« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月

2009年3月28日 (土)

初めて読むアガサ

今シーズン、テレビ各局が同じようなエジプト特番を立て続けに放送したのはおざなりな感じがした。観光局がタイアップキャンペーンでもやっていたのでしょうか。


エジプト旅行前に買っておいたものを、今ごろ読む。

『ナイルに死す』アガサ・クリスティー著/加島祥造訳
(ハヤカワ文庫)

Deathonthenile_
誰もがうらやむ美貌と資産を持つリネット嬢は、親友ジャクリーンの婚約者サイモンが気に入り略奪婚。ハネムーンでエジプト・ナイル河の豪華客船ツアーに参加したが、同じ船には銃を片手に2人をつけまわすジャクリーンも同乗していた。やがて現実化する殺人。しかし、最も疑わしいジャクリーンにはアリバイがあった。休暇で船に乗り合わせたポアロが犯人解明に乗り出す…。


1937年に発表された、名探偵エルキュール・ポアロ・シリーズの1冊。映画化されたものは一度観たはずだけれど、内容は忘れてしまっていて、それより、本の中でポアロのセリフが出てくるたびに、TVシリーズでポアロを演じるデビッド・スーシェの姿と、吹き替えの熊倉一雄の声が頭の中で再生されてしまうのはどうしようもなかったです笑。それだけキャラクターに違和感がない。この点は本を読むのにマイナスというよりプラスに働いた。珍しいことかも。


この手の本格ミステリは、性格などに明らかな問題があって、人に恨まれたり嫌われたりするのももっともだと感じる人物が最初に殺されるのが常套になっていると思うけれど、この古典作品は、富と美貌と若さを兼ね備え羨望の的となっている人物が殺される。そこがいわゆる他人の不幸は蜜の味。下世話な好奇心をかきたてる。
何もかもが思いのままで育ったリネットと違って、親友のジャクリーンは貧しい。しかし、ジャクリーンは一つだけ、リネットには及ばないものを持っていた。リネットはそれを一目見た途端にドキリとしてこうつぶやく。「ジャッキーってなんて運がいいのかしら…」。この掴みの部分がとっても良い! 2人の関係がどうなっていくかおぼろげに予想がつき、リネットの本性を確かめるために先を読まずにいられない。

さらに、ひと癖あって謎めいたほかの登場人物たちも魅力的だ。人間の描写は、P・D・ジェイムズらに影響を与えただろうことは容易に想像できます。名作の誉れどおり面白かったです。


本に登場するアスワン独特の岩と、アガサが滞在したアスワンのホテル。

Fi2621569_2e Fi2621573_2e

2009年3月22日 (日)

見さかいがなさすぎやしないか

ベルギー生まれ、英国在住の作家による悪漢小説風?

『コンラッド・ハーストの正体』ケヴィン・ウィグノール著/松本剛史訳
(新潮文庫 2009年邦訳)

Photo
ユーゴ内戦に巻き込まれて恋人を失った後、ドイツ人の犯罪組織に雇われ、数々の殺しを重ねてきたコンラッドが、あることをきっかけに自由の身になることを決意。そのためには自分のことを知る組織関係者4人を消さなければならないと行動に出るが…。


文庫の紹介に「哀切のラストが待つ絶品サスペンス」の文句があるんですけど、ずいぶん安っぽい哀切だなあ・・・。コンラッドの計画は、コンラッドが最初から騙されていたこと、ドイツの犯罪組織など存在しなかったことで迷走を始める。その迷走の中に彼なりの行動規範があれば、キャラクターとして魅力も出てきたと思うのだけど、どうもすべての行動が行き当たりばったりで、ゆがんだ矜持が鼻を突くだけ。共感できるところがまったくないまま読み終わった。

コンラッドの本当の雇い主が分かることで、コンラッドがヒーロー扱いになってしまうあたりは、その雇い主(組織)を批判するブラックユーモアが込められていると読めないこともない。でも、素直に読んでしまうと、これまた納得しかねる展開なのです。

2009年3月20日 (金)

外交官を父に持ち

詩人でフランス文学翻訳家の堀口大學の青春回想記の形を取って綴られる、メキシコ内戦を舞台にした歴史ロマン小説。

『悲劇週間』矢作俊彦著
(文春文庫 2008年文庫化)

