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2013年2月16日 (土)

「オースティンの霊にお詫び申し上げたい」~『高慢と偏見、そして殺人』ほか

2カ月ぶりです。お久しぶりです。


『高慢と偏見、そして殺人』P・D・ジェイムズ著/羽田詩津子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2012年邦訳)

紆余曲折の末にエリザベスとダーシーが結婚してから6年。二人が住むペンバリー館では平和な日々が続いていた。だが嵐の夜、一台の馬車が森から屋敷へ向けて暴走してきた。馬車に乗っていたエリザベスの妹リディアは、半狂乱で助けを求める。家人が森へ駆けつけるとそこには無惨な死体と、そのかたわらで放心状態のリディアの夫ウィッカムが……殺人容疑で逮捕されるウィッカム。そして、事件は一族の人々を巻き込んで法廷へ…(裏表紙より)

Deathcomestoremberley 1920年生まれ!の著者の最新作は、ジェーン・オースティンの人気作品『高慢と偏見』(1813年)の続編。原作から6年後の設定で、原作の登場人物のキャラクターを生かしつつ、得意のミステリー作品に仕立ててみましたという内容だ。
『高慢と偏見』は以前テレビドラマ版を見ただけだが、プロローグでざっと内容のおさらいがされていて助かった。実はこのプロローグがとても面白く、ジェイムズらしさがしっかり出ていると思う。「殺人捜査にエリザベスを巻き込んでしまって、オースティンの霊にお詫び申し上げたい」という扉の一文も洒落ている。ミステリー作品としては、ややインパクト不足と思うが、これは原作の持ち味を尊重した結果なのだろう。私みたいにジェイムズ作品のコンプリートを目指す人間や、オースティン作品好きは読んで損はないはず。

それにしても、90歳を超えてこれだけしっかりした長編が書けることに圧倒させられる。さらに、著者自身がオースティンのファンで、同じオースティンのファンたちに向けて書かれたと思われる同人誌的な作品なので、純粋に小説を紡ぐことへの情熱のみがいっそう際立って感じられ清々しいほどだ。
ところで、ダルグリッシュ・シリーズは前作の『秘密』でやはり完結したってことかな。

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『どこよりも冷たいところ』S・J・ローザン著/直良和美訳
(創元推理文庫 2002年邦訳)

マンハッタンの建設現場で工具が頻繁に消え、さらにはクレーンの操作係が失踪する。疑わしい班長の素行調査を請け負った私立探偵ビル・スミスは、レンガ工として覆面捜査を開始したが、すぐに工員が瀕死の重傷を負う。ピアノを愛する中年の白人探偵と相棒のリディアが、こみいった事件の最深部に見たものとは…(文庫カバーより)

Nocolderplace 若き中国系女性リディアと白人中年男性ビルが交互に主役を務める私立探偵シリーズ4作目。これはアンソニー賞最優秀長編賞作。
「建設現場ほど寒いところはない」という文から始まる本作。建築中の建物には命は宿っていない。しかし、大きくなっていくにつれて現場で働く人間から命をちょっとずつ取り込んでいき、過去を溜め込むとやがて息をし始める。そうやって生き物になった瞬間は、生き物特有の温もりによってはっきりわかると…。
以前、私にも建築作業員の知り合いがいた。その人はいつも腰痛で苦しんでいた。きつい仕事だ。でも、自分が携わった建築物が完成した姿を見るときの喜び・満足感に代わるものはないと話していたことを思い出した。成長した我が子を見るような思いなのかな。

今はたまに建設途中で鉄筋が錆びつくままに放おっておかれている物件を見かけ、金策が尽きたのかな、建築会社や建材会社はちゃんとお金をもらえたのかなと想像してみるが、この小説を読んだらいちばんがっかりきているのは現場作業員かもしれないなと思った。リディア&ビル・シリーズは、何ものにも縛られず自分自身の信念を貫くビルの性格も魅力だが、脇役に毎回、ほっとする人柄の人物が登場するのがいいね。本作はレンガ工仲間のディメイオだ。そして、いろいろあったけど、ビルやディメイオたちの仕事が流れてしまわなくて良かった。


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『火怨 北の耀星アテルイ』高橋克彦
(講談社文庫)

辺境と蔑まれ、それゆえに朝廷の興味から遠ざけられ、平和に暮らしていた陸奥の民。8世紀、黄金を求めて支配せんとする朝廷の大軍に、蝦夷の若きリーダー・阿弖流為は遊撃戦を開始した。北の将たちの熱い思いと民の希望を担って。古代東北の英雄の生涯を空前のスケールで描く、吉川英治文学賞受賞の傑作…(文庫カバーより)

Kaen これを原作としたドラマが、この冬にNHKBSで大沢たかお主演によりドラマ化。阿弖流為(アテルイ)の親友であり参謀の母礼(モレ)役として北村一輝も出演!てことで、いつも海外ミステリーばかりを読んでいるが、たまには違ったタイプの小説で頭の柔軟体操もすべきだろうと思い読んでみる。
思ったより時間がかかり、タイミング的にはドラマと同時進行の読書となったんだけど、小説はドラマよりははるかに面白いから! というか、ドラマがひどすぎた〜。原作とうたっているが、結局、史実として分かっているわずかな部分しか共通点がないくらい内容も違っていた。しかし、ドラマを同時に鑑賞したことで、小説のほうもほとんどが創作で、史実と勘違いするのを避けられたのは良かったと思う。

噂ではよく聞く話だけど、テレビドラマだと、女性も重要な役として登場させなければならないルールがあるようだ。こういうところで男女平等扱いはほんとくだらない。原作は男だらけなんだからそれでいいのに。そんな昔の時代の話、誰も文句は言わないよ。女優が出るからという理由で視聴率が上がるとも思わないしな。

小説は内容もいかにも男性好み。何度も襲い来る数万の朝廷軍に対し、勝手知ったる地の利を生かして少数精鋭でふるさとの空と大地を守りとおす蝦夷たち。どうやって戦うかに重点が置かれ、映画「レッドクリフ」を思い出す(『三国志』みたいと言いたいところだけど読んでないからね)。
感極まって男泣きという場面が何度も出てくるのがおかしくて、最初はとまどいつつも、上巻の終わりくらいから私でも面白さが分かってきました。

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