーナの性的奔放さがパワーアップ。イタリア人にはこれが普通? まったく恐れ入るよね(笑)


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『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン(著)/野口百合子(訳)
(創元推理文庫 2014年邦訳)

捕虜収容所でユダヤ人のあんたに親切とはいえなかったナチスの将校が生きているかもしれない――臨終の床にある戦友からそう告白された、87歳の元殺人課刑事バック・シャッツ。その将校が金の延べ棒を山ほど持っていたことが知られ、周囲がそれを狙ってどんどん騒がしくなっていき…。武器は357マグナムと痛烈な皮肉。最高に格好いい主人公を生み出した、鮮烈なデビュー作…(文庫カバーより)


Dontevergetold バック・シャッツという名前がカッコイイね(本名はバルーク)。殺人課刑事時代の活躍はいまでも署内の伝説。「ダーティー・ハリー」のモデルにもなったらしい87歳が、大学生の孫の助けを借りて逃亡ナチを見つけ出すという設定も痛快そうじゃん。でも、連続殺人が起きるあたりから、単純にスカッとする話ではないと気づき…。

お年寄り探偵なら、L・A・モース『オールド・ディック』やロバート・ゴダート『還らざる日々』のほうが好きだな。本作は主人公が、ユダヤ人迫害の被害者として、70年近く経た今もナチに対する憎しみをまだ生々しく持っていたり、小説の中でも宗教の話がちょこちょこ出てくるあたりが、閉鎖的な感じがしてしまうというか…。(ちなみにイスラエルの組織が追うナチ戦犯はアメリカ国内だけでもまだ数百名いるらしいけど!)
さらに老いについての自虐っぽいユーモアも、さすがに87歳(作中で88歳の誕生日も迎える)ともなると笑えないというか…。しかし、これ、続編もあるのか!びっくりだわ。


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『救いようがない』リンウッド・バークレイ(著)/長島水際(訳)
(ヴィレッジブックス 2014年邦訳)

家族思いだが極度の心配性のSF作家ザック。近所の少女が殺害されたことから、都会は危険と不平たらたらの妻子を連れて郊外に移り住んだが、そこで今度は死体を発見。さらに気のいい隣人にもじつは裏の顔が…。郊外も物騒に思えてきた矢先、家族の不用心さを戒めようと、よかれと起こした行動で、なぜか命まで狙われだして…(文庫カバーより)


Badmove ストーリーに破綻があるわけでもなく、キャラクターもしっかりしていると思う。なのにどうなんだ、この単純さ、退屈さは…。正直、時間をムダにした。『失踪家族』の著者という時点で躊躇はしたのに、表紙デザインが小説風だったものでついね…。

これを読んでいたときにちょうどTVドラマ「ブレイキング・バッド」を立て続けに見ていた。小説に登場する心配症の父親は、あのドラマの主人公のように病気になったり、犯罪に手を染めたりということはないけど、まさにあんな感じの(シーズン1あたりの)絵に描いたようなアメリカ風の家族だし、父親が家族のために良かれと思って起こす行動がどんどん墓穴を掘っていくところが似ていなくもなかった。

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