明治四十五年、ぼくは二十歳だった。それがいったいどのような年であったか誰にも語らせまい。
一切は、公使としてメキシコに赴任していた父がぼくを任地へ呼び寄せようと心に決めたことから始まった。もとより学業に向かぬぼくは、やっとの思いで慶応の予科に入学したばかり、学生暮らしもまだ一年とは経っていなかったのに。
父はぼくを外交官にしたかったのである。(本の出だしより)

Photo

堀口大學の父・堀口九萬一は日本初の外交官であり、当時日本と密接な関係にあったメキシコに赴任中、軍事クーデターによって失脚したマデロ大統領の親族を公使館にかくまうなどして守り通し、サムライ外交官と謳われるーー。この小説はその出来事に焦点を当てるとともに、大統領の姪であるフエセラと堀口大學の内戦下での淡い恋を描いたもの。


これは内容がめちゃくちゃ濃い! いろんな要素が詰まっていて私にはうまく感想がまとめられないのだが、祖母に育てられた子供時代に始まり、与謝野晶子との交流、旅の途中に療養で滞在したハワイのこと、メキシコの歴史と風俗、革命の英雄パンチョ・ビリャとの一瞬の出会い、そしてコーヒー色の肌をした娘への一目惚れ、幾度かのデートなど、若き大學の体験したことがみずみずしく、大學の文体を模して綴られています。
人物もそれぞれに強い印象を残し、それだけでも十分に読み応えがあるのですが、しかし物語の軸となっているのは、大學の外交官の父と、革命の犠牲になったマデロ大統領とその一族のことでしょう。


今やっている大河ドラマ「天地人」は「義」がテーマ。そんな折なので、この小説にも「義」へのノスタルジをひしひしと感じてしまいました。
ロシアに勝利した日本人をメキシコ人が義の精神をもったサムライと称賛し、日本人移民たち(明治維新前後の戦の体験者だったりする)も、内戦の戦火があがると、身を挺してその精神を発揮する場面が描かれています。一方で、「外交は言葉でやる戦争だ」と語る大學の父は、やはり義を重んじつつも、公使として国益を守るためとあれば、マデロを騙して陥れた敵とも握手する。大學はそのことに憤るが、「外交で正義をなそうなど思い上がりだ」と諭す父。そして、やがて父もかつては理想との狭間に悩み通した過去があることを知るわけです。


欺瞞に満ちた西洋世界と伍していくために、切り捨てなければならない美徳もまた、若き大學の口癖「ひとつを失えば、ひとつを得る」に該当するのだろうか。
青春小説としての締めの一文が、うまいなあ(ここに書きたいけど書かない)。

2009年3月15日 (日)

とりあえず

Doblogからのテキストインポート完了!

提供されるエクスポートツールが使えないものだったらどうしようなんて言ってすみません。思っていたよりぜんぜん簡単でした。リンクも改行も生きているし、コメントもそのままインポートできたので、生かしておくことにします。
あとは、必要な画像を貼り付けてカテゴリーを指示するだけ。

でも、なぜかいっそうDoblogを去るさびしさが募って参りました…。

2009年3月13日 (金)

予期せぬトッピング

お昼に買った弁当チェーン店のお弁当に、ゴキブリが入っていました。がんもとニンジンとこんにゃくの煮物のすき間に、1.5センチほどのチャバネゴキブリが一緒に煮しめられ、佃煮となって。 「ゴキブリだけは不可抗力だよなあ~」と思いながら、すでにがんもとニンジンは食べてしまっていたので、こんにゃくだけは残して、残りのおかずもごはんもほぼ平らげました。 その前にひとしきり騒いで、同僚たちに見せまくったけど。

みんなはそのまま買った店に突き返すべきだと言いましたが、500円弱の弁当で儲けはどれくらいかとか考えると、ゴキブリ程度のことで人様に頭を下げさせるのはしのびなく、黙っていることにしました。下請けで働く身なので、一方的に値切っておいて容赦なくハイクオリティを求める客に普段から辟易しているというのもあります。でも、クレームつけるのが単に面倒くさかっただけだろうと聞かれたら、それも否定できないです。

