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2012年7月 1日 (日)

閉ざされた記憶 〜『尋問請負人』『悪意の森』『リヴァトン館』

せめて1カ月に1回はブログアップの目標挫折。もう7月とは…早い。
読書メモも溜まってしまって、とりあえず半分アップ。


『尋問請負人』マーク・アレン・スミス著/山中朝晶訳
(ハヤカワ文庫 2012年邦訳)

あらゆる拷問のテクニックに通じた尋問のプロ、ガイガー。民間企業、犯罪組織、政府機関から依頼され、彼は対象者から情報を引き出してきた。だが、彼には秘密があった。過去の記憶を失っていたのだ。ガイガーは今、新たな依頼を引き受けたが、事態の変転から一人の少年を救い、相棒のハリーらと逃亡の身とな る。執拗な敵と闘いながら、やがて彼は巨大な陰謀を知り、記憶を取り戻していくが…(文庫カバーより)

Inquisitor 尋問のプロフェッショナルという異色の職業に期待して読むが、割と普通のヒーロー小説だったかな。
スパイものでも探偵ものでも、拷問場面が苦手で早く読み飛ばしたくなるほうだが、この小説の主人公ガイガーは、肉体へのダメージをほとんど与えることなく、言葉などによって巧みに相手に恐怖心を植え付け、聞きたいことを聞き出すことに長けているという設定なので、安心だ。そしてまた、ガイガーの職業上のライバルとして、残虐な拷問を得意とするダルトンを登場させることで、ガイガーのヒーローとしての正当性をにおわせているわけだけど…。だからといって魅力的な主人公になるわけでない。無粋なことを言えば、いろいろと無理がある。

続編があるとしたら、ガイガーは尋問の得意な探偵として再登場するんではないだろうか。そこからが本編という気がする。この小説は探偵ガイガーの序章として読めばそこそこおもしろい。かな?


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『悪意の森』タナ・フレンチ著/安藤由紀子訳
(集英社文庫 2009年邦訳)

うだるような夏のある日。ダブリン郊外の森の中で、少年と少女が忽然と姿を消した。あの日から20年。同じ森の近くの遺跡発掘現場で少女の他殺体が発見される。捜査にあたった刑事のロブとキャシーは、少女の家族が隠し事をしていると感じる。一方、発掘隊の中にも疑わしい言動を取る者がいた。やがて少女の姉 がロブに接近し、虐待を匂わす証言をするのだが…(文庫カバーより)

Inthewoods アイルランドのダブリン郊外の町を舞台としたミステリー小説で、数々の新人賞を受賞。
表紙の画像をいただこうと思いamazonにアクセスしたら、カスタマーレビューの評価が悪すぎて驚くとともに、やっぱりなという思いも。読み終わってなんとなく男性受けは悪い気がしていた。
実際に低評価をくだしているのが男性かどうかわからないし、ほかにも評価しない理由があるのだろうが、第一に、男性主人公ロブが最後まで情けないままで終わったことが要因ではないかと…。私自身は、若干エキセントリックなところのある女性主人公キャシーが、どこかでまた心に大きな痛手を受けはしないかとひやひやしながら見守っていたので、最後の展開は痛快で、青春小説としても予想外に軽やかに終わったことが好印象だった。
逆に、例えば上記の『尋問請負人』みたいなのは、あまり魅力を感じないので、読書というのはやはり個人的なものなのでしょう。

ぐだぐだと余計なところにページを割いているという評価は分かる。自分も上巻は「ひたすら長い」と感じながら読んでいたし、「大人の男女の間でこんな友情、成り立つわけないだろー、いつまで青春ごっこやってるんだよ」という思いもありイライラしたかな、そういえば笑。しかし、後半はミステリー小説としても十分に面白かった。
個性的な書き手には違いないので、次も読んでみて好き嫌いがはっきりしそうな気がする。


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『リヴァトン館』ケイト・モートン著/栗原百代訳
(RHブックスプラス 2012年文庫化)

老人介護施設で暮らす98歳のグレイスのもとへ、新進気鋭の女性映画監督が訪れた。「リヴァトン館」という貴族屋敷で起きた70年前の悲劇的な事件を映画化するため、唯一の生き証人であるグレイスに取材をしたいと言う。グレイスの脳裏に、リヴァトン館でメイドとして過ごした日々があざやかに蘇ってくる。そして、墓まで持っていこうと決めていたあの惨劇の真相も…。(文庫カバーより)

Shiftingfog グレイスが侍女として仕える令嬢ハンナと、何かの映画のキーラ・ナイトレイがだぶって仕方ない……。20世紀初頭、戦争などの時代の波に翻弄されてたそがれゆくイギリス貴族社会を舞台に、悲劇的な愛を描くドラマというのは、小説でも映画でもすでに一種の様式なのだろうね。だから、本国ではなく外国の、このオーストラリアの女性作家のほうが、その様式をよほどちゃんと把握していて、その様式が大好きな人たちの期待を裏切らずに書けるんだろうね。様式なので目新しさを問うのはお門違いなんだろうね。

イギリスでは2008年に、図書館で最も多く貸し出された本として『ハリー・ポッターと死の秘宝』に次いで第2位になったらしいよ。


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