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2011年8月28日 (日)

グラスゴー舞台の、ラストは痛快ミステリ 〜『扉の中』〜

『扉の中』デニーズ・ミーナ著/松下祥子訳
(ハヤカワ・ミステリ 1999年邦訳)

二日酔いの頭を抱えたモーリーンが目の端でとらえた鮮やかな赤色。彼女の自宅の居間には、幾重にも巻きつけられた紐が皮膚にくいこみ、頭がごろりと落ちてきそうなほど深く切りつけられた喉元から、身体中の血を噴き出して息絶えた恋人の無残な姿があった……過去の精神病歴が災いし、警察や家族から殺人犯と目された彼女は、嫌疑を晴らすため自ら辛い過去の記憶を手繰り寄せる…(裏表紙より)

Garnethill グラスゴー出身の女性作家のデビュー作で、英国推理作家協会賞最優秀処女長篇賞受賞。どこかで書評を見かけてかなり前に買ってあった本だが、なぜとっとと読まなかったのか。なるほど、これは面白い!

殺人の背景には、多くの犠牲者を出しながら表に出ることのなかった忌々しい事件があった。こういうことって、どこにでも潜在していていそうで恐ろしいな。
ミステリ小説としても読ませるが、それ以上に登場人物たちの生き生きとした日常の描写に引き寄せられる。過去の出来事の亡霊に怯え、エキセントリックな性格にすら思えた主人公モーリーンが、話が進むにつれて本来のたくましさを露呈していき、警察すらも欺く活躍を見せるのが頼もしい。女同士の青春友情小説という側面もあって、読後感がすがすがしかった。

あとがきに掲載されたインタビューで「プロットにはさまざまな倫理的ジレンマを盛りこんだ」と語る著者。主人公モーリーンの周辺だけみても、本人はアル中気味だし、殺された恋人とは不倫の関係だったし、弟は麻薬の売人だし、まあそれぞれ欠点だらけ。でもそういう人間観みたいなものに共感する。
大した根拠があるわけでもないけど、スコットランドの小説とは相性がいいかもしれないと改めて思った。他のも出たら必ず読むよ。


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コメント

ひめさん、ハロー(*゚▽゚)ノ

わあ、ひめさんの記事読んだら
すぐにでも読みたくなっちゃった♪

でも、まだ「アコーディオンの罪」読んでないんです~。。
(なんか今体力が落ちすぎて、本が重いんですよね。。)

これは文庫かしら?
なんかさっそくアマゾン行っちゃいそう。

単行本が重いって、自分が情けないです・・(´・ω・`)ショボーン

これからも、ひめさんの記事楽しみに待っています!

マキより(はあと)

やっぱり頼んじゃった~( ̄▽ ̄)

マキより(はあと)

マキさん、こんばんはヽ(´▽`)/
本を手にして体力を知るというの、少し分かる。
手首に力が入らないですよね。

これは文庫じゃなくて、ポケミスよ。
片手だけで開いて読むにはちょっと重いし、ページ開きづらいかもなあ。

この本、少し古めだし、どれだけの日本人が読んだのだろうと考えると、とても少ないですね、きっと。
(図書館では細く長く読まれ続けている気がしますが。)
だから、自分が気に入った本は「もっと読まれろ〜」と念を注いでブログ書いていたりするんだけれど、
マキさんに気付いていただいてうれしいです笑

ひめさーん、こんにちは(*゚▽゚)ノ

読み出したら、物語にひきこまれて
あっという間に読んじゃった♪

ただ、わたしもいまだ精神科に通う身でもあり
モーリのやるせない気持ちが、わかるだけに
色々なことを思い出しちゃって
わたし的には、心の痛い小説でした。。

本当に、精神を一度でも病むと
そんな目でみられもするし、(医者にすら居るんですよっ)
なんとか傷つきたくないと
過剰防衛すると、ますますその目が突き刺さってくるという(泣)

あと、わたしもモーリ同様
今、またアルコールに走っちゃって
精神科医から、すぐに依存に移行してしまう。。と心配されちゃって(指導を受けているのにもかかわらず守れちゃない・・(@Д@;)
わたしは、依存症患者でもあるので
もうなんにでも依存してしまう。
特に体に毒なものばかり。。

だから、モーリの飲むアルコールが一々おいしそうでもあり
心配でもあり。。と勝手にヒヤヒヤしたり。

(↑関係ないことすいません(*_ _)人ゴメンナサイ )

いやあ、しかし
この犯人は許せんっっっ
わたしの立場からしても、最低の人間だ。
あえて、人間の弱さと言わずに
人間の屑と呼びたいです。

それにしても
女友達っていいですねえ。
本当の友達なんて、生涯かけても何人も見つけられないと思うんですが
だからこそ、この物語の後半読んでいて
心が温かくなるんですよね♪

こんな良い本を紹介してくださり
どうもありがとう。

マキより(はあと)

>マキさん
気付くの遅れてごめ〜ん。しばらくここ開けてなかった。

もう読んだんですね、はやい!
というか、私の時間感覚が狂ってるのかな、9月があっという間にすぎていく(-_-)

そうか、モーリーンとかぶるところがいろいろありましたか…。
モーリーンのアルコール依存症が心配!とは私も思いました。
ほどほどにしとけーとひやひや笑
問題が重なっているモーリーンだけど、友達や兄とのやりとりなど、辛いだけが彼女の人生じゃないと、描かれているところが好きなんですよ。この小説は。
ずっと辛いことに心を支配されっぱなしじゃなくて、忘れている瞬間もあるというのが、さっぱりしてていいなと。
彼女が助け出した女性も、単にかわいそうで終わらない人間くささを最後ににおわせていて笑えるし。

これ、3部作になるということなので、ちゃんと翻訳されてほしいです。

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