どっちにしろ、あそこではもう二度とお弁当を買わないだろうなあ。

2009年3月10日 (火)

旧ブログのこと

Doblogの、見られなくなってしまっていたここ半年ほどの記事のテキストが復元されて提供され、今日ようやく過去掲載した画像もダウンロードできるようになったわけだけど……。
テキストと画像をつき合わせてみたら、文末やリンクなど一部欠けどころか、丸ごとなくなっているテキストもいくつかあることが判明。
これはさすがに痛い。

今日はたまたま有給消化日だったので、コツコツとこちらに記事をアップしていたのだが、今後提供されるエクスポートツールとやらも、はたして本当に使えるものなのか。一個ずつコピペするのと変わらないような機能だったらと考えると、クラッと目眩が……。
しかし、いつまでもあそこに預けてはおけない気がするのだ。運営体制に信頼がおけない。

あと、いままで頂いたコメントはどうしたものだろうか。記事と違って、再録しても投稿日を変更できないのが問題だ。あきらめるしかないのだろうか。


奇特な方が「Doblog難民キャンプ」というブロガーの行方を伝言できるサイトを作ってくださいました。私のお気に入りだったブロガーさんたちの多くの消息はいまだ不明です。

2009年3月 8日 (日)

イーストウッド監督の真骨頂

「チェンジリング」(2008年 アメリカ)
★★★★

クリント・イーストウッド監督がアンジェリーナ・ジョリーを主演に迎えた感動のミステリー・ドラマ。1920年代のロサンゼルスで実際に起きた事件を映画化。5カ月の失踪ののち保護され帰ってきた幼い息子が別人だったことから、本物の我が子を取り戻すため、捜査ミスを犯した警察の非道な圧力に屈することなく真実を追及していくシングルマザーの長きに渡る孤独な闘いを綴る。(allcinemaより)

以下ネタバレしてます。

Photo_5

こんなことが実話でも、さほど驚かなくなっているのが悲しいぞ。ロサンゼルス警察というと、時代は少し違うがエルロイのLA4部作を思い出してしまうせいもあるかも。ということで、この映画では腐敗した警察のやったことより、あのような殺人を犯した人物と、コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の関係のほうが題材としてインパクトがありました。特に、死刑を前にした殺人犯とコリンズが面会する場面は、本筋からいったらカットしてしまうのも可能ではないかと思うけれど、逆に印象に残りました。

コリンズは結局、警察からと、失踪した息子が生きているのか死んでいるのか分からないのが母親にとっていちばん辛いのではないかと考える周囲の人物から、計2回嘘をつかれたことになるのでしょうか。しかし、シリアルキラーの犯人だけは、彼女に嘘をつかなかった。犯人がコリンズと面会したのは、最後の善行と説得させられたかもしれないが、だからこそどうしても嘘をつけなかった。その場面は、嘘にさんざん翻弄されてきたコリンズと犯人の間に、一種の共感が成り立つように感じさせ、面白かったです。

それにしても、イーストウッド監督は、人間の狂気を「ホラー映画」として表現するのがうまいですね。ホラー映画がいちばん得意なのでは?

登場人物では精神病院の看護師たちも、強く印象に残りました。どういう気持ちであの仕事を続けているんだろうか。警察が腐敗しているのは周知のことなのに、良心の呵責を持たないことはないと思うのだけれど。腐敗した権力よりも、それに無言で従ってしまう弱き人たちがいることが、この映画の中でのもう一つの恐怖。彼女たちの表情のとらえ方が絶妙でした。

2009年3月 5日 (木)

1月2月に観たDVD映画

最近といっても、もう内容を忘れかけているのが情けない。


Photo_2

「ダージリン急行」(2007年 アメリカ)
★★★★★
やっぱりウェス・アンダーソン監督はいいべ。映画館で予告を見たときは今さらインドへ癒しの旅?なんて勘ぐってしまったけれど、明確で切実な目的のある旅でした。そして、本作もアンダーソン監督の美術や音楽へのこだわりは徹底しており、いろんな小道具も趣味を反映していちいち可愛らしい。インドといえども監督のカラーに染められております。そのため正統派のロードムービーとは言い難く、しかし、異国情緒に飲み込まれて変に真面目にならないところが良かったです。
冒頭、なぜかビル・マーレイが登場し、その脇を主人公の3兄弟の一人が走ってすり抜け列車に飛び乗るスローモーション映像から見惚れます。楽しくてなんだか眩しい思いがします。3兄弟が観光気分で露天で靴や毒蛇を買ったりするところや、映画ラストの小さな駅の待合室で、旅の終わりを少し惜しんでいるような兄弟のやりとりが印象深いです。観終わった後になんともいえない気持ちになる映画でした。


