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2008年12月20日 (土)

容疑者は初代“King of Jazz”

1907年のニューオーリンズを舞台にした歴史ノワール。

『快楽通りの悪魔』デイヴィッド・フルマー著/田村義進訳
(新潮文庫 2004年邦訳)

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奴隷黒人とチェロキー族とフランス移民の血を引く母と、シチリア移民の父の間に生まれたヴァレンティン・サンシール。元警官で、今は赤線地帯ストーリーヴィルの用心棒をなりわいとしている彼は、娼婦を狙った連続殺人事件の犯人捜しを、街のボスで州議会議員のトム・アンダーソンから依頼される。現場に残された黒い薔薇以外の手がかりが乏しいなか、警察はヴァレンティンの幼なじみのコルネット奏者バディ・ボールデンに目を付ける。理由は、被害者全員が死の直前にバディと会っていたからだが、ヴァレンティンは根強い人種差別を背景とした策略のにおいをかぎつける…。


文庫の帯には「J・エルロイを凌駕するノワールの逸品」とのキャッチフレーズが……。凌駕するとはずいぶん大きく出たなと思うけれど、当時のニューオリンズの描写はなかなか趣があって、後半の緊迫感のある展開も読ませる、面白い探偵小説でした。文庫表紙の幽霊みたいな絵は内容にあまり合っていないと思う。

ブードゥーに詳しいミュージシャンとしてジェリー・ロール・モートンが登場し、まだ幼いルイ・アームストロングも、街で大人気のコルネット奏者バディに憧れる少年として一瞬登場する。というか、私は知らなかったのですが、この小説のもう一人の主人公といえるバディ・ボールデン自身が、ジャズの創始者といわれる伝説の人物だったのですね! あとがきで知って、ひょえーと感嘆しました。
そればかりでなく、街のボスも娼館のマダムたちも実在の人物で、あと、娼婦たちの写真をとても芸術的に撮る、足が不自由で醜い容姿の写真家というのが、映画「プリティ・ベビー」でキース・キャラダインが演じていた人物だったとは、ぜんぜん