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2009年6月24日 (水)

リンカーンの後部座席がオフィス

村上大先生の新作は読まないけれど、コナリーの新作は読むんです。

『リンカーン弁護士』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(講談社文庫 2009年邦訳)

高級車の後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡り、細かく報酬を稼ぐ刑事弁護士ミッキー・ハラー。収入は苦しく誇れる地位もない。そんな彼に暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込んだ。久々の儲け話に意気込むハラーだが……警察小説の名手が挑む迫真のリーガル・サスペンス。(裏表紙より)


Lincolnlawyer "ボッシュ・シリーズ"を離れての本作は警察とは対立する側の刑事弁護士が主人公。中年弁護士ハラーの顧客の多くは、麻薬を売ったり売春で食いつないでいる常習犯で、彼らの量刑を軽くしてやることがハラーの仕事のほとんど。こう書くと、弱い者の味方の人情派と早合点しそうになるが、取り立てるものはしっかりと、情け容赦なく取り立てるのだ。弁護費用の相場(ましてやアメリカの)などまったく分かりませんが、依頼人がぼったくりと言いたくなる気持ちは分かるよ、うん。で、ある日、クレジットカード詐欺で捕まった彼の依頼人から指摘されてしまう。
「あんたはおれと同類のペテン師だ。それがわかっているのか、ハラー? ロースクールでもらった紙切れのおかげで、あんたは合法的な存在になっているんだ。それだけさ」


弁護士の仕事を続ける中で、そして2度の離婚による経済危機を経て、世俗のアカにまみれた主人公が、見失ってしまっていたものに気づいたときには、もう遅かった。ハラーは自らのおごりが招いた過ちによって、とんだ刑事訴訟案件を抱え込むことに・・・。と、いつものようにだらだらあらすじ書くしか能のない私ですが、この状況設定を思いついたコナリー、さすがだと思いました。アイデアの勝利。

そして終盤。法廷ばかりか法廷外の人々も意のままに操って問題解決に導くという荒技を、これだけ無理なく読ませるコナリーは、構成にそつがなく、相変わらず抜群の安定感をもっていると思う。ひとつが意のままにいかなくても、成り立つ仕組みになっている。で、このすきのなさが、たまに鼻につき、実はファンとまではいえない作家だったりするのだけれど、きっとまた新作が出たら買うんです。


ボッシュは大のジャズ好きだが、この小説の主人公ハラーは、自分の依頼人たちのことをよりよく理解するためにラップやヒップホップに耳を傾ける。お気に入りは故トゥパック・シャクール。

2pac「God Bless the Dead」
http://www.youtube.com/watch?v=ARVmXdHot_U

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