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2011年9月18日 (日)

新旧アメリカンノワール 〜『逃亡のガルヴェストン』『ガラスの鍵』〜

『逃亡のガルヴェストン』ニック・ピゾラット著/東野さやか訳
(ハヤカワ・ミステリ 2011年邦訳)

ついにおれの運も尽きたか——。ロイはこれまで闇の仕事で生きてきた。しかし癌の宣告直後、ボスの裏切りにあい、追われる身となってしまう。成り行きで道連れとなったのは、ロッキーという家出娘。金に困って娼婦をしていたらしい。こうして、 孤独を愛する中年の男と、心に深い傷を負った女の奇妙な旅が始まった。ロイは、ロッキーがまともな道を進むことに残りの人生を賭けようとする。だが、果てなき逃避行の先には…(裏表紙より)

Galveston ロイはニューオリンズのギャング団の一員。女をめぐってボスに目をつけられ殺されかかるロイ、現場に居合わせて目撃者となってしまったロッキー、そして途中でロッキーが実家から連れ出した幼い妹ティファニーの3人がたどり着いたのは、テキサス州南東部の島ガルヴェストン。風光明媚な海辺のリゾートながら、どこかうらぶれた空気が漂う海辺のモーテル。この舞台設定には妙にひかれるものがある。

行動を共にするうちにロッキーらに情がわいてしまい、ある行動に出るロイ。そしてうっかり自ら招いてしまう悲劇。それでも、通常のこの手のアメリカの小説なら、最後には主人公のヒーロー性が爆発し、きっちりカタがつくという展開になるはずだった。ところがこの小説はひと味違っていた。そこがとてもユニーク。強気だったアメリカの斜陽を思い浮かべるという点で、とても今日的。


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『ガラスの鍵』ハメット著/池田真紀子訳
(光文社古典新訳文庫 2010年翻訳)

賭博師ボーモントは友人の実業家であり市政の黒幕マドヴィッグに、次の選挙で地元の上院議員を後押しすると打ち明けられる。その矢先、上院議員の息子が殺され、マドヴィッグの犯行を匂わせる手紙が関係者に届けられる。友人を窮地から救うためボーモントは事件の解明に乗り出す…(文庫カバーより)

Glasskey ダシール・ハメット自身が生涯で最も気に入っていたと言われる1931年の作品。うーん、ふだん文学らしい文学を読まないせいもあるけど、古典といわれるものはだいたいといって感想が浮かんでこなくて困る…。とても面白かったというと嘘になるし、つまらないといってバカ丸出しにする勇気もなし。幸い、つまらなくはなかったけど。

ボーモントは賭博師とあるけど、分かりやすくいうとギャングのボスであるマドヴィッグの右腕。しかし、何かに属しているふうはまったくない風来坊。彼なりの矜持はもっているようだが、行動にも発言にも最初は一貫性が感じられず、こっちが振り回されている気がしてくる。あとがきに「主人公の内面が開示されることは一度たりともない」とあり、つかみどころがないのは意図して書かれたものらしく、なるほどと思った。ハンサムなので女にもてるが、女に興味があるふりもまったく見せないしね。

しかし、最後の場面では、マドヴィッグを傷つける行動を取ることで、実はボーモントが何より友情に重きを置くタイプであることが逆に伺い知れ(自分にはそう思えた)、なんともいえない余韻があった。

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