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2009年12月26日 (土)

すべてはおまえから始まったのだ…

ブッカー賞作家ジョン・バンヴィルが別名義でミステリに初挑戦!というふれこみ。

『ダブリンで死んだ娘』ベンジャミン・ブラック著/松本剛史訳
(ランダムハウス講談社 2009年邦訳)


Christinefalls 1950年代のダブリン。看護師ブレンダの送別会で酔っぱらった病理医クワークは、ふらふらと深夜の死体安置室に入っていき、そこで義兄である産婦人科医マルの不審な行動を目にする。そばにあったのはクリスティーンという若い女性の新しい死体。しかし、その死体は翌日には消えており、残された死亡診断書には、マルが筆跡を偽装したと思われる文字で「肺塞栓」と書かれていた。同じ頃、ブレンダは看護長の命令により、誰の子供だか分からない赤ん坊をあずかり、アメリカ・ボストンへの船路にあった…。


カトリックでは中絶や、場合によっては避妊も禁じられているという事情を背景にしたストーリー。孤児を巡っての教会と狂信的な団体による不正行為を暴く内容ではあるが、読み終わってみれば、若き日に不幸な過ちをおかした男の感傷的な物語という印象のほうが強い。そこはやはりブッカー賞作家だからだろうか。人間の複雑な心理を切り取ってみせる文章表現はところどころ魅力的。

主人公クワークが、何者かに脅迫されながらも、出産時の出血で死亡したと思われるクリスティーンの謎に執着する理由が、徐々に明らかになっていくところがミソ。それとともにクワークとマルの家族関係と、一族それぞれが抱える秘密も明らかになり、後半ちょっとした衝撃が待っている…。

総じてやり切れない話ではあるが、これを読んでいる途中で、個人的に自分がやらかしたことで気分がひどく落ち込んでおり、そんな気分のままで読んだら、とても気持ちよく入り込めた。小説が面白いかどうかは人それぞれだが、気分にも大いに左右されることを再発見。しかし、クワークは女にもてすぎ。

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