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2009年1月12日 (月)

ドイツの記録的ベストセラー

昨年のベストミステリにも選ばれたりしていたので読んでみた。出版されたばかりのときに一度手に取り、上中下巻あわせて1600ページ超はさておき、文庫カバーの著者の顔写真を見てパスしてしまったのだが、その直感はまんざら外れてなかったかな…。読みたい本とは違うという。

『深海のYrr(イール)』フランク・シェッツィング著/北川和代訳
(ハヤカワ文庫 2008年邦訳)

Yrr

ノルウェー沖では石油会社が、海底のメタンハイドレート層を新種のゴカイが覆い尽くしているのを発見する。カナダのバンクーバー島では、ホエールウオッチングの船をクジラが襲う惨事が起きるが、やがて世界各地で原因不明の海難事故が続発していることが分かる。また、南米やオーストラリアでは猛毒クラゲが大発生。フランスでは、食用ロブスターが運んできた殺人バクテリアが大暴れ。そして大きな被害がアメリカにも及んだとき、欧米の科学者たちが海の異変に対処し、人類を救う方法を見つけるために招集される…。

あとがきによると、ドイツではエコ・サスペンスとして大きな話題を呼び、分厚い本ながら国内だけで200万部以上を売り上げたそうだ。サスペンスというよりはSF小説ですね。で、個人的には、海洋汚染などへの警告を込めた小説というよりは、アメリカ批判のほうが痛烈で(小説の中の悪役は個人だが、国を象徴しているとしか思えない)、ドイツでもそこが受けたんだろう思えるくらい、この小説の中で目を引いた部分だった。

最初のほうのゴカイをめぐる話が面白かった。白い毛の生えたピンクのゴカイが無数蠢いている様子を想像するのが。見た目のえぐい深海の生き物は楽しい。

しかし、長すぎるー。時間をかけて読んだにしては、大筋以外の印象が薄い。実在の科学者なども登場し、地球科学、海洋生物、遺伝子学、石油資源産業、地球外知的文明・・・さまざまな分野の知識が盛り込まれているが、登場人物たちのどうでもいいエピソードやどうでもいい会話の中に埋もれてしまった感じだ。たくさんの人物が登場するが、一人として興味を持てないのにも困った。さらにどうでもいいけど、主人公の一人、ちょっとナルシストなノルウェーの海洋生物学者は、著者の顔写真のイメージと被って仕方ない。

後半、主要人物が次々と死んでいくのは、人種とかも計算尽くで死ぬ順番を決めているようでなんだか白ける。アメリカの比較的最近のSF映画の名前がいくつか登場するが、例としてその映画名を出すのがこの小説にプラスなのかマイナスなのか微妙に思えるものが多い。このあたりのセンスを受け入れられるかどうかが、小説にのめり込めるかどうかをけっこう左右する。

あと、登場人物の語りを通じて、アメリカ先住民マカ族の捕鯨については伝統文化だからと認めながら、対して日本やノルウェーのやっていることはすべて商業捕鯨のように非難しているところがカチンときた。日本とメキシコの合弁企業による製塩プラントもやり玉に挙げられていたりとか、日本ってドイツ辺りでは環境に悪いことばかりしている国のイメージなのかなあと思ったりして。そんなことがうかがい知れるところが、面白かったといえば面白かったかも。

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