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2012年4月 1日 (日)

北の灯台に光が灯ると、ウナギ岬で誰かが死ぬ 〜『冬の灯台が語るとき』ほか

『冬の灯台が語るとき』ヨハン・テオリン著/三角和代訳
(ハヤカワ・ミステリ 2012年邦訳)

スウェーデンのエーランド島に移住し、双子の灯台を望む「ウナギ岬」の屋敷に住みはじめたヨアキムと妻、そして二人の子供。しかし間もなく、一家に不幸が訪れる。悲嘆に沈むヨアキムに、屋敷に起きる異変が追い打ちをかける。無人の部屋で聞こえるささやき。子供が呼びかける影。何者かの気配がする納屋……そして死者が現世に戻ってくると言われるクリスマス、猛吹雪で孤立した屋敷を歓迎されざる客たちが訪れる… (出版社Webより)

Nattfak エーランド島シリーズ第2弾。前作『黄昏に眠る秋』は個人的には昨年度読んだミステリ小説のナンバーワンだったが、「このミス」誌上で発表された上位54作にも入ってなかったわ。どういうこっちゃ。ぷんぷん。理由を考えてみたけど、一つ思うに、自分の中にこもっていたいダウナーな気分のときに読むとぴったりなんじゃないかってこと。読書するときの気分で小説の印象もだいぶ変わる。

そして、本作も面白かった! 前作との大きな共通点は、エーランド島という舞台(風土や歴史)はもちろん、身内を亡くした人が悲しみから立ち直るまでを描いている点だろうか。いくつものオカルト現象を取り入れているけれど、あと味は悪くない。共通する登場人物は、高齢者ホームに暮らす80歳過ぎのイェルロフで、またしてもいい働きを見せる。登場場面は少ないけれど、読み終わってみればその存在はでかかった。

それにしても、冬のブリザードは過酷だ。舞台となった地域は民家もあまりなさそうなところだし、昔はもっと不便だっただろう。いつもどおりグーグルマップを見ていたら、ウナギ岬に該当する地点に、骨だけになって横たわる古い船の写真が載っていて、あっ!となった。


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『アイアン・ハウス』ジョン・ハート著/東野さやか訳
(ハヤカワ・ミステリ 2012年邦訳)

凄腕の殺し屋マイケルは、ガールフレンドのエレナの妊娠を機に、組織を抜けようと誓った。育ての親であるボスの了承は得たが、その手下のギャングたちは足抜けする彼への殺意を隠さない。ボスの死期は近く、その影響力は消えつつあったのだ。エレナの周辺に刺客が迫り、さらには、かつて孤児院で共に育ち、その後生き別れとなっていた弟ジュリアンまでが敵のターゲットに! マイケルは技量の限りを尽くし、愛する者を守ろうと奮闘する…(裏表紙より)


Ironhouse この作家は『川は静かに流れ』『ラスト・チャイルド』に続いて読むの3作目。作風はどれも違うと思うが、どれも面白くてぐいぐい読ませる! それでも一番好きなのは『ラスト・チャイルド』。本作は凄腕の殺し屋が主人公なので、エンタテインメントと割りきって読むタイプの小説だね。まさか妊娠中のエレナまで、あんなエグい目に遭うとは。ハードでした。
あと、やっぱりアメリカには先住民のタタリみたいなのがあるに違いないと再び思った笑


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『水晶玉は嘘をつく?』アラン・ブラッドリー著/古賀弥生訳
(創元推理文庫 2011年邦訳)

ジプシーの占い師から、水晶玉に将来の姿が見えると言われたフレーヴィア。動揺のあまりちょっとしたアクシデントを起こしてジプシーのテントを炎上させてしまい、自宅の屋敷近くの林へ招待することに。その夜、屋敷に侵入した村の男を追い出したあとで、ジプシーに大変なことが起きているのを発見!…(文庫カバーより)

