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2010年4月26日 (月)

茨の道でも自立を選んだ16歳 〜「プレシャス」〜

「プレシャス」(2009年 アメリカ)
★★★★

1987年のニューヨーク・ハーレムを舞台に、読み書きがほとんど出来ない16歳の肥満少女プレシャスが、両親による想像を絶する虐待に耐えながら生きる過酷な日常と、一人の女性教師との出会いがもたらす一条の希望を描き出す。(allcinemaより)


Precious_2 アカデミーの作品賞、監督賞、主演女優賞などにノミネート、助演女優賞を受賞した作品。予告を見た時点では、主人公プレシャス(ガボレイ・シディベ)の容姿がポイントとなる映画だと想像していた。プレシャスが太って醜く、性格も塞ぎ、魅力の欠片もない少女であることが強調されていると感じたからだ。が、容姿はこの映画のテーマにはほとんど関係ない(そもそもそんなテーマがシリアス映画になるはずがなかった)し、映画では始まってすぐにプレシャスに共感できるようになる。

辛い目に遭うたびに、セレブ・スターになった自分を空想するプレシャス。その空想(映像)の中の彼女がとてもキュートなのだ。しかし、プレシャスにとって空想は、現実逃避の手段であり、決して夢ではない。ここがまともな環境で育った子供とは違う。

母子家庭同然で、母親(モニーク)は彼女を召し使い同然に扱い、暴力も振るう。その理由はやがて明らかになるが、プレシャスも無学のままだったら母親と同じ道を歩むことになっただろう。幸い彼女は、良い教師や級友と出会い、家庭の外とのつながりをもつことができたのだけど、行く手が多難すぎる…。おそらく厳しい現実はどこまでもプレシャスを手放そうとしないだろう。ものが分かったような大人は彼女の選んだ道に大反対するだろう。しかし、この究極の選択をせずに希望はないのも確かなのだ。

監督がアメリカ黒人だし、主な出演者も黒人なので、この作品は由緒正しいブラックムービーなのだと思うが、これまで自分が観たブラックムービーにはない親しみやすさがこの映画にはあった。監督のリー・ダニエルズがゲイであり、マッチョを誇示する黒人男性がメインの登場人物から排除されていたり、生々しいラブシーンがなかったことが大きいかもしれない。

フリー・スクール教師役のポーラ・パットンをずっとハル・ベリーと思って観てた…。なんという思い違い! ポーラ・パットンは表情が木村佳乃似だね。モニークの熱演はちょっとばかりうざい。マライア・キャリーはけっこう重要な役なので力不足な感じがしてしまうが、看護師役のレニー・クラビッツ(実はこちらも見終わったあとにレニクラと気づいた…)は違和感なかったので驚いた。登場人物の中で唯一といってもいい大人の黒人男性が、プレシャスに優しく接する看護師というところにも、監督の資質を感じる。

オプラ・ウィンフリーにまつわる話(映画の製作総指揮で本人も参加している)は日本人には分かりづらいが、貧しく無学な人がいかにテレビから影響を受けているかも表しているんでしょうね。母親がいつも家でテレビを見ている場面が登場するのには意図するところがあったのだ。それに対比して描かれているのが、教師とその同居人の知的な会話(実はどうってことのない会話なのだが)を、プレシャスが大いなる憧れをもって眺めている場面。印象に残る場面だった。

 

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コメント

ひめさん、おはーヽ(´▽`)/

わー、これ昨日友人が
「そーいえば、太っちょの黒人の女の子が主役の・・」
「あ、マキもそれ観たいのよ~」
みたいな会話をしたところだったんです!

千葉でやるかな~?
もし遅れてでも上映されるなら、ぜひ観たいっす!

そーいや
「抱擁のかけら」地元でも間に合いませんでした・・。゜゜(´□`。)°゜。

明日、もし足がもってくれれば
ハルナと「アリス・・」を観る予定でいます♪

ここしばらく、骨壊死の痛みが強かったので
映画館にまったく行けずにいたので
(最後が、先月の新宿ですから・・泣)
本当に明日が楽しみなんですよね。

(あんまり痛くて我慢しきれず・・)金曜に
時間外で診てもらい
麻薬系の座薬を追加でもらって
なんとかしのいでいる状態なので
まさにハイリスクなんですけど・・・(;´д`)トホホ…

今日も
後一時間ぐらいしたら
整形の外来なんですよ~・・・。
映画のためにも
がんばるっす!

うーん、プレシャス観たいな~~

マキより(はあと)

>マキノコさん、こんばんはー。
映画館にも行けないほどの痛みでは、何も予定を立てられませんね。
無理をなさらぬように、行ってらっしゃい。
アリスか・・・なんかあのCMや広告のジョニデの顔だけでお腹いっぱいですが、
題材は面白いらしいですね。

プレシャスは無理して映画館で観なくてもいいかな〜と思いますが、
辛い話をほんわかと表現していて面白いですよ。
都心でも2館でしかやっていませんが、これから拡大していくんでしょうかね。

最近、自分がアカデミー賞関連の映画を淡々と消化しているような気がして来た(笑)
これは、予告だけで純粋に「見たい!」と思ってた作品。

ところが、プレシャスには共感も感情移入も、同情すらしなかったと言う。。。。私は鬼だな。
「がんばれ!」と言うより、「なめんな!」と、、、思っちゃう私。

「無知」の怖さ。
「教育」が何より大切だと思いました。

モニークの演技がウザいに1票!(笑)
モニークが、サミュエル・L・ジャクソンに見えて仕方なかった。

>えむさん、こんばんは。
アカデミー作品賞の公開が相次いでるけど、期待をもって見るせいか、
実はどれも思ったほど・・・というのが正直なところです。
あとは「17歳」を観る予定でいますが。

「なめんな!」というのは良識ある大人の意見でしょうね。
私は擁護派ですけど・・・いつもながらの立場で笑
しかし、無知な親の影響で、子供が「読み書き」を覚えることすら自分にはできないと思い込んでしまうというのは、大変な虐待だよね。子供に過度な期待を寄せる親のほうがはるかにマシ。

モニークの演技は役には合っているんでしょうけど、本人が持っている押しの強さにはちょと引きますね。

黒人文化に長く触れていると、いかにも黒人!という作品より、曲とかストーリーがシッカリした上で黒人らしさが匂ってくるようなのが良くなりますよね。黒人の好きな音楽とか映画とかは、そういうもんだと思うんですよね。

熊本に来たら観ます。

>k.m.joeさん
こんばんは!
ブラックムービーは黒人らしさを誇示しようとして変に力が入っているように感じることが多かったのですが、これはそれがなかったです。時代を経て、限られた人だけのものでなくなった今のブラックミュージックに共通するところを感じました。そこが新鮮でしたよ。

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» プレシャス (試写会) [風に吹かれて]
幸せに生きる勇気を 公式サイト http://precious-movie.net4月24日公開同名小説(サファイア著)の映画化1987年、ニューヨークのハーレム。体形的なコンプレックスを持ち、文字の [続きを読む]

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