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2010年5月

2010年5月30日 (日)

元エリート軍人のおたずね者スーパーヒーロー 〜『キリング・フロアー』〜

先に読んだジャック・リーチャー・シリーズ8作目『前夜』が面白かったので、1作目にさかのぼってみた。

『キリング・フロアー』リー・チャイルド著/小林宏明訳
(講談社文庫 2000年邦訳)


Killingfloor 元軍人のジャック・リーチャーは、兄から聞いたブラインド・ブレイク(1930年代に没した実在のブルースギタリスト)の伝説に興味をもち、放浪の旅の途中でジョージア州の田舎町に立ち寄る。しかし、歩き着いたその日に、身に覚えのない殺人容疑でいきなり逮捕される。実はリーチャーは、この街で進行するある大きな陰謀に都合よく利用されたのだった。容疑を晴らしたリーチャーは、個人的な思いから真犯人を捕らえるために街に残る。そして間もなく、商店街の人通りもほとんどないのに財政だけは潤っている小さな街のいびつな姿に気づくのだった…。


これは楽しかった! どうやらこのジャック・リーチャー・シリーズは、軍人として鍛え上げられたサバイバル能力と抜群の推理力を兼ね備えた主人公が、おたずね者として放浪しながら、行く先々で探偵&用心棒のような働きをする(ラブロマンスもありの)物語のようだ。
『前夜』は8作目ながらこのシリーズの前章となる内容。軍隊が舞台で、ある程度は真実味のあるシリアスな内容と感じたのだが、この1作目は、悪の一味は容赦なく殺していくところからして、純粋な娯楽小説。主人公が並み外れたスーパーマンなので安心して読めることも約束されている。息抜きで楽しむにはうってつけ! しかし、犯罪ネタについてはしっかり下調べて書かれてあるようで読み応えがあり、プロットもひねりがあって飽きさせない(まさかブラインド・ブレイクの話がそこでつながるとは!)


あとがきによると、著者のリー・チャイルドはイギリス作家だが「英国を舞台にしたのでは書きえないもっと広がりのある、開放的なプロットをつくりたい」という理由で、アメリカのディープ・サウスを舞台に選んだという。その意図するところはよく分かる。どこの国が舞台かで、どんなタイプの小説も、書ける内容と書けない内容、人物のキャラクターづくりにも大きく影響するものだなと改めて感じた。


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打って変わって日本の純文学。翻訳の、しかもストーリーがはっきりしたものばかり読んでいるので、すんごい隔たりがある。

『笙野頼子三冠小説集』笙野頼子
(河出文庫)

純文学の守護神にして永遠の「新人」、笙野頼子。デビュー後暗黒の十年を経て、立て続けに受けた三つの栄光——野間文芸新人賞受賞作「なにもしてない」、三 島由紀夫賞受賞作「二百回忌」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」を一挙収録。いまだ破られざるその「記録」を超え、限りなく変容する作家の 栄光の軌跡。(文庫裏表紙より)


Sankanshosetu日本文学で今も尊ばれているのは、作者自身のことなのか完全な創作なのか、その境目があいまいなこういう私小説なのかなと思った。となると、体験的に共通点があったり文体などが生理的に合えばハマルという感じで、この人の作品はすっと文章に入っていけるところと、ゴリッとして消化の悪いところの半々だった。たぶん消化しにくい部分がない小説は、日本では文学とは呼ばれないのかもしれないけど。
好きなのは、この3作品の中ではいちばん早く書かれた「なにもしてない」。エッセイ風で分かりやすいというのもあるけど、湿疹の話からいきなり帰省の話になり、そして引っ越しの話と取り留めなく続いてきて、最後にヒヨドリの餌付けの場面で、初めて達観したようなユーモアを感じ取り、息苦しさから解放された気がした。このヒヨドリの部分はかなり好き。


2010年5月29日 (土)