Redherring 11歳の化学大好き少女探偵フレーヴィアちゃんシリーズ3作目。2作目はいま一つ乗れなかったが、本作で盛り返したかな。本作もミステリ小説として構えると大したことないかもしれない。けど、何かすごくほっとするのだ。特にすぐ上のような小説を読んだ後だと…。作家が高齢で、ちょっと前の時代の暮らし描写の中に、祖父母の話を聞いているような懐かしさがあるせいかもしれない。

姉二人とは犬猿の仲で、「あたしの人生と比べたら、シンデレラなんか甘やかされたちびだ」などと意気がるフレーヴィアの、痛々しいほどの孤独がこのシリーズの基調にある。が、この3作目にしてようやく、いつも子供たちのことは眼中にないような父親や、意地悪な姉たちが、実際にはフレーヴィアの行動を心配しながら見守っていたり、誇りに思っていたりするらしいことが私にもはっきりとわかる部分があった。フレーヴィア目線で語られる物語なので、いままで気づいてなかったよー。(巻末にある中村有希の解説が、このあたりを鋭く突いていて申し分ない)。なかなかしんみりするラストでしたね!


 

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コメント

ひめさーん(* ̄0 ̄)ノ

>『黄昏に眠る秋』
>『川は静かに流れ』『ラスト・チャイルド』

もすごくよかったから、続きも気になるんだけど
わたし的に、ひめさんの記事で
「おお~」と思ったのが

>『水晶玉は嘘をつく?』
です!
もう、ぜひ読みたいので、ダルシリーズ中断して
今からアマゾンに行く予定っす♪
(できたら最初の奴があればいいなあ。。)

いつもひめさんステキな記事を
どうもありがとう。

マキより(超はあと)


マキさん (◎´∀`)ノ

フレーヴィア・シリーズ、いいの?本当に読むの?
かなり少女趣味よ笑

あ、でも、決して子供向けではありません。
そこらへんが読む人を選びます。

ダルジール・シリーズ、まだ読み続けてるんですか?
うれしいな〜。
しかし改めて、もう新作ないというのを思い出し
さみしくもなりました。
撮りためたドラマシリーズでも見ようかな。

ひめさーん、こんばんは(。・ω・)ノ゙ コンチャ♪

やっとアマゾンから 
アラン・ブラッドリー 「パイは小さな秘密を運ぶ」が届いて
先ほどから読み始めています♪

>あ、でも、決して子供向けではありません。
そこらへんが読む人を選びます。

わっ、そいつは怖いなあ。。

だけど、わたしいまだに児童文学とか「クレッシング」とか
図書室に置いてあるような本も愛していて
まだ読み始めだけれど、フィットする予感!?

ねえ、ひめさんの十一歳はどんな風に過ごしていましたか?
わたしは、病院(入院)と退院しての普通の学校生活に翻弄されていた。。というか
妙にさめた、むしろさめすぎている少女でした。
わたしと似たり寄ったりの危うい精神状態の親友と過ごす土曜の午後以外は
特に普通学校のクラスメートがみんなバカに見えて白けちゃうような嫌なガキでした...。

なんせ病棟育ちなもんだから
親の愛情すら、愛情って何?みたいな世界で生きていたので、自分内では無自覚にハードという。。(;;;´Д`)ゝ
(もう母親と喧嘩して寝巻き一枚で家出しちゃうみたいな...)
今振り返ると、めためた扱いの難しいガキだったと
今更ながら両親に同情します。。

(関係ないですが、昨日も主治医の外来でした。。
今は、週末にハルナと観る(予定の)ドライブだけが楽しみっす♪)

マキより(はあと)

マキさん、こんばんは〜!

