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2012年9月27日 (木)

もしヒューイ・ロングが大統領になっていたら 〜『鷲たちの盟約』ほか

『鷲たちの盟約』アラン・グレン著/佐々田雅子訳
(新潮文庫 2012年邦訳)

1943年、アメリカ合衆国。10年前に大統領就任目前のルーズヴェルトが暗殺され、未だに大恐慌の悪夢から脱せずにいるこの大国は、今やポピュリストに牛耳られた専制国家と化している。ポーツマス市警のサム・ミラー警部補はある晩、管内で発見された死体の検分に向かうが、その手首には6桁の数字の入れ墨があった…(文庫カバーより)

Amerikaneagle もし急進的ポピュリストだった南部出身のヒューイ・ロングが、暗殺されることなく大統領にまで登りつめていたら第二次世界大戦最中のアメリカはこうなっていたかもしれない、という歴史改変サスペンス。ヒトラーのドイツを支持し、アメリカはドイツと中立条約を結ぶべきと訴えて経歴を汚すことになったリンドバーグも1シーンに登場し、まさにその思惑どおりの展開が、本書では繰り広げられる。

常に秘密警察に見張られている緊張感、そして警官という立場上、家族を守るためにも体制側に従わないわけにはいかない主人公のジレンマなどは、同じ新潮文庫のトム・ロブ・スミス作品に近いものがある。あっちに登場した黒人歌手ポール・ロブソンがこっちにもちらっと登場するし。
感情を揺さぶられ読み出したら止まらない面白さはスミス作品のほうが上だと思うが、こっちは史実や実在した人物が思わぬところで絡んでくる面白さがある。終盤になって、手首に入れ墨のあった線路脇の死体の身元がほのめかされるけど、あれはあの超有名人物ってことでいいのかしら? それともその関係者? ちゃんと読み取れていない…。

話はどこに落ち着くのか最後まで予想がつかないまま、主人公はある決心をする。なるほどそういう手段しかないのかと、納得半分、気の遠くなる思いが半分。

かつて南部の黒人奴隷が北部やカナダへ逃亡するのを手助けした「地下鉄道」が、本書では反体制分子として目をつけられた人々を国外に逃がす地下組織として再び組織される。学生時代にその「地下鉄道」も関係する論文を書き、英文資料を漁っていたのを思い出した。バンド活動とアルバイトのほうに精を出していたし英語理解力も乏しく、どうやってごまかして課題を完成させたのか、今となっては謎。


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『策謀の法廷』スティーヴ・マルティニ著/白石朗訳
(扶桑社ミステリー 2011年邦訳)

国防総省が推進する安全保障情報提供プログラム(IFS)の開発を手がける大手ソフトウエア企業の女性経営者、マデリン・チャプマンが自宅で何者かに射殺された。ほどなく逮捕された容疑者は、マデリンの身辺警護を担当していた元陸軍軍曹のエミリアーノ・ルイス。見つかった凶器がルイスの所持していた拳銃だったのだ。そして二人には肉体関係もあった。しかしルイスは犯行を否定。ルイスは、弁護を担当することになったポール・マドリアニに、事件の背後で合衆国政府が糸を引いている可能性を示唆する…(文庫カバーより)

Doubletap 正統派リーガル・サスペンス。もう何巻も翻訳されているシリーズだと知らないで読んだ。カリフォルニア州サンディエゴを拠点とするイタリア系の弁護士ポール・マドリアニと、そのパートナーであるハリー・ハインズのことはいまさら細かく説明されていないが、身長135センチしかない凄腕の検事とか、人当たりのいいところがまったく信用ならない州議会議員とか、なかなか人物キャラの作り方がうまいので、手堅いシリーズなのではないかと思う。題材もオーソドックスなのだけど、最後に逆転するリーガルものの面白さはきっちり抑えてあるかな。法廷でのやりとりは分かりやすかった。

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