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2011年10月

2011年10月23日 (日)

良心の呵責、取り払います 〜『謝罪代行社』

『謝罪代行社』ゾラン・ドヴェンガー著/小津薫訳
(ハヤカワ・ミステリ 2011年邦訳)

失業したクリスら4人の若い男女は、依頼人に代わって謝罪する仕事を始めた。ある日、彼らの一人が指定の場所に行くと、壁に磔にされた女性の死体が! 依頼人は死体に謝罪し、それを録音して送ること、死体を始末することを求めた。家族の身を守るため拒否はできなかった。やがてさらに不可解な事件が起き、彼らを悲劇が襲う…(裏表紙より)

Sorry ドイツ育ちのクロアチア人作家、その目新しさにひかれて読む。
職がない若者たちが主人公なのはタイムリーな気がした。が、彼らが始めた謝罪代行社というのが、現実感に乏しすぎる。そんな仕事に需要はあるのか? 手紙ですませればよくない? しかし、これが大当たりしてしまうらしい。そこから先もよく理解できないことばかり。なんでそういう行動に出るのかなあと感じること多々。終盤、すべての発端となった出来事の主犯らしき男が姿を表すが、これまた深く掘り下げられていない気がしてしまう。

破滅に向かっていく物語がもともと好きじゃないせいもあるだろうけど、むー、すっきりしません。でも、これが英米とは違うドイツらしさか? フランスのミステリ などに近い感じはするので。

ポケミス創刊35周年記念作品にこの作品を選ぶとは、思い切ったことをしたね。ドイツ推理作家協会賞受賞作。

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『文章教室』金井美恵子
(河出文庫)

恋をしたから〈文章〉を書くのか? 〈文章〉を学んだから、〈恋愛〉に悩むのか? 普通の主婦や女子学生、現役作家、様々な人物の切なくリアルな世紀末の恋愛模様を、鋭利な風刺と見事な諧謔で描く…(文庫カバーより)

Bunshokyoshitu 1983年の作品。恥ずかしながらというか、金井美恵子、初めて読んだ。前からエッセイみたいなのは目にしていたけど。
この辛辣なユーモア、好きだわ〜。刊行当初はモデルとなった人物は誰か、いろいろ言われたんだろうけど、その点はそれほど興味を引かない。登場人物、それぞれ与えられた役割を期待通りにこなしてくれて(と読み終わったあとに気付くが、予想していたわけではない)、それが楽しかった。続篇も読んでみようっと。

2011年10月22日 (土)

赤い色って苦いってこと知ってた? 〜『エージェント6』

『チャイルド44』『グラーグ57』に続く、元ソ連国家保安省捜査官レオ・デミドフの物語、完結編!

『エージェント6』トム・ロブ・スミス著/田口俊樹訳
(新潮文庫 2011年邦訳)

運命の出会いから15年。レオの妻ライーサは教育界で名を成し、養女のゾーヤとエレナを含むソ連の友好使節団を率いて一路ニューヨークへと向かう。同行を許されなかったレオの懸念をよそに、国連本部で催された米ソの少年少女によるコンサートは大成功。だが、一行が会場を出た刹那に惨劇は起きた——。両大国の思惑に翻弄されながら、真実を求めるレオの旅が始まる…(文庫カバーより)

Agent6 このシリーズ、毎回ばつぐんに面白くて読ませるのだけど、読者に対しても残酷な仕掛けをしてくる著者のやり口に若干不快感を覚え、この巻を手にすべきかどうかしばらく迷っていたのだ。憎らしいです(笑)。今回もやられた〜。まさかあの人までが、あんなことに…。サディストだろ、トム・ロブ・スミス! でも、本作も面白い! そして、いままでより人間味のある物語になっていた。あれ?

扱われている時代は1965年から1981年まで。ほぼブレジネフ時代。これまでさんざんソ連国内での体制による抑圧を題材として扱ってきたので、扱い尽くしてきたので、本作ではレオを泥沼のアフガニスタンに飛ばして、引き続き心身休まらぬ過酷な状況を与え続けるトム・ロブ・スミスなのだった。レオ、いったい年齢はいくつだ?

そして、本作、国によって自由を奪われているのはアメリカ人も同様なのだった。こういう題材が好きらしいトム・ロブ・スミスは、先日、出版社の招待か何かで来日し、いつか日本を舞台に本を書くことをほのめかしたようだ。どんな不自由な国(すでに決めつけてる)として描かれるのか、恐ろしいな。実現を楽しみにしてる。


おはよう、おばあちゃんたち 〜『ねじれた文字、ねじれた路』

『ねじれた文字、ねじれた路』トム・フランクリン著/伏見威蕃訳
(ハヤカワ・ミステリ 2011年邦訳)

ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れ去る。 それから25年後。自動車整備士となったラリーは、少女失踪事件に関与したのではないかと周囲に疑われながら、孤独に暮らす。そして、大学野球で活躍したサイラスは治安官となった。だが、町で起きた新たな失踪事件が、すべてを変えた。過去から目を背けて生きてきたふたりの運命は、いやおうなく絡まりあう…。(裏表紙より)

Crookedletter ミシシッピの森林に囲まれた田舎町。地域雇用を支える製材所の経営者の娘が行方不明となり、その騒ぎのさなか、山の湿地で麻薬売人の死体が見つかる。このあたりの風土描写がなかなか読ませて、やはりアメリカ南部の田舎はうす気味悪いミステリの舞台にうってつけだなと思う。
しかし、孤独なラリーの日々の生活の描写、ラリーとサイラスの少年時代の回想にページが割かれはじめると、導入部で想像した小説の類とはまったく違ったテイストを帯びてくる。
凶悪な犯罪組織が浮かび上がるなどのもっと殺伐とした話を想像していたのだが。読み終えてからも、あの最初に殺されていた男にどれほどの意味があったんだろうと思ったりするのだが。でも、これは個人的には良いほうに裏切られたかたちだ。面白かった!

とにかく、長年にわたって周囲から白い目を向けられながらも、真正直に規則正しい生活を送るラリーという人物が魅力的だ。彼はずっと壮絶ないじめにあってきたといっていい。誰もが人生のどこかでラリーのような体験に心あたりがあるのではないか。自分としては、ラリーがティーンエイジャーのときに肝だめし大会でいっとき主役となった場面とその後のクラスメイトたちの反応が、胸に突き刺さった。
本年度の英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞。


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