4月・5月に観たDVD

「南極料理人」(2009年 日本)
★★★★
南極観測隊の調理担当としてドームふじ基地で越冬した西村淳の痛快エッセイ『面白南極料理人』を、堺雅人主演で映画化(allcinemaより)。
2時間強は長すぎる気がするけど面白い! 南極観測隊にはどんな人たちが派遣され、極寒の閉ざされた環境でどんな共同生活を送っているのか、それを伺い知ることができるだけでも十分に楽しかった。
脱力系エピソード満載の学生寮のような生活を、いつもオーバーなアクションで笑わせる俳優(生瀬勝久とか)が抑えた演技で演じているのがとてもいいと思った。限られた食材を工夫し、日替わりで供される食事に対し、隊員たちの反応は最初は無頓着だが、やがて食べることに楽しみや慰めを見いだしていく様子も控えめに表現されていて好感がもてる。しかし、寝室は個室なのに、トイレが丸見えなのが解せないわ。実話だと思うけど、ドアをつけられない理由があるのかしら。 


「扉をたたく人」(2007年 アメリカ)
★★★★
妻を亡くして以来、心を閉ざして生きる初老の大学教授(リチャード・ジャンキンス)が、ひょんなことから出会ったシリア人のジャンベ奏者との友情を通じて、次第に本来の自分らしさを取り戻していく姿を、9.11以降非常に厳格な措置を講ずるようになったアメリカの移民政策を背景に綴る。監督は俳優としても活躍するトム・マッカーシー(以上allcinemaより)。
教授の職にしがみついてはいるが、何もしていないに等しい生活を送る教授。その硬直した心を解きほぐすのが、亡き妻が残したピアノではなく、初めて接した躍動感あふれるアフリカンドラム。そして、即興でやるセッションの楽しさって、分かるわ〜。フェラ・クティのCDが登場したときは思わず興奮した。後半は音楽の影が薄れてしまったのが少し残念に感じたが、今のアメリカでは、移民の人権については彼らが捨ててきた国と大差はないという皮肉が込められ、異質なものに対して扉を閉ざすことで失われるものもあるのではないかと想像させる映画になっている。
ジャンベ奏者の母親役でヒアム・アッバス。アラブ系の中年女優といえばこの人ってくらい売れっ子じゃありませんか。意志の強そうな顔立ち、凛とした雰囲気と色気もあって、重宝されるのに納得。そしていかにもブラックアフリカな美人ダナイ・グリラの、丸刈り頭のカーブの見事さに見惚れた。


「縞模様のパジャマの少年」(2008年 イギリス/アメリカ)
★★★★
強制収容所で働くナチス将校を父に持つ少年が、収容所の実情を知らぬまま、偶然出会った同い年のユダヤ人少年と禁じられたフェンス越しの友情を築いていく姿を感動的かつ衝撃的に描き出す(allcinemaより)。
世界的ベストセラー小説の映画化。マーク・ハーマン監督といえば、イギリス映画「シーズンチケット」が好きで、主演の少年が強烈に印象に残ったが、この映画も主演の男の子の眼がものすごく印象的! まだ曇ることを知らず、何もかも吸い込んでしまいそうな大きな瞳が、怖いくらいの無垢さをうまく表現。また、その瞳がカメラレンズのように、大人たちの虚構の醜さを暴き出す。
映画は、少年のその無垢さゆえにとんだ皮肉な結末を迎える。でも、これを感動作(映画の宣伝コピーにあった)と呼ぶのには違和感があるのよね。よくできた映画だけれど、自分が「感動」という言葉から思い浮かべるのは、気分が良くなるものが含まれている場合に限られる。ユダヤ人差別なんて知らない子供が、ユダヤ人の子供と仲良くなることを感動ととらえるのなら、それこそ偏見に基づくってものだ。
旬の女優といってもいいヴェラ・ファーミガが母親役。この映画でも雰囲気があってよいです。


