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2014年5月

2014年5月24日 (土)

家族の秘密~『逆さの骨』『ナイン・ドラゴンズ』ほか

『逆さの骨』ジム・ケリー著/玉木亨訳
(創元推理文庫 2014年邦訳)

かつて捕虜収容所だった発掘現場で奇妙な骸骨が発見された。その男は脱出用と思われるトンネルを収容所に向かって這い進んでいたうえ、額を拳銃で打ち抜かれていたのだ。脱走兵にしては謎めいた殺害状況に、新聞記者ドライデンは調査を開始する。だが数日後、同じ現場で新たな死体を発見し…(文庫カバーより)


Moontunnel ゴミ処理場の古いゴミ層から発生したガスがスモッグとなって街を覆うさなか、鉄器時代の遺跡発掘現場で白骨死体が見つかる。異臭がするスモッグは、地下に封印された事件が暴かれる前触れだったのか…。
毎回、イギリス東部の都市イーリーに密着した題材が個性にもなっているこのシリーズ。『水時計』の水、『火焔の鎖』の火ときて、今回のテーマは「土」という捉え方もできるので、タイトルは原題通り『月の地下道』(Moon Tunnel)で良かった気もする。それではミステリ小説らしくないかな?

第二次世界大戦時に捕虜としてイーリーに収容されたイタリア兵とドイツ兵の秘密が、白骨の発見をきっかけに明らかになるというのが大筋のストーリーだが、当時の出来事と白骨死体が直接には関係していないところがミソ。時代の異なる複数の殺人を絡ませて、でも結局はあの戦争があったからこそすべては引き起こされたという地点に落ち着くのが見事。

これでもかってくらいの霧の描写が印象的だった。「羽根掛け布団のような」「木綿のような静寂」「病人の痰のような」「枕のような白さ」「厚手の白いガーゼのような」「幽霊の指のように」…そもそもイギリスは霧が多いから、霧を表現する言葉が豊富と教わりました。人によってはくどいと感じるくらいだろうが、こういう情景描写もこのシリーズの特徴で、英国本格ミステリらしくもある。

ドライデンの専属タクシーの運転手ハンフが、毎度いい味を添える。おんぼろタクシーにひきこもって外に出ようとしないハンフはかなりの変わり者のようだが、ドライデンとは互いに言葉には出さなくても通じ合えるような、その距離感がいい。
「ハンフはドライデンの発言を無視して、サンドイッチに挟んであるソーセージを小さなすぽっという音とともに吸いだした」…こんな一文を読んだときが実はいちばん楽しい。


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『ナイン・ドラゴンズ』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(講談社文庫 2014年邦訳)

かつて暴動が起きたエリアで酒店を営む中国人が銃殺された。ロス市警本部殺人事件特捜班のボッシュは、事件の背後に中国系犯罪組織・三合会(トライアッド)が存在することをつきとめる。報復を恐れず追うボッシュの前に現れる強力な容疑者。その身柄を拘束した直後、香港に住むボッシュの娘が監禁されている映像が届く…(文庫カバーより)


Ninedragons 同じ文庫でも創元推理文庫を読んだあとだと文字の大きさが際立つわ~。それもあって講談社文庫は、最近ではこのマイクル・コナリーとリー・チャイルドくらいしか読んでない。特に意味はない。

ボッシュ刑事、香港に飛ぶ! 警察ものといえどもシリーズが長くなるとこういう巻がはさまることが多いね。粗が見えやすく、現実味が薄れるといったリスクはあるけど、ボッシュはどこにいてもボッシュだった。そして、ボッシュの「不幸を呼ぶ男」というキャラクターづけがこの巻ではついに極まった感がある。むしろその一点を強調したかったかのような終盤の畳み掛けもあったし。

もともと、ファンかというとそれほどでもないシリーズなのだけど、今作も冒頭からのボッシュの人を見る目の手厳しさといい、主人公がこれだけ生々しい人格の小説はあまり知らないので、その点は感心して読んでる。一時はボッシュ=コナリーなのではないかと思ったが、ほかのシリーズの主人公はまた違う性格なんで、どれだけ緻密に作り上げているのかと。


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『これ誘拐だよね?』カール・ハイアセン著/田村義進訳
(文春文庫 2014年邦訳)

アイドル歌手チェリーはドラッグ漬け。それをマスコミから隠すためチェリーの影武者になった女優の卵、アンが誘拐されてしまった。マネジャーは奪回作戦を起ち上げるが。セレブとパパラッチと誘拐犯、片腕に秘密兵器を仕込む悪党と正義の怪老人が入り乱れる大混戦。最後に笑うのは?…(文庫カバーより)


Starisland たまには読みたいユーモアミステリー。ということで手にした。女優の卵であるアンの目線で読んでいたが、もしかしたら主人公は、冴えない風体で、性格は自分本位、風呂に入らないので体臭きつく、流行遅れの言葉を連発、しかし写真の腕は一流のパパラッチ、バン・アボットのほうだったかも!? 片腕に草刈機を仕込んでいるボディーガード、ケモも好きだな。
読む人によって気になる登場人物が違いそう。ショービズネス界のゴシップとか、ふだんあまり興味がないのもあり、面白さは中くらい。そういうのが好きな人は、実在のモデルになった人物をいろいろ想像して楽しめるかな。

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