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2011年7月

2011年7月23日 (土)

アメリカ移民100年史 〜『アコーディオンの罪』〜

読み残していたアニー・プルーをようやく読む。

『アコーディオンの罪』E・アニー・プルー著/上岡伸雄訳
(集英社 2000年邦訳)

100年ほど前、シチリア島からアメリカ・ニューオリンズに渡ったアコーディオン職人が魂を込めて1台のアコーディオンを作った。緑のボタン・アコーディオン。このアコーディオンがその後100年、アメリカじゅうを転々とし、さまざまな人種の手に渡る——シチリア系、ドイツ系、メキシコ系、フランス系(ケイジャン)、アフリカ系、ポーランド系、アイルランド系、バスク系、ノルウェー系。そしてそのたびに異なる民族音楽を奏で、その魅惑ゆえに、ときに持ち主たちを過酷な運命に陥れる。そんな罪作りなアコーディオンの物語…。(訳者あとがきより)


Accodioncrimes 『港湾ニュース』の次に上梓された著者の長編2作目。主役は2列ボタンの小型アコーディオンだが、短編集風の各章のとびらにはさまざまな種類のアコーディオンのイラストが添えられている。(『港湾ニュース』では、さまざまなロープ結びのイラストが添えられていた。)

民族音楽に密接な楽器アコーディオンをつなぎの小道具に、描かれているのは名もない人たち(移民の一家)の人生や生きざまであり、そこから浮かび上がるアメリカ移民100年の歴史。一章一章が、風土色たっぷりで、物語の構成もとてもバラエティに富んでおり(緑のアコーディオンが登場人物によって必ずしも奏でられるわけでない)、読み応えがあった。ふー、やはりこの著者の小説は面白い。好きだー。途中の章で緑のアコーディオンに仕込まれたへそくり(大金)が、どの時点で発覚するか、そうやって読者の興味をつなぎとめる手法もうまいね。

総じて登場人物が悲惨な目に遭う話が多いのだが、この著者独特の説話的な文体から「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」というチャップリンの言葉を思い浮かべる。特に最終章は感慨深い。
いちばん印象に残ったのは、物覚えがつかないうちにフランス系移民の両親に捨てられ、アイデンティティを得られず虚しさを抱えたまま生きるドロールの物語。切なかった〜。

日本では出版時あまり話題にならなかったのかな? もったいないね。少なくとも先日読んだ『古書の来歴』(同じくピューリッツァー賞受賞の女性作家の小説で、1冊の書物の運命をたどる)よりは、ずっと文学らしい文学だった。


2011年7月 4日 (月)

父から子へ受け継がれるもの 〜「BIUTIFUL ビューティフル」〜

BIUTIFUL ビューティフル(2010年 スペイン/メキシコ)

バルセロナの下層に暮らし、不法就労斡旋のブローカーという非合法な仕事によって日々の糧を得る男は末期ガン、分かれた妻は躁鬱病を患い病院を出たり入ったり。それでも2人の子供たちにはちゃんとした教育を受けさせ、まともに育ってほしいと願うが、残された時間はあまりに短く…。

Buitiful 先週、映画館で観た。
英国王もスワンも映画館に行かず仕舞いになってしまったが、ようやく奮起してこの映画を観に行ったのは、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と、ハビエル・バルデム主演という組み合わせに引かれてのこと。バルデム、出ずっぱりだけど、主演の華があるから、引き込まれてしまいます。

非合法な仕事のかたわら、バルデムは近隣の人々の葬儀に呼ばれ、遺体を前にその者の遺言を聞き出し、遺族に伝えるという霊媒師のような小遣い稼ぎもしている。メキシコの監督の映画は死者の扱いが独特で面白い。祖先のガイコツを家に飾ってきた伝統と関係があるのだろうか。

(注意:以下ネタバレ)

バルデムが貯めてきたお金を渡して、子供たちの面倒を見ることを託したあの人は、あのまま祖国に帰ろうとして、何かに巻き込まれ命を落としたのだろう(と、自分は判断したけど)。おとぎ話のような甘いところは一切ない映画だったが、ラストで、父親から長女に、祖母の指輪とともに受け継がれたものがあることが分かったときに、静かな感動がある。娘自身はまだ気づいていない。父親は気づいただろうか。血は引き継がれていくという何よりのあかし。

ヨーロッパの不法就労者の描写では、偽ブランド品を路上で売るセネガル人たちが、警察の手入れが入ったときのためにすぐに店をたためるパラシュート式の敷物を考案して使っているところが面白かった。あれだけで、彼らがいかに際どいところで生きているかが分かるってもんだ。
あと、中国人の同性愛者が登場するが、中国では一人っ子政策の影響か、同性愛者が急増しているというニュースを目にしたばかりだったので、これもリアルな感じがした。


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