「パッセンジャーズ」(2008年 アメリカ)
★★★★
臨床心理学が専門のクレア(アン・ハサウェイ) は、飛行機事故で生き残った5人の乗客のセラピーを担当することに。しかし、事故の原因を巡って生存者と航空会社の説明が食い違っていることに疑念を抱き、真相を突き止めようとする…。
サスペンス映画と思わせて、実は真摯な癒しの映画。泣かすことだけに力を注いだ安っぽい映画は嫌いだが、この作品はミステリアスな展開とダークな映像で引き込まれた! しかし、ちょっと検索してみたら、観た人の評判は散々ではありませんか。ふ〜む、そうなのかあ…。
結末の予想がつくことにケチをつける意見を見かけたが、その結末を、自分は自然な流れとしてすんなり受け入れられたことをむしろこの映画の良い点として評価したい。怪しげな人たち(出演者たち)ばかりが登場するが、最後は気持ちよいほうに裏切られ、同時にはっきりするこの映画の本当のテーマもシンプルで、泣けた。監督はロドリゴ・ガルシア。ガブリエル・ガルシア=マルケスの息子。そういえば、幻想的な部分はラテン文学の血筋かも。映画の内容は9.11以降のアメリカ合衆国をおおう空気を反映したものと思われるが。


「スター・トレック」(2009年 アメリカ)
★★★☆
J・J・エイブラムス監督。最初のテレビシリーズを再放送も含め欠かさず見ていた者としては、懐かしいキャラが一人、また一人と登場し、設定がどんどんよみがえってくるところが楽しかった。「ミスター・カトー」や「チャーリー」がドラマの日本語吹き替え版でしか通じない名前だというのを今さら知った。クライマックスがあっけなくて拍子抜け。ウィノナ・ライダーとエリック・バナが出ていたことにまったく気づかなかった。


「ドゥームズデイ」(2008年 アメリカ)
★★★☆
ニール・マーシャル監督が往年のディストピアムービーにオマージュを捧げつつ、カースタントやソードバトルはじめ多彩かつハードなアクションとスプラッター描写満載で描く近未来バイオレンスサスペンス(allcinemaより)。
製作アメリカとあるけど、監督をはじめ出演者や舞台もイギリス。序盤で、銃弾が目に当たっても泣きもしない女の子、ありえない!と思っていたら、その子は、殺人ウイルスが襲う英国を救うべく結成されたチームのリーダーとなって活躍する誰よりもタフな女性兵士へと成長・・・てことで、主演のローナ・ミトラのクールさが良かったわ。意表を突くおまけのようなラストは、「まだまだ続くぜ、おまえら(←こういう世界観の映画が好きな人たち)!」宣言のようで、サービス精神が旺盛。DVDパッケージには「アンレイテッド・バージョン」とあるが、劇場公開版とどこか違うのだろうか?


「湖のほとりで」(2007年 イタリア)
★★★
北イタリアの小さな村を舞台に、そこで起きた殺人事件の捜査の過程で、村人一人ひとりが隠し持つ心の痛みや葛藤が浮き彫りとなっていくさまを静謐なタッチで描き出したヒューマンミステリー。監督は本作で長編デビューを飾ったアンドレア・モライヨーリ(以上allcinemaより)。
設定やストーリーは英国などの警察ミステリーを思い起こさせる。調べたら、原作は各国で翻訳が出ているノルウェーのミステリー小説であるとのことで納得。ヨーロッパでも気候が寒々とした地方によく似合うこの手の物語は、小説だったらとても好みで、似たような内容でも細部の面白さで飽かずに読める。しかし、映画だと鑑賞の勝手が違うというか、映像化によるプラスアルファが自分には感じ取れず、ちょっとばかり退屈だった。


「40男のバージンロード」(2009年 アメリカ)
★★★
結婚式を目前にした勝ち組男子が、ひょんなことから親友探しをするハメになり、やがて悪戦苦闘しながらも大切な何かを見つけ出していく姿をユーモラスに描く(以上allcnemaより)。
ジョン・ハンバーグ監督/脚本の日本未公開作品で、原題は「I Love You, Man」。最近の未公開コメディ作品DVDは、ろくでもない邦題がついているものが多くて、かえって興ざめ。他の映画タイトルを真似たDVDが目につくが、内容をちゃんと伝えていない邦題をつけられて割食ってる作品がありそうだ。
恋人との接し方と親友との接し方の違いなどは、面白いところを突いていると思うけれど、キャラクターにインパクトがないせいかコメディとしては物足りないし、ヒューマンものとしては現実味が足りない。ポール・ラッドはいつもの脇役のほうが良いかしら。巨体のジェイソン・シーゲルがチャーミングだわーheart01 他の出演作も見てみる!


