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2009年7月21日 (火)

レスラーという職業

面白そうだけれど、流血しているレスリングの試合のスチールを見て、映画館の大画面で見るのは気が進まない、DVD化を待とうと思っていた。が、映画館に行ってよかった。ミッキー・ローク演じる主人公の、傷だらけの肉体、汗、息切れなどが真に迫り、使命を背負って生きていくとはこういうことなのだなというのを目の当たりにした思い。圧倒させられました。

「レスラー」(2008年 アメリカ)
★★★★★


ランディ・ロビンソンは80年代に大活躍したプロレスラー。しかしそんな栄光も今は昔、それでも彼は老体に鞭打ちながら小さな地方興行に出場して細々と現役を続ける不器用な男。ひとたびリングを降りれば、トレーラーハウスに一人で住み、スーパーマーケットのアルバイトで糊口を凌ぐ孤独な日々。そんなある日、長年のステロイド常用がたたって心臓発作で倒れたランディは、ついに引退を余儀なくされる…(allcinemaより)


Thewrestler 映画は唐突に終わる。映画のタイトルが「ランディ・ロビンソン」でも「ザ・ラム」(レスラーとしての愛称)でもなく「レスラー(The Wrestler)」である意味がじわりと染みてきた。特定のヒーローを描いた映画ではなく、人々を楽しませ元気を与えるために、自らにはとことん過酷を強いるプロフェッショナルとしての生き様を描いた映画だって。


プロレスラーはエンターテイナーであることを、映画はその舞台裏を描くことを通して伝える。これがプロとしての美学を感じさせ、むしろかっこいいのだ。ロビン・ラムジンスキーは、レスラーとしての全盛期はとうに過ぎて、もはや収入は乏しく、トレーラーハウスの家賃も払えないくらいなのに、レスラー"ランディ・ロビンソン"のトレードマークになっている羊色の髪を維持するために美容院に通ったり、肉体を逞しくみせるための日焼けマシンにはお金を惜しまない。派手な演出のために、自分で肉体を傷つけるのも厭わない。


一方で、肉体が資本の職業の過酷さも描いた映画だ。危険な薬を服用するという犠牲を払っても、老いだけは容赦なく、彼自身と、彼が演じてきたキャラクターを引き離していく。そして、レスラーとしての過去の栄光は忘れがたく、私生活で待ち受けるのは孤独だけ…結局、勝利するのは"ランディ・ロビンソン"の人格だ。家族との決裂の後、スーパーマーケットに働きに出て、売り場に向かう彼の後ろ姿をカメラがずっと追う場面では、ロビンの人格がランディにすっかり侵食されてしまったように思えた。


なんといってもミッキー・ロークの演技が素晴らしかったが、ダンサーのキャシディ役のマリサ・トメイも裸を晒して熱演! 老いたレスラーと対のように、子持ちヌードダンサーを登場させるところが素晴らしい。肉体が老いることの残酷さと闘っているのは、社会的にはむしろ女のほうが多数だよね…。

ラスト近くで、ランディの中にわずかに残っていたロビンが、キャシディの居た場所を振り返るシーンが最高に切なかったです。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

ひめさん、こんばんは♪

わぁー、やっぱりひめさん観たんだ〜♪

うう、マキも早くみたい…。
(って、千葉あたりでまだ上映しているのだろうか?)

話の筋もさることながら ミッキー・ロークだから(余計)そそられるんですよね〜♪
(今の彼にピッタリの役どころだと思う)

あー
ひめさんの記事を読んだら絶対観たくなってしまった…。

マキより
ひめさんへ(はあと)

>マキさん
そういえば、マキさんは時間が合わなくて見そびれたんですよね!
もう上映も終わる頃に映画館で見たいというようなことを書いてすみません。
DVDになっても良いものは良いです。

映画は見る前にはほとんど情報を仕入れないようにしているので、この映画の主演にミッキー・ロークが正式決定するまでの経緯も知らなかったんです。とても感動的なエピソードで、だけどそんなことを知らずにみてもすごく良かったので、本当に良い映画だと思います。

ずいぶん容姿が変わってしまったけれど、笑うと昔の面影があってドキッとしましたよ。

多分ネタバレ書いてありますね?
だから記事は読まないけど(先日の「愛を読む人」もぐっとこらえて読んでません)
ミッキー・ロークがどんなだったか興味があります。
顔は整形でひどいことになってるようだけど、肉体はどうなってるんでしょうか。
早くレンタルで見たいものです~。

>ふぁびゅらすさん
多分ネタバレありますね。どこかにひと言、お断りを添えておこうかなあ。

ミッキー・ロークは二足のワラジのボクシングの怪我のために整形したみたですね、よくは知らないんですけど。
顔も肉体もプロレスラー以外の何者でもない、そして、昔は人気のレスラーだったと分かるオーラもちゃんとあって、ずっとカメラが彼の背中を追ったりするんだけど、見飽きなかったです。ぜひ、見てくださいませ♪

なるほど。整形はボクシングの怪我のためだったんですね。
肉体はさすがに鍛えたんだろうなぁ。
ハルク・ホーガンを彷彿とさせるようなイメージですが、評判が良さそうなので是非見たいです!有難う!