フレーヴィアシリーズ、怖くないですお。
言い方が間違った。大人も読むに堪えるだろうということです。
作家はかなりのお爺ちゃんで、
なにか、その年齢の人ならではの達観した眼差しが随所に感じられて
少女目線とあいまって面白い味わいになっていると思います。

マキさんの少女時代は、想像を裏切らずですよ〜(笑
大した病気はもちろん入院もせずにきた私ですので、いい加減すぎる意見ですが、妙にさめて扱い憎いガキなのは、持って生まれた気質だったのではないかと。

えーと、つまり、マキさんが病気じゃなかったら、大人から見て子供らしい子供だったかというと、決してそうじゃなかったと思うってことで。
気を悪くしないでくださいね!
私もまったく扱い憎いガキだったので、そう思うって話です。
で、私の亡くなった祖母に言わせれば、それは単に「かんのむし」のせいってことになります(笑

私の11歳の頃は。。。先日、小学校の卒業文集に載せた詩をたまたま読みなおす機会があったのですが、恥ずかしくて顔が真っ赤になりました。
「暗黒」とか「薔薇」とか「血」とかいう言葉が出てくるナルシスティックな詩で、いわゆるゴシック趣味というやつですかね。
(今ではその欠片も残っていないですが)
ああもちろん、大人なんかこれっぽっちも尊敬してませんでしたよ。


「ドライブ」面白そうですよね! 私も観ると思います。


ひめさーん(◎´∀`)ノ

「パイは小さな秘密を運ぶ」 届いてさっそく読み始めたら
なんかコンディション低下し過ぎで
今、主治医の病院で普段服用しているステロイドとは別に
点滴でがっつりいれちゃってるすよ。。Σ( ̄ロ ̄lll)
で、大量のステロイド(特にリンデロン)が入ると、
どうもまともに読書できない感じになっちまってですねえ
(悲しい)
なかなかすすまないのですが、読めるときにゆっくり読んでおります♪
なんだか、文体が小学生の頃によく読んだ
新井素子を思い出したり。。
初めて読むのに、妙に懐かしいというか。
(いつもステキな本を紹介してくださり感謝ですっっ)

あ、「ドライブ」
わたしはどうにも駄目でした。。(;;;´Д`)
無駄のないスタイリッシュな映像。。と言われれば
きっとそうなんでしょうね。
あ、あ でも
「わたしを離さないで」の主役の女の人が、今回のヒロインだったんですけど、彼女は好きかも?
なんて思っちゃいました♪

>マキさんの少女時代は、想像を裏切らずですよ〜(笑

やっぱり...(恥ずかし。。)

でね、この前の飲みでお師に
「子供の頃クールにならざるを得ない状況の反動で
今のバカマキスタイルになったんじゃね?」
って言われて。。
いや、根っからバカなんですけどね、ほんとは(秘密ですよ!)

>私の亡くなった祖母に言わせれば、それは単に「かんのむし」のせいってことになります(笑

ここ、ちょっとウケちゃって( ´艸`)プププ
確かに
お互い「かんのむし」が悪さしてたんでしょう!

>ああもちろん、大人なんかこれっぽっちも尊敬してませんでしたよ。


わたしはねえ、大人はずるいっっと内心の怒りと、
そんなずるい大人に早くなりたかったですね。
(己の脆弱な感性にはほーんと嫌気がさしてましたから。。)

マキより(はあと)

マキさん、こんちは!

映画を見ようかなといつも言っているだけで終わるひめひかげです〜。
いまは経済状態が逼迫してまして笑、
とりあえず「別離」見て、次に「ドライブ」と思っているんですが、どうなるか…。
ドライブのヒロインの人、キャリー・マリガンですね。
私は「17歳の肖像」で見たきりですけど、それもよかったです。童顔ですね。

>「子供の頃クールにならざるを得ない状況の反動で
>今のバカマキスタイルになったんじゃね?」
>って言われて。。

私の場合は、それと似たようなことを「時計の針が一回転して元に戻った」なんて考えたこともありました。でも、変わったつもりでいるのは自分だけで、他人から見たらたぶん全然変わってないですね(笑

>わたしはねえ、大人はずるいっっと内心の怒りと、
>そんなずるい大人に早くなりたかったですね。
>(己の脆弱な感性にはほーんと嫌気がさしてましたから。。)

うーん、複雑だ。こんなところがマキさんらしいかも。
私も「傷つくもんか!」という意志は強く持っていましたけど。

コンディション、早く良くなりますように。

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