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2014年2月16日 (日)

切り捨てられた男 〜『三秒間の死角』ほか

 

『三秒間の死角』アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著/ヘレンハルメ美穂訳
(角川文庫 2013年訳)

犯罪組織の中枢にまで潜り込んだスウェーデン警察の潜入捜査員パウラ。組織に与えられた任務は、刑務所内に麻薬密売の拠点を作ることだった。秘密裏に政府上層部のお墨付きを得たパウラは、巧妙な手段で麻薬を所内に持ち込み、ライバル業者を蹴落として商売を始めた。だが、パウラの正体を知らないまま、入所前に彼がかかわった殺人事件を捜査するグレーンス警部の追及の手が迫るのを知った政府上層部は非情な決断を下す…。(文庫カバーより)


Tresekunder 英国推理作家協会(CWA)賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞を受賞した刑務所サスペンス。
正直言って読み始めは退屈だった…。でも、小物と思っていた潜入捜査員パウラが実は相当に頭の切れる男で、そのパウラが物語の中心に居座る上巻の終わりあたりからぐんぐん面白くなっていった。刑務所の中も外も敵ばかりの状況で自らが生き残るための戦いを繰り広げるパウラ、かっこいいわ。一方、暗い過去を抱えたグレーンス警部も渋くていい感じ。アンフェタミンがチューリップの香りがすることを利用した細工とか、枝葉にも工夫があって読み応えある。人間関係にも奥行きをもたせてるしね。
そして、ラストのどんでん返し! 1つ目は予感がなくもなかったが、2つ目はおおー、そう来たか!と。もう読者ですら忘れていたことを、あの男は覚えていたのね。ちょっとかっこつけすぎじゃない?と思ったけど笑
映画化されるらしい。サスペンス作品の原作にうってつけだわ。

 

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『夜の真義を』マイケル・コックス著/越前敏弥訳
(文春文庫)

19世紀ロンドン。その夜、エドワードは、深まる霧の中を行く、見ず知らずの赤毛の男を殺した。首に深々と刃を沈めた凶行―だがこれは真の標的、仇敵ドーントを葬るための“試み”にすぎなかった。英才と謳われ、イートン校に学んだエドワードがなぜ暗闇の街路で刃を握り締めるに至ったのか。その数奇なる半生が今語られ始める…(文庫カバーより)

 

Meaningofnight 2011年に邦訳された本の文庫版。構想30年、著者が癌による失明を前に執筆を始め、イギリス出版史上、新人作家としては最も高額で落札された小説であり、実在の人物が密接に絡んでくるのなど虚実ないまぜな擬ヴィクトリア朝小説として、日本でも少なくともミステリー小説ファンの間では話題になっていた。

読み応えがあって時間がかかったわー。不当な人生を強いられた男の復讐がベースにあるが、その復讐の予行演習と称していきなり関係のない男を殺してしまうので、痛快な結末などは望むべくもなく、その分、先の展開が読めそうで読めず、どの登場人物たちからも距離をおいて、ヴィクトリア朝小説のもつ雰囲気とイギリス貴族社会のえげつなさみたいなものを俯瞰的に堪能できたかな。
しかし、主人公はどうして自分がタンザー卿の実子であると最初から確信していたのかな、不義の子ではないかと疑うのが普通じゃない?

 

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