>ふぁびゅらすさん
肉体、ぶっとかったです。
あそこまで鍛えるんでしょうね、やはり。
ミッキー・ロークを主演にしたことで予算を削られ、ギャラも少なかったそうですが。

「レスラー」は、先日の旅行の行きの飛行機で観ていたのですが、映画2本目でしたので、最後の最後のシーンのところで、ヒースロー空港に着いてしまい、大事なラスト・シーンを観ていないのであります。最初に観たのはヒカさんオススメの「ザ・バンク」。ホント面白かったよ。クライヴ・オーエンは、こういう役柄において魅力感じるね。
でね、私は、ランディがスーパーマーケットで肉切って、量り売りにイライラした後、怪我して奮然としてソコ出ていってサ、自分の体のコトや娘のコトを思いながらも結局レスラーに戻って行くシーンまで観ているのね。
最後どーなったんかなあ?と思うのよ。旅行から帰ってきたら、日本プロレス界において、三沢が、リングで死んだ!っていうニュース聞いたりしてサ、勝手に三沢みたいな末路を迎えたのかもしれないと思ったりしていてね。
フツーありえん、ネタばれここで教えてよ。ランディは、どうなったの?
「バカっ、ちゃんと、自分で観なきゃダメよ!あのラストの雰囲気を味わいたきゃ!」ってお答えでありましたらば、改めて、観に参ります or DVDで……
ところで25日ってKSアニバーサリーって来る?

>アモさん
飛行機の中の映画、充実してるね〜。私が先日エジプト航空に乗ったときは、座席じゃなくて前方の壁にあるスクリーンのみで、宗教的な理由からか、アメリカ映画だけれどお子様向けの、聞いたこともないつまらない作品が上映されててがっかりだった。

映画のラストは・・・ここのブログ、コメント欄も検索対象になっちゃうんだよねえ。でも、バラしてしまうと見る人の「想像に任せる」という結末です(^-^; だけどそこがいいんだよ〜。DVDで確認してね。

KSアニバーサリーは、残念ですが先に予定が入っていてパスなんです。Mさんに悪いことをしてしまったんだけれど、ライブのチケットを購入してしまっていたもので。何かいままでと違う集いになりそうですね。楽しんできてください。

(*゚▽゚)ノひめさん、こんちは~

なんとか、マキのあほぶろぐに
この記事
リンクしちゃいましたheart
(迷惑でしょうが・・・)

あーリンク一つに
一苦労って・・・自分から逃げたくなる瞬間ですよ。
(自分から逃げたくなるのは
ランディーだけじゃない・・・)

ひめさん
最近無気力ってありますが
大丈夫ですか?
(まきが心配したところでどーにもならないでしょうけど・・・)

やっぱ忙しすぎるのが原因っすかね?

マキの
こののんきをけてあげたいっす(*´σー`)

では
今から、母と妹と
近所のワンズモール(ニトリやユニクロが入ってる)に
行ってきやす♪

マキより(はあと)

>マキさん
リンク、ありがとうございます!
このような記事のために苦労かけてすみませんねsweat01
でも、一度覚えると、リンクはなかなか便利ですよね。

私はいま「転職したい病」をかなりこじらせていまして、
この先、人生が転落一方なのは分かっているんですが、
このまままったくいいところが感じられない今の会社に居続けるのと、
えい、やと辞めてしまうのと、どっちがマシな転落だろうと考えてます。
ま、日曜の夜はいつも鬱なんですけどね!

マキさんは最近ずっと外出してません?
体調が良さそうで何よりですup

今更ですが、見ましたよ~~!
レンタルになったはずなのに、TSUTAYAの新作コーナーに無く。お店の人も一緒に探したけど無く。
諦めかけたところ「ありましたありました」と持って来てくれたレスラー
「訳あってオススメコーナー」だった。。。(--)

いや~思った以上に良かった!
himehikageさんの記事もすごくよく理解できる。深い!

若いレスラー達がラムを一レスラーとして尊敬して接している姿が良かった。
肉体を商売道具として生きてきた人間の幕引き。
最後までレスラーであり続けることを選んだ男のまさに美学ですね~。
サイン会でお客が余り来なくて暇をもてあましてる他のレスラーを追う視線とか、ずしんと感じるものがあった~。

ってここで必死に書かずに自分のとこへ書けって感じですが・・。
ミッキー・ローク無くしてありえなかったかもね、この映画!

>ふぁびゅらすさん
観られましたか!
訳あってってどんな訳なんでしょうね〜。普通に感動作じゃん?
オススメに選んだ店の人、何か個人的な思いがあったんでしょうか。

そうそう、レスラー仲間の関係がね、プロの規律があって、
清々しいんですよね。
それも居心地良くてレスラー辞められなかったのかなあ。

そして、セリフのないところでのカメラが雄弁でした。
ミッキー・ロークの後ろ姿が忘れられませんが、
マリサ・トメイの崖っぷちな感じも、すごく上手くなかったですか。
う〜ん、人の感想を読んだら、もう一度観たくなってきました。

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