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2012年4月 7日 (土)

炎はその命を手放さなかった 〜『火焔の鎖』ほか

『火焔の鎖』ジム・ケリー著/玉木亨訳
(創元推理文庫 2012年邦訳)

「あたしは嘘をついた」新聞記者のドライデンは、知人であるマギーの死に際の告白を聞く。27年前、アメリカ空軍の輸送機が農場に墜落した。彼女は乗客の赤ん坊を助けだしたが、生後2週間の息子は死んだと語っていた。だが実際は自分の息子と死んだ赤ん坊をすり替えたのだ。なぜ我が子を手放したのか? 少女の失踪や不法入国者を取材しながら真相を探るドライデンは、拷問された男の死体を見つけてしまい…(文庫扉より)

Firebaby 観光名所としてはイーリー大聖堂が知られる、イングランド東部の沼沢地帯(フェンズ)の田舎町を舞台にしたミステリシリーズ2作目。1作目は、大洪水に襲われるこのフェンズという土地が、いくら描写されてもイメージしづらかったが、今作は大干ばつによる砂塵嵐が押し寄せてきて、やはりイメージしづらいながらも、泥炭地であることがいろいろやっかいな土地であることは分かったよ。

27年前の飛行機墜落事故、トーチカで見つかる拷問死体、闇で売買される未成年ポルノ、コンテナで輸入されるアフリカ人不法就労者、イラクでの後遺症を抱えているらしきアメリカ兵、前作に引き続き昏睡状態にあるドライデンの妻ローラが残した謎のメッセージ…。盛りだくさんのネタが最後にはひとつにつながって明かされるのがこのシリーズの醍醐味のようだが、ちょっと強引に韻を踏みすぎじゃない?と感じるところがあり(韻というのはキーワードのことだけど)、クライマックスの出来事は、その因果を思い、強烈なインパクトを付与するけれども、あんまり感心はしなかった。

でも、フェンズという馴染みのない土地や、細部の描写などに著者独特の感性が感じられて、不思議な魅力があり、たぶん次作も出たら読むかな。ドライデンとローラのその後も気になるしね。

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『ブラバン』津原泰水
(新潮文庫)

1980年、吹奏楽部に入った僕は、管楽器の群れの中でコントラバスを弾きはじめた。ともに曲をつくり上げる喜びを味わった。忘れられない男女がそこにい た。高校を卒業し、それぞれの道を歩んでゆくうち、いつしか四半世紀が経過していた―。ある日、再結成の話が持ち上がる。かつての仲間たちから、何人が集まってくれるのだろうか。ほろ苦く温かく奏でられる、永遠の青春組曲。(文庫カバーより)

Buraban この本を読もうと思ったのは、自分も高校時代は吹奏楽部だったのと、単行本刊行時の書評にあった以下の本書から抜粋に共感したからだ。
「名曲が郷愁と寸分なく合致した時、それは人を殺すほどの、あるいはもう一度生まれ直させるほどの力を持つ」

ん〜思っていた小説とは違っていた。「僕」が妙にさめているやつのせいか、これならノンフィクション小説のほうがよっぽど盛り上がるんじゃないかと思えるくらい、感動には乏しかった笑・・・私はベタな現実をつきつけられるだけの話などは今さら読みたくないんじゃー!!!
自分のブラバン時代が懐かしくなることもまったくなくあてが外れたが、まあそもそも青春小説と勘違いした私が悪い。
いちばん印象に残ったのは小説の筋ともテーマとも関係のないこの言葉。
「美しい音色は習得できない。出せる人間だけが初心者のうちから出せる」

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