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2010年6月27日 (日)

「あたし、毒物についてはとてもくわしいの、悪いけど」 〜『パイは小さな秘密を運ぶ』〜

『パイは小さな秘密を運ぶ』アラン・ブラッドリー著/古賀弥生訳
(創元推理文庫 2009年邦訳)

11歳のあたしは、イギリスの片田舎で、化学実験に熱中する日々をすごしてる。ある日、何者かがコシギの死体をキッチンの戸口に置いていき、父が尋常ではない恐れを見せた。そして翌日の早朝、あたしは畑で赤毛の男の死に立ち会ってしまう。男は前日の晩に、父と書斎で口論していた相手だった…。活溌な少女の活躍を温かくのびやかな筆致で描く、CWAデビュー・ダガー受賞作。(文庫裏表紙より)


Sweetnessatbottom 歯列矯正はめてる少女探偵が活躍する話なので、コージー・ミステリに分類されると思うが、これがなかなか、侮れない! 単純な殺人事件でお茶を濁していないし、ウィットに富んだ文章も楽しい。化学知識をはじめ雑学的にもかなり読み応えあるのではないかしら。
そして、なんといっても怖いもの知らずの行動力と科学捜査に役立つ知識を兼ね備えた主人公フレーヴィアがチャーミング! 母親が生まれてすぐに亡くなっており、父親は子供たちに無関心、2人の姉たちからは常にいじめられる末っ子という立場ゆえ、とっても愛情に飢えている子供なのだが、それをつゆとも表に出さず化学知識で武装して、姉たちのいじめに対抗する健気さが愛おしいっす。

フレーヴィアが化学に興味を持ったのは、亡き母親の蔵書の中に『化学入門』があったのがきっかけ。
「何よりも好奇心をそそられたのは、あらゆるもの、すべての創造物——万物!——が目に見えない化学の絆で結ばれていることを知ったとき。見ることはできないけれど、この世のどこかにほんとうの安定があると知って、なぜか妙にほっとした」
11歳の少女がこんなふうに考えることに泣けたよ、おばさんは!(笑) 以来、フレーヴィアは化学者だった伯父が残した実験室を「あたしの至聖所」と呼び実験に熱中する。とりわけ夢中になったのは毒物の精製! ここらへんは子供らしいと言えるかな笑。勝手な捜査で地元警察からすっかり目を付けられてしまったフレーヴィアの続編での活躍が楽しみです。

著者はカナダ人。さまざまな職業を経て70歳になってからこの作品でCWAデビュー・ダガー賞を受賞。それまでも短編や童話を書いていたそうだが、この作品に満ちているウィットは、経験豊富な年齢ゆえ滲み出てくるものなのだろう。


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