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2012年7月16日 (月)

70年代のラオスが舞台のミステリー「シリ先生シリーズ」ほか

『老検死官シリ先生がゆく』コリン・コッタリル著/雨沢泰訳
(ヴィレッジブックス 2008年邦訳)

シリ・パイプーン、72歳。みごとな白髪に透き通るような緑の目をした老人だが、ただの年寄りではない。ラオス国内で唯一の検死官だ。引退して年金生活を楽しもうと思った矢先に任命され、やむなく勤務することになった検死事務所は、医薬品も乏しく、設備もお粗末。しかし、障害があるが解剖の腕は抜群の助手、しっかり者のナースなど一風変わったメンバーに囲まれて、訳あり死体続々のスリリングな日々が待っていた…(文庫カバーより)

Coronerslunch 共産政権が誕生したばかりのラオス。シリ先生も若き頃は亡き妻に従って共産主義側に加わり内戦を戦った。しかし、今はあっという間に腐敗した革命政権とは距離を起き、国内唯一の検死官という立場と老齢であることを盾にのらりくらりと、洒脱自在に生きている。てことで、物語もユーモアにあふれて楽しい!

実はシリ先生のもとには死者の霊が挨拶に来たり、犬たちにはいつも吠えつかれるという不可解な点が。やがて見えてくるのは、この小説のもう一つの要素――時を超越した霊界において繰り広げられている、モン族のかつての英雄と土着の悪魔たちとの戦い。そんなご当地オカルトも盛り込みつつ、終盤、殺人犯に先生自身も狙われる展開はスリリング。犯人は絶対あの人だと思っていたのに違っていた!

著者はイギリス人で、イスラエル、オーストラリア、アメリカ、日本などで教師をしていた経験あり。その後、東南アジア各地でNGO活動をしながら漫画やコラムを執筆。現在はベトナム在住とのこと。


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『三十三本の歯』コリン・コッタリル著/雨沢泰訳
(ヴィレッジブックス 2012年邦訳)

自転車に相乗りした二人の謎の死人が運ばれてきたのを皮切りに、猛獣に首を咬みつかれ息絶えた女性が続けて現れるなど不可解な事件が頻発する。黒焦げ死体がみつかった古都ルアン・パバーンに赴いたシリは、魔力的なその地で三十三本の歯の秘密を知るのだったが…。(文庫カバーより)

Thirtythreeteeth てことで、出版されたばかりのシリ先生シリーズ第2弾。↑このあらすじでは何のことやらさっぱりだろうけど、前作よりさらに現世と霊界が混沌とした内容で、もはやミステリー小説と言っていいのかどうかも…。
エピソードもやたら多い。知識がないだけで事実に近い話が多く挿入されていそう。キム・ジョンイルもちらっと登場する。本筋とはまったく関係ないけど、いい加減におちょくられておる笑。一方で、基本的には人情味あふれる内容で、読んでいて気持ちいい。引き続き、ラオスという舞台をめいっぱい生かした、楽しく個性的な小説。

前作と表紙のイメージが違ってしまったのが残念かも。そしてシリ先生に恋していたサンドイッチ屋台のおばさんが登場しなくなったのも大きな変化。代わりに前作以上に活躍するのがナースのドゥーイ。病弱の母親を抱えていること、洗濯カゴのような大きな体で男とは縁がないのをシリ先生にはいつも不憫がられているが、助手としてはきわめて優秀。考えてみたら、先生が呪術にかかずらっている間に、探偵のような行動力で連続惨殺事件を解明したのは彼女だった。こんなところもミステリー小説としては異色かな。犬のサループの話が切ない…。


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『ジェネシス・シークレット』トム・ノックス著/山本雅子訳
(RHブックスプラス 2010年邦訳)

トルコ東部の巨石建造物ギョベクリ・テペを訪れた記者ロブは、たちまちこの遺跡に魅了された。1万2千年前に建てられた最古の神殿で、エデンの園はここだったと説く者もいた。しかも遺跡は後に人の手で埋められていた。誰が、何を隠すためにそんな厖大な労力を注いだのか? 発掘現場で起きた不審な死亡事件を追ううち、ロブははからずも人類史の壮大な謎のなかへと踏み込んでいくことに。その頃英国では儀式殺人めいた猟奇的事件が相次いでいた…(文庫カバーより)


Genesissecret 勉強は苦手だけれど、古代文明には興味ある。そんな私ですので、ミステリー小説の題材が実在の謎多き古代遺跡というだけで飛びついた。といっても出版当時は見過ごしていたんだけどね。

クルド人居住地域にあるために発掘は進まず情報公開すら制限されているというギョベクリ・テペ遺跡には、故意に埋められた形跡があり、その理由や、秘密の多い少数派宗教ヤズィードとのかかわりなどを著者なりに追究していて、なかなか面白い! 歴史上のさまざまな民族の生け贄儀式の方法を真似た犯罪の描写にはうんざりしたけど、古代史または悪魔崇拝などに興味があれば十分楽しめるでしょう。
ただ、イギリス人の著者は経験豊富なジャーナリストということで、情報を集めて面白い読み物にするのは得意そうだけれど、小説家としてはどうかなと思いつつ読んだところもけっこうあった。


ギョベクリ・テペ遺跡の写真 http://globalheritagefund.org/slideshows/gobekli_slideshow


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『薔薇の殺意』ルース・レンデル著/深町眞理子訳
(角川文庫 1981年邦訳)

被害者は30歳の平凡な家庭の主婦。器量も平凡、顔に化粧をしたこともなく、夫と二人、つつましく、ひっそりと暮らしていた。そんな彼女の絞殺死体が牧草地の茂みで発見された。暴行めあての犯罪ではなかった。有力の手掛かりは遺品の本にあった。余白に彼女に寄せる想いが綿々とつづられていたのだ。このおよそ人目をひかない女に、これほどの想いを寄せる男がいたとは…(文庫カバーより)

Fromdoonwithdeath ウェクスフォード警部シリーズの1作目で、レンデル初の長編小説。上記のあらすじに、この小説の要点も、女性作家ならでは視点の面白さも集約されている。テーマはシンプルだし、登場する人物はみな平凡。でもやはり、ちょっとしたしぐさや情景の描写だけで引きつけて離さないと思うのは、私も女の目線でふだん物事を見ているからかも。・・・とは、苦し紛れ。2カ月前に読んで、もうあまり覚えていない。

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コメント

『特捜部Q ―Pからのメッセージ―』

今、アマゾンのぞいたら
二千円以上するのか~。。

pcも新しくしたし
今月、金欠なんだよなあ。。悲。

うーん
迷う~

マキより

>マキさん

ポケミスが2000円代になったの、最近です。
文庫も1000円超えたと思ったら、特に東京創元社などはいつの間にか1300円が普通になってしまって。
私の読む翻訳は販売部数が少ないから仕方ないのはわかるけど、痛いですよね。

迷うなら、私ならやめてしまうわ。
そういう本て、結局積ん読になりませんか?

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