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2009年12月10日 (木)

中世の若き女性検死医の物語

2007年CWA最優秀歴史ミステリ賞受賞作です。

『エルサレムから来た悪魔』アリアナ・フランクリン著/吉澤康子訳
(創元推理文庫 2009年邦訳)


1171年のイングランド。トマス・ベケット大司教殺害の衝撃もさめやらぬ王国を、ケンブリッジの町で起きた、子どもの連続失踪・殺害事件が揺るがしていた。事件はユダヤ人の犯行だとする声が強く、私刑や排斥運動が起きる。富裕なユダヤ人を国外に追放してしまえば国の財政は破綻し、かばえば教会からの破門は避けられない。進退窮まった国王ヘンリー二世は、シチリア王国から優秀な調査官と医師を(内密に)招聘し、事件を解決させようとする。若き女医アデリアは、血に飢えた殺人者の正体をあばくことができるのか…。(文庫扉より)


Mistressoftheartofdeath_ これは楽しい! 歴史、宗教、医学、サスペンス、ラブロマンスなど、サービス精神たっぷりの小説。CWAの最優秀歴史ミステリ賞というのは正式には「エリス・ピーターズ・ヒストリカル・アワード」と言うのだが、そのエリス・ピーターズの代表作「修道士カドフェル・シリーズ」よりも、エンタメ性では上ではないかと思う。

その理由の一つは、女医(専門は検死)アデリアが、宗教とも当時の女性差別の因習とも無縁なきわめて現代的な考え方を持っており、一方で意に反する相手に恋をしてしまうなど、ヒロインらしいヒロインであること。男性読者はどうか知らないが、女性には共感しやすいキャラクターになっている。他の登場人物たちも個性が立っていて、良い。例えばアデリアの護衛役であるサラセン人の宦官マンスールとか…、こういう人物設定も女性受けなのだろうな、おそらく。


また、サレルノで当時ヨーロッパ随一の医学を学んだ彼女が、保守的なイングランドで、その身分を隠して腕を発揮していく様は、ちょうど今テレビでやっているドラマ「JIN-仁」の面白さに似ているかも。
まずは冒頭のつかみが巧い。サレルノからやってきたアデリアたちは、ケンブリッジへの道中、修道士や修道女、十字軍の騎士などからなる巡礼の一行と一緒になる。そこで、修道院の院長ジェフリーが尿閉の症状を悪化させ、息も絶え絶えになっているところを、異教徒かもしれない人間、しかも若い女性が、葦の茎を使って治療してしまうのだ。驚愕し、「このことは誰にも知られてはならぬ」と恐れおののきながらも、感謝する修道院長!笑
いきなり下半身ネタというのが楽しくて仕方ない。そして、男性の下半身描写はその後もたびたび登場するのだが、これも著者のサービス精神のなせるところと勝手に解釈した。続編に期待します。

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