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2011年11月

2011年11月 6日 (日)

「“バーン”の数が多すぎる」〜『冷血の彼方』ほか

『冷血の彼方』マイケル・ジェネリン著/林啓恵訳
(創元推理文庫 2011年邦訳)

凍てつく寒さにおおわれた、スロヴァキアの首都ブラティスラヴァ。発端はハイウェイで起きた自動車の炎上事故だった。女性6人と男性ひとりが死亡。女性はいずれも売春婦で、事件の背後にヨーロッパの人身売買ネットワークの存在が推測された。捜査にあたっていた刑事警察隊警部ヤナは、上司トロカンの命を受け、ストラスブールで開かれるEU反人身売買人権委員会に出席することになるが…。かつての共産主義政権下、想像を絶する苦難の道を歩んできた女性刑事の姿を鮮やかに描く(文庫扉より)

Sirenofthewaters スロヴァキア人の女性刑事ヤナを主人公に、舞台はウクライナのキエフへ飛び、さらにフランスのストラスブールを経て、ニースへと。登場人物もロシア人の警官、アメリカの外交官、欧州議会や国連の関係者など国際色豊かで、警察小説のシリーズ1作目にしては異色の内容。

ヤナはすこぶる優秀な警官で、犯罪現場から事件を推理するのに長けている。そのヤナが追うのは、死んでは生き返る伝説の悪党コバで、まるで(ユージュアル・サスペクツの)カイザー・ソゼのような描かれ方をしている。てことで、骨太小説に見えながらも登場人物はかなりデフォルメされていると思うし、コバと対立する勢力の目的が私にはよく分からないままに終わってしまったが、過去の出来事を引きずるヤナの哀しみを交えて、リーダビリティは高かったと思う。なんといってもヤナがかっこいい。
それでも、最後のほうで死ぬ必要がないと思える人までが死んでしまうのは、ちょっとね…。もしかしたら続編予告なのか?

あとがきによると、アメリカ人の著者は法学を学び、国務省や司法省のコンサルタントを経て、政府から派遣されてスロヴァキア、パレスチナ、インドシナなどで政府の再編や司法制度の改革に助力してきたとか。国際舞台のミステリを書く人は、こういう経歴の人が多いね。


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『すべては雪に消える』A・D・ミラー著/北野寿美枝訳
(ハヤカワ文庫 2011年)

英国の弁護士ニコラスは、赴任先のモスクワでハンドバッグを奪われようとしている魅力的な若い女性マーシャを助けた。やがて二人は深い関係になり、彼は彼女のおばのアパートを新築のものと交換する法的手続きを手伝うことになる。その一方で彼は、原油ターミナルの建設に銀行から融資をさせる大仕事を進めてい た。だが、彼はずるずると犯罪の中に巻き込まれていくことに…(文庫カバーより)

Snowdrops_2 ミステリ小説ではないけれども、こっちの著者はイギリス人で、「エコノミスト」の海外特派員として2004年から3年間モスクワに滞在。そのときの見聞や体験がそのまま盛り込まれているのかな。石油バブルに湧くロシアでのモラルなき下克上、弱肉強食の社会を生々しく描いていて怖いです〜。イギリス人の主人公が語っていることなので、異国に対する偏見が混じっているのは作風のうちだけれど、モスクワという都市に限れば、これくらい物騒なのもリアルでありかも。

ということで、舞台設定とその描写、何度か出てくるロシアの笑えないことわざなどには満足しつつ。しかし、それ以外は、ロシア美人にのぼせてしまった「ぼく」が、騙されていると気づきながらもずるずると悪に加担、自らも手ひどい目に遭った過去を回想し、それでもモスクワが無性に恋しいなんて言っているウェットな内容で、若干イラっと来た(笑)。自分、女ですから。

原題は「スノードロップ」。雪解けよって現れる死体をモスクワでは陰でこう呼ぶそう。このタイトルは秀逸だ。


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『失踪家族』リンウッド・バークレイ著/高山祥子訳
(ヴィレッジブックス 2010年邦訳)

ある日突然、14歳のシンシアだけを残して両親と兄、一家全員が姿を消した。それから25年、シンシアはわたしと結婚しつつましくも平和な家庭を築いていた。しかし、心の傷が癒されることはなく、彼女はいまも真実を求め続けている。そんななか、あるテレビ番組に出演したことを機に不可解な出来事が起こりはじめ、関係者が次々と殺される。はたして25年前の失踪事件と関係があるのか?(文庫カバーより)


Notimeforgoodbye 原題は「さようならをいう間もなく」という意味かしら。久々にオーソドックスなサスペンス・スリラー小説を読んだなあという印象。しかし、途中である人物が気になって、巻頭の登場人物一覧をじっくり見てしまったのが失敗だった。それ以降、面白さが失速した感あり。想像していたことが早めに裏付けされてしまったというか。あれは親切すぎてネタバレじゃ?

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