「オフサイド・ガールズ」(2006年 イラン)
★★★★
ジャファル・パナヒ監督。女性のスポーツ観戦が禁じられているイランで、サッカーW杯出場をかけた対バーレーン戦の大一番を、なんとか生で観戦しようとする少女たちと、それを阻むスタジアム警備を任された兵士たちの話。試合が行われている90分間の間の出来事を描いています。
テヘラン育ちの進歩的な少女たちと、田舎育ちの兵士との意識のギャップが面白い。言い争いつつも、互いに相手の立場を思いやる場面がさりげなく描かれ、温かい気持ちになります。ラストシーンを見ると、したたかさもちゃんと描かれているか? 田舎育ちの兵士役がいい味を出していました。


「プラダを着た悪魔」(2006年 アメリカ)
★★★★
コメディだけれど、なかなか見ごたえがありました。仕事することの本質を突いているのではないか。企業に就職すると、上から理不尽なこと、自分の主義に反することを強要されるのはよくあること。中にはそれを抵抗なく受け入れているようにみえる人もいるが、大抵は葛藤しながらなんとか妥協できる道を見つけて働いているんだと思います。
主人公アンディには、せっかく一目置かれたのにあそこで仕事を放り出してほしくなかったと思った私は、そんな世界にどっぷり浸ってしまっているのでしょう。でも、彼女の夢は別のところにあったのだから、そのへんで辞めて正解だったのでしょう。上司ミランダ役のメリル・ストリープの、気に入らないことがあると「口をちょっとすぼめる」演技が面白かったです。


「ミスト」(2007年 アメリカ)
★★★★
衝撃のラストとの触れ込みが、どうやら大げさではないらしいということで観ました。原作スティーヴン・キング、監督フランク・ダラボン。激しい嵐の翌日に、突然深い霧におおわれてしまった田舎町のパニックを描くホラー・ミステリー。
霧の中から湧いてくる生物がなかなかリアルでいい感じだったが、なんといってもマーシャ・ゲイ・ハーデン演じる聖書至上主義の狂信女! 彼女のうざったさがもうこの映画のすべてと言いたいくらいのインパクト。かつてこんなに殺したくなる人物はいただろうか笑
で、ラストですが、ああなる予感は随所にあった気がします。パニックホラー映画では、早く逃げるべきところで逃げなかったり、行っちゃいけない方向へ行ったりして気を揉ませるようですが、この映画もその繰り返しで、夜中に襲ってくる昆虫の化け物にみんなでのんきにライトをかざしちゃった日には、私もいい加減キレそうになりました。マヌケがすぎる。 しかし、繰り返し言いますが、なんといってもマーシャ・ゲイ・ハーデン演じる狂信女なんです。彼女がすべての元凶。なんだかんだいって、主人公すらも次第に彼女に感化されてしまっていた気がします。教訓としては「ネガティブに考えるとろくなことがない」ですね。


「告発のとき」(2007年 アメリカ)
★★★★
ポール・ハギスが原案・脚本・監督・制作を兼ねるのは「クラッシュ」以来のようです。イラク戦争から帰還後に失踪した息子と、その行方を一人で捜そうとする父親。昔ながらの“強い父親”とその父親に憧れて無理をしてしまう凡人の息子という構図は、大国を背負って戦わなければならない若いアメリカ人兵士の心境を表したものでしょうか。国旗を逆さにしたのは、その強いアメリカ自身がもう悲鳴を上げているという意味でしょうか。
とても丁寧なつくりで、出演者たちも熱演。しかし、いつも手堅いところが逆にいまいち面白くないという気がしてしまうポール・ハギスの脚本。話の先が読めるのに、思わせぶりもすぎるかな、特に女刑事役のシャーリーズ・セロンとか。しかし、彼女はいつの間にか役幅をずいぶん広げていますね。


