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2014年4月20日 (日)

初めてづくし ~『刑事たちの三日間』ほか

4月中旬なのに寒くてストーブつけてる!


『刑事たちの三日間』アレックス・グレシアン著/谷泰子訳
(創元推理文庫 2013年邦訳)

1889年、切り裂きジャックの恐怖が残るヴィクトリア朝ロンドン。地に落ちた警察への信頼を回復するため、ロンドン警視庁に殺人捜査課が創設された。日々捜査に忙殺される中、仲間のひとりが無残な死体となって発見される。事件の捜査を命じられたのは、新米警部補のディだった…(文庫カバーより)


Theyard スコットランドヤードといったら海外ミステリにおける警察の代名詞みたいな存在だが、これは、そのスコットランドヤードに殺人事件を専門とする捜査課が初めて設置された頃の刑事たちの活躍を描く小説。まずはそこに着眼した点がいいね! 原題もシンプルに「The Yard」ときた。猟奇的連続殺人に警察が本格的な捜査班を組むのが初めてならば、指紋鑑定という科学捜査を取り入れるのも初めてという設定。ほかにもいろいろと「初めて」がありそうです。

イギリスの警察小説に欠かせない小道具として「紅茶」があるけど、この小説では貧しい巡査が「再生茶葉」というものを愛飲している。一度使用された茶葉を乾かして屋台などで売っていたものらしい。こういう時代描写は楽しい。炭鉱町やロンドンのような都会で小さな子供たちがどんなふうに働かされていたかについても印象深かった。子供の扱いは独特だよね、イギリスは。

結末が、びっくりなほどの大団円だったのも気に入った。たまにはこんなふうに幾つものハッピーエンドが重なるミステリもいいなあ。シリーズ小説だそうで、次も読もう。


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『スノーマン』ジョー・ネスボ著/戸田裕之訳
(集英社文庫 2013年邦訳)

オスロにその年の初雪が降った日、一人の女性が姿を消した。彼女のスカーフを首に巻いた雪だるまが残されていた。捜査に着手したハリー・ホーレ警部は、この10年間で、女性が失踪したまま未解決の事案が、明らかに多すぎることに気づく。そして、ハリーに届いた謎めいた手紙には〈雪だるま〉という署名があった…(文庫カバーより)


Snowman 「全世界でシリーズ累計2000万部、ノルウェーを代表するミステリー作家の傑作」(本書はそのシリーズ7作目)だそうです。もうさ、いったいどれだけあるのよ傑作といわれる北欧ミステリ。英語圏を差し置いてすっかり翻訳ミステリの主流になっている印象。

主人公の一匹狼タイプの刑事ハリー・ホーレが、イアン・ランキンの小説の主人公ジョン・リーバスに似ていると思いながら読んだ。ロックのミュージシャンや曲名がちょこちょこ出てくるところも、あのシリーズに似ている。
しかし、扱っている題材は違う。事件の背景はやはりノルウェーならではというべきか。北欧の国々は福祉の充実や男女平等などの先進国だけど、その反動も見えないところで蠢いていそうだね。

そして、この題材が面白かったかというと、う〜ん…。犯人がイカれた人間というのもありがちで、すぐに忘れそう。途中、ある人物が嘘をついていると分かった時点で、そいつが真犯人という予想もつき、あとは惰性で読んだ感じか。

それよりもカビ退治の男だよ!なんだったんだあれは? シリーズの評判を信じて、別のも出たら読んでみよう。


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『雪の女』レーナ・レヘトライネン著/古市真由美訳
(創元推理文庫 2013年邦訳)

エスポー警察の巡査部長マリア・カッリオは、女性限定のセラピーセンター、ロースベリ館での講演を依頼された。だがその講演から数週間後、館の主であるセラピストが行方不明になり、雪深い森でガウンとパジャマのまま死体で発見される。当時館に滞在していたのは、訳ありげな女性ばかり。北欧フィンランドを舞台に、小柄な女性警官マリアが事件を追う…(文庫カバーより)


Luminainen そしてこれはフィンランドで人気のミステリ・シリーズの4作目にして、日本では初翻訳。
またしても北欧だ! そのうち北欧各国の違いにも詳しくなれるかな?笑

フィンランドといえば最近読んだのにジェイムズ・トンプソンの『極夜 カーモス』があり、あの小説に登場した戒律が極端に厳しいプロテスタントの宗派「レスタディウス派」というのがここにも出てきた! フィンランドだけでなくスウェーデンにもこの宗派のコミュニティがあるらしい。避妊も中絶も禁止されており、結果として女性の人権は無視されることがある…。男女平等が進んだ国といっても、このコミュニティだけは治外法権でもあるかのよう。この宗派のコミュニティが、どんな背景があって育ってきたか興味深い。

さて、本作、妊娠中の女性刑事が主人公というのが新しい!と思うが、長編のわりに読み終えたあとの満足度いまいちだった。シリーズものだと、途中から読んでも十分面白いものも当然あるが、このシリーズはメインキャラクターの日常にかなりの比重が置かれていて、そこのところは不利だった思う。しかも、特に個性のない主人公に魅力を感じなかったし…。
このシリーズ読むなら、スウェーデンのエリカ&パトリック事件簿のほうを読むかな。比べる理由ないけれど


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『狼の王子』クリスチャン・モルク著/堀川志野舞訳
(ハヤカワ・ミステリ 2013年邦訳)

謎の死を遂げたフィオナ・ウォルシュの秘密は、決して明かされることがないはずだった――彼女の日記が郵便局員ナイルに見つからなければ。そこには、悪魔的な魅力を持つ男ジムに出会った様子がつづられていた。アイルランド中を旅して、パブで物語を披露し聴衆を夢中にさせたジム。彼の周りに漂っていた暗い影が、フィオナやその家族に悲劇的な運命をもたらしたのだろうか? 彼女の死をめぐるすべての真相を突き止めようと、ナイルは彼女の故郷に向かう…(裏表紙より)


Darlingjim 引き続き北欧。これはデンマーク出身の作家。といっても、アイルランドが舞台であり、英語で書かれた作品のよう。

不思議な味わいの作品だった。親族間殺人の動機や背景というものは、他人には理解できないものも多いので、この小説にリアリティがないとは言わない。けれど、その瞳で見つめるだけですべての女性を骨抜きにしてしまう流れ者の男ジムみたいな登場人物は、普通のミステリ小説ではお目にかかれない。というか、まずは存在しえないと思うし笑
さらに終盤になる頃には、この小説のテーマが実は「女殺しジム」だったのではないかと気づくわけで(あ、原題もDarling Jimだ!)。
もしかしたらこれはヴァンパイア小説の変種なんだろうか。

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