2010年5月23日 (日)

脱北に焦点を当てた映画 〜「クロッシング」〜

マキさんのおすすめで観てきました。


「クロッシング」(2008年 韓国)
★★★★

Crossing 北朝鮮の炭坑町に暮らす元サッカー選手のヨンス一家。妻ヨンハが肺結核で倒れたことから、ヨンスは薬を手に入れるために決死の覚悟で国境を越える。しかし、脱北者支援組織によって、意に反して韓国に送られてしまうヨンス。その頃、北朝鮮に残されたヨンハはついに息を引き取り、孤児となった11歳の息子ジュニは父と再会するため一人で国境の川を目指す…。


実際の脱北者への取材をもとに、飢餓と生活苦にあえぐ北朝鮮での過酷な暮らしと、命懸けの国外脱出を描いた映画。
命をつなぐのは一握りのトウモロコシ。病気になったら薬がない。葬儀や埋葬もなしにどこかに運ばれてしまう死者。そして、親がいない子供はホームレスになるか、収容所で労働に従事させられる・・・知らなかったことも多々あったが、貧しくてもそれなりに幸せだった家庭が崩壊していくという分かりやすい題材によって、これが北朝鮮の今日だという映像を見せられると、改めてショッキングです。
なかでも、北朝鮮という国が、賄賂を積む金さえあればどうにでもなる国だというのを露骨に描いていたのには、唖然とさせられた。

回想シーンがスローモーションで流れるところは感傷的すぎて、正直いらないと思ったけれども、中国が脱北を認めていない実情とあわせて、北朝鮮の人々の抱える問題を多くの人に知らせるのに、これ以上の映画はなさそうです。

初老たちの「のだめ」とも 〜「オーケストラ!」〜

またもや週末頭痛を抱えて映画2本はしご。

「オーケストラ!」(2009年 フランス)
★★★☆

Concert モスクワのボリショイ劇場で清掃員として働くアンドレイは、かつては天才指揮者として知られていたが、ブレジネフのユダヤ人排斥政策によってユダヤ人演奏家が楽団を追われることに反旗を翻し、解雇された過去を持つ。ある日、パリのシャトレ座から楽団に出演依頼のファクスが届いたのを目にしたアンドレイは、30年前の楽団仲間を集め、ボリショイ交響楽団になりすましてパリに乗り込む計画を思い付く…。


またもやユダヤ人迫害が題材の映画かよぉ〜という思いが頭をかすめたが(監督のラディ・ミヘイレアニュがルーマニア出身のユダヤ系)、今はさまざまな職業で生計を立てるスラブ人、ユダヤ人、ロマら元楽団員をはじめ、バリバリ共産党員である元マネージャー、新興のロシア大富豪、さらに赤字を抱えるパリの劇場支配人らの思惑が交差するドタバタ劇が楽しかった。

クラシックファンならラストのあの1曲で満足かも。30年前に「中断された演奏」の雪辱を果たすためにも、あそこはフル楽章だったのだ。しかし、それにしても多くのことをあの時間帯に詰め込みすぎではないのか。まあ、演奏を流しながら種明かしをするというのは面白い試みではあるけど、音楽にかぶさる映像がうるさかった。

出演者の中で唯一の若い女性が、「イングロリアス・バスターズ」のメラニー・ロランだった。やっぱり綺麗。しかし、開いた胸元ばかりを撮していると感じたのは気のせいか。

 

2010年5月 9日 (日)

2人のラスト・チャイルド 〜『ラスト・チャイルド』〜

早川書房創立65周年およびハヤカワ文庫40周年記念作品として、異例の?ポケミスと文庫版同時刊行(ポケミスの背表紙はゴールド色!)。CWA賞最優秀スリラー賞受賞に続き、先日、本国のMWA賞最優秀長篇賞受賞も決定したそうで、どんだけ鳴り物入りなんだと思うが、実際、そんな雑念など軽く吹っ飛ぶ面白さだった。


『ラスト・チャイルド』ジョン・ハート著/東野さやか訳
(早川書房 2010年邦訳)

Lastchild アメリカ・ノースカロライナ州。双子の妹アリッサが失踪してから1年、13歳の少年ジョニーは妹はまだ生きていると信じて疑わず、学校をさぼり犯罪歴のある住民を見張るなどして、独自に捜査を続けていた。父親は娘がいなくなった後に家から出て行ったまま。美しい母親は以前から彼女を狙っていた町の権力者に囲われ、薬づけとなっている。唯一、ジョニーのことを心配して見守る大人はハント刑事。しかし、彼も少女失踪事件にのめり込むあまり、家庭を崩壊させていた…。


ジョン・ハートは『キングの死』で作家デビューして、これが長編3作目。前作『川は静かに流れ』を読んだときに、登場人物たちが直情的で辛辣なのが印象に残ったが、それがこの人のスタイルなのか。本作の人間関係もかなりぎすぎすしている(良くいえばエモーショナル)。が、本作はオーソドックスな警察ミステリーという面があるので、それはあまり気にならない(刑事たちのやりとりは本来辛辣だ)。また、健気で想像力豊かな少年を主人公に据えたことで、子供の冒険+友情の要素が加わり、個性的な小説になっている。

家出同然の身なりで、何かに取り憑かれたように憔悴し、大きくてきょときょと動く黒い目ばかりが目立つ小柄な少年がバスに乗り込んでくる・・・プロローグからして強烈な印象を残すジョニーのキャラクターがなんといっても魅力的だ。特異なキャラクターをもう一人挙げるとすれば、警察から犯人として疑われる大男の脱獄囚リーヴァイ。黒人とインディアンの血を引くリーヴァイ(『グリーンマイル』に登場する人物を彷彿とさせる!)と少年ジョニーは、ノースカロライナの歴史に関連するある因縁で結ばれており、これが終盤で神々しいともいえる感動を呼ぶ。
少女失踪事件の真相は痛ましいものながら、それまで読みながら頭の隅に引っかかっていたことが一気に腑に落ちる構成力も素晴らしい。翻訳ミステリにおける今年のNo.1は、本当にこれで決まりかも。

 

2010年5月 8日 (土)

ボッシュ刑事、キツネとタヌキに振り回されるの巻〜『エコー・パーク』〜

前作からロス市警・未解決事件班に勤務するハリー・ボッシュ、シリーズ最新刊!

『エコー・パーク』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳

(講談社文庫 2010年邦訳)


Echoparkjpg 失踪した若い女性の車の中に、きちんと畳まれた衣服があるのを見たボッシュは、これは殺人事件であり、解決は迷宮入りするだろうと直感する。それから13年。ロス市内のエコー・パーク地区で、女性2人のバラバラ死体を車に乗せていた男が逮捕される。男は弁護士をはさんで、死刑免除を条件に過去の殺人の自供も申し出るが、その犠牲者の中に、くだんの失踪女性が含まれていた…。


このシリーズはいつも、どんでん返しが控えているので、ネタバレにならないよう感想を書くのが難しい。でも、一つ言わせてもらえば、前作で策士とにらんだ人物が、やはりとんだタヌキおやじだったよ〜。しかし、ボッシュを甘くみすぎたね。最大の目の上のたんこぶ、アーヴィングとのガチンコはいつになることやら。早くも次作が楽しみです。

ところで、このシリーズの1作目を読んだとき、ボッシュを思い描くのにある俳優の顔が思い浮かび、何という名前か分からなかったが、ようやくデニス・フランツという人であることが分かった。ドラマシリーズによく出ているらしいけど、そのドラマは見たことがないので、たぶんかなり以前に見た映画の影響だと思う。
その後、シリーズをいくつか読むに、ボッシュはあんな禿頭ではなく、もっとスリムでカッコイイらしいことが分かったが、一度、頭に描いてしまったイメージはどうにも消えない・・・困ったものです。でも、実はけっこう気に入っているんだけどね、ボッシュ=フランツ。

 

2010年5月 6日 (木)

原題は「An Education」〜「17歳の肖像」「ウルフマン」〜

GW半ばに観た映画2本。GWだから混んでると思いきやどっちも空いてた。


「17歳の肖像」(2009年 イギリス)
★★★★★

Aneducation 1961年ロンドン。厳格な父親の言うなりにオックスフォード大学を目指して勉強に励んでいた16歳の少女ジェニーが、年の離れたユダヤ男性デイヴィッドと恋に落ち、芸術にジャズ、パリでのアバンチュールといった刺激的な大人の世界へと足を踏み入れるが、その先には思わぬ落とし穴が…。

女性ジャーナリストの回顧録が原作。監督はデンマーク出身のロネ・シェルフィグ。つまり昨年の米国アカデミー賞作品賞には女性監督の作品が2本ノミネートされていたってことなのね…。しかし、受賞したキャスリン・ビグロー作品のほうはぜんぜん興味が湧かず、一方、こっちは脚本がニック・ホーンビィという点が楽しみだった。


で、良かった! 見方によっては30過ぎのプレイボーイが女子高校性をたぶらかすというほとんど犯罪まがいの出来事を、ほろ苦くもさわやかな少女の成長物語として描くバランス感覚に感心した!

利発で好奇心旺盛な年頃のジェニーにとって、周りの大人たちはみな退屈で、ボーイフレンドは子供っぽい。そんなとき目の前に現れた大人の男性デイヴィッドは、華やかで刺激的な生活を送っており、かつ知的で礼儀正しい。ジェニーのシンデレラ願望を大いに刺激してくれちゃったわけで、つまり彼女はデイヴィッドに恋したのではなく、彼がもたらしてくれるものに恋をする。
おそらくその瞬間は、初めてのクラシックコンサートに連れて行ってもらったときではなかろうか。私はこのあたりから、胸がいっぱいになって、うるうるが止まらなくなってしまった。少女がいずれ傷つくと予想できるゆえに、いとおしくてたまらんという感じ。これがもう少し年齢のいったヒロインだったら「あーあ、騙されちゃって」で終わるんだけども、ジェニー役のキャリー・マリガンの初々しさが勝っている。この映画のバランスの良さは、キャスティングの良さでもある。

やがて、幻想から覚めたジェニーの救いとなったのは、本当に手本とすべき大人がすぐ近くにいたことだ(スタッブス先生、ステキ!)。そのことに本人が気づいたことだ。少女にとって、専業主婦の母親は尊敬の対象にはなっても、憧れにはならない場合が多い。だから案外に学校の女性教師というのは貴重な存在かもしれない。


ジェニー以外のキャスティングと、それぞれの人物描写も良かった。いつも夫に従順なだけのようでいて、デートで夜遅く帰宅するジェニーを寝ないで待っている母親にはしみじみさせられた。また、デイヴィッドの仕事仲間の男性の恋人が、華やかな業界人にぶらさがって生きている女性の典型的タイプだったのもツボった。
デイヴィッドについては、どういったらいいのかねえ。ジェニーのような女性がいっぱいいるのと合わせて、彼のような男性もいっぱいいるので、単純に女性の敵とは言い難く…、まあ明らかに非があるのはデイヴィッドなんですけど。演じている俳優をイケメンと思うかどうかで、デイヴィッドに対する女性の評価は違ったりしてね。私は終始ちょっとキモいと思っていたクチ(笑)。そう思わせるピーター・サースガードのキャスティングと演技もまた良いということ。



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「ウルフマン」(2010年 アメリカ)
★★★☆

モンスター映画の古典「狼男」を、ジョー・ジョンストン監督がリメイク…。19世紀末の英国の雰囲気と、オリジナルを意識したと思われる突飛な場面展開とか映像が面白くて、ロマンチックであるはずの物語にのめり込めない割には、楽しく観れたりして。
なぜ狼男がベニチオ・デル・トロなの?という違和感はあった。変身後と変身前のギャップがあまりない、というのは関係なく、ヒロインのエミリー・ブラントとの年齢差が気になった。デル・トロじゃなくて、ジェームズ・マカヴォイあたりで観たかったかも。と思って、オリジナルの俳優さんを画像検索してたら、デル・トロに似てなくもなかった。ジェラルディン・チャップリンは「永遠のこどもたち」の霊媒師と似たような役。あのエキセントリックな風貌だから、老いてますますこのような役で重宝されていそうだ。

 

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