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2010年4月17日 (土)

人間関係のパワーバランスの危うさを描く 〜『赤い夏の日』〜

弁護士レベッカ・マーティンソン・シリーズ第2弾。スウェーデン推理作家アカデミー最優秀長篇賞受賞作。

『赤い夏の日』オーサ・ラーソン著/松下祥子訳
(ハヤカワ文庫 2008年邦訳)

(前作『オーロラの向こう側」で)悲惨な事件に巻き込まれ心に傷を負ったままのレベッカは、職務に復帰した法律事務所で空虚な日々を送っていた。そんな彼女が、上司の出張に同行して故郷のキールナへ戻ってきた。だがそこで待っていたのは、またしても殺人事件だった。教会の女性司祭が夏至の夜に惨殺されたのだ。ふとしたことから被害者の周囲の人々と関わることになったレベッカは否応なしに事件の渦中へ…(文庫裏表紙より)


Detblodsomspillts_2 今作も面白かった。人間関係のドロドロを描いたら女性作家は強いなあ。身体の大きさや腕力で上位に立つ男に対し、女は相手の心理を操ることで負けない方法を学ぶからだろうか。その結果、すごくドロドロした部分が強調される。支配するとか服従するとか、ふだんそんな人間関係からはできるだけ距離を置くようにして生きているつもりでも、相手の対抗意識をちらりとでも感じ取ると、ついこちらも力関係を意識せずにいられなくなるというのは日々よくある。しかし、相手にしてみれば先に威圧してきたのはお前だと思っていないとも限らず…。疑心暗鬼の対象とならぬよう、自分は楽して、そんな人間関係からは逃げるほうを選んでしまう笑 おかげで競争社会からは脱落し続けている。

この小説には、北欧の小さなコミュニティを舞台に、人間関係を作っている暗黙のパワーバランスがいろんなパターンで登場する。力関係が生ずるのは人間に限らず動物が生き抜いていくための本能だとでも言うように、雌狼の話が短い章で挟まれる。

主人公レベッカは今のところ事件に巻き込まれてしまう人物という位置づけだが、次作からはストックホルムの弁護士事務所を辞め、これまでの作品と同じスウェーデンの最北都市キールナ(キルナ)で検察の仕事を手伝うようになるとのこと。キールナは最近は氷のホテルで知られるようになり、日本人観光客も増えていることが本の中にも登場する。


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『ホット・ロック』ドナルド・E・ウエストレイク著/平井イサク訳
(角川文庫 1972年邦訳)

長い刑期を終えて出所したばかりの盗みの天才ドートマンダーに、とてつもない仕事が舞い込んだ。それはアフリカの某国の国連大使の依頼で、コロシアムに展示されている大エメラルドを盗み出すというもの。報酬は15万ドル。彼は4人の仲間を使って、意表をつく数々の犯罪アイディアを練るが…(文庫裏表紙より)


Hotrock 10作目の『バッド・ニュース』が面白かったのでさかのぼってみた“不運な泥棒”ドートマンダー・シリーズの1作目。やはりこの作家さんはアイデア捻出力がぴかいち。そして、キャラクター描写も楽しい。が、ストーリーは絵本や児童書によく見られる繰り返しで笑いを誘う様式を、細部付け足して長くしたものなので、何日もかけてダラダラ読んでいると退屈でいらいらしてくる。

こういうのはすぱっと1日、2日で読み終える能力がほしい。


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『捕虜収容所の死』マイケル・ギルバート著/石田善彦訳
(創元推理文庫 2003年邦訳)

第二次世界大戦下、イタリアの第一二七捕虜収容所でもくろまれた大脱走劇。ところが、密かに掘り進められていたトンネル内で、スパイ疑惑の渦中にあった捕虜が落命。紆余曲折をへて、英国陸軍大尉による時ならぬ殺害犯捜しが始まる。新たな密告者の存在までが浮上するなか、果して脱走は成功するのか…(文庫裏表紙より)


Deathincaptivity 各所の2003年翻訳ミステリーベスト10で1位または2位となった作品だが、書かれたのは1952年。作者自身の北イタリアでの捕虜収容所体験を背景に生かしたミステリってことで、まあ退屈はしなかったけれど、どうしてそんなに評価が高いのか。史実と冒険小説と本格ミステリの塩梅が良かったのかな。

 

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