「ぼくの大切なともだち」(2006年 フランス)
★★★★
パトリス・ルコント監督、ダニエル・オートゥイユ主演のコメディ。ギャラリーの共同経営者に「親友のいないさびしい男」と言われてしまった中年男は、その挑発に乗って短期間で親友をつくる賭けをする。しかし、知り合いの誰にも相手にされず、困り果ててアドバイスを求めたのは…。
自己中心的、思いやりがないなどと、知り合いや娘からも言われてしまう主人公ですが、でもみんな彼のことは嫌いではなさそうなんですよね。何か腑に落ちないところもありつつ面白く観ました。「スラムドッグ・ミリオネア」がクイズ・ミリオネアを題材にしていますが、この映画にもフランス版クイズ・ミリオネアが登場。ほかにも同番組を題材にしている映画がありそうです。


「イーオン・フラックス」(2005年 アメリカ)
★★★☆
新種のウイルスによって人類のほとんどが死滅してから400年後、残った人々は汚染された外界から隔てられた都市で暮らしていたが…。秩序維持の名の下に人々を管理する政府と、その政府に不審を抱く地下組織の戦いという、わりとよくある内容。女戦士シャーリーズ・セロンのセクシーな衣装をはじめ、ビジュアル的にはなかなか楽しめました。


「転々」(2007年 日本)
★★
そもそもテレビドラマ「時効警察」の面白さが分からない私が、その時効警察のファンを当て込んだとしか思えない映画を観てしまって後悔しています。東京暮らしなので、あああれはあそこらへんかと思いながら見続けることはできたけれど、笑いの小ネタ、どこかで聞いたことのあるうんちくを並べ立てただけのペラペラな映画という感想です。一応テーマはあるのだけど、何も感じないものは感じない。広告屋さんがつくったみたいな映画だ。この映画の中のオダギリジョーも三浦友和も嫌いじゃないですが。


「近距離恋愛」(2008年 アメリカ/イギリス)
★★
久々にラブコメ! 嫌いじゃないよラブコメ。でもこれは…。花嫁付添人とか、ひとつも笑えなくて観ているうちにどうでもよくなってしまった。

2009年3月 2日 (月)

MWA賞最優秀長篇賞受賞作

『川は静かに流れ』ジョン・ハート著/東野さやか訳
(ハヤカワ文庫 2009年邦訳)

Photo

継母の目撃証言によって殺人の容疑者にさせられ、実父にも見放されて、やりきれぬ怒りを胸に故郷を去ったアダム・チェイス。苦境に陥った親友からの電話を機に、5年ぶりに故郷に戻るが、彼を待ち受けていたのは、変わらぬ周囲の目と新たな殺人事件だった…。


アダムの実家は1789年以来のノース・カロライナ州の大農場主。アダムは幼いときに、目の前で母親に銃で自殺されており、その自殺の理由が父親にあるのではないかとのわだかまりを抱えている。また、5年前の出来事によって継母との関係は修復不可能。義理の弟、妹との関係もぎくしゃくしたままだ。一方、町には原子力発電所の誘致計画が持ちあがり、土地を売ろうとしないアダムの父親と、推進派の間でもめごとが起きている。不穏な空気の中で、アダムが妹のように可愛がってきた農場監督の孫娘が何者かに襲われて大けがを負う。そして、その事件をきっかけに過去のいろいろなものが吹き出してくる。

父と子の関係がテーマとなっているミステリですが、面白いのはなんといっても会話の部分。身内同士の会話、アダムと元恋人との会話、アダムに疑いの目を向ける保安官事務所の刑事との会話など、誰もかれもが疑いを隠そうとせず、容赦なく面と向かってものを言いあう。こんなに殺伐としているのは、もとは原住民のサポナ族を殺戮のうえに奪い取った土地だからかな、なんて因縁めいたことを考えてしまいました。しかし、陰湿さはないのである意味清々しいです。読み出したら止まらない面白さがあります。

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

インデックス

無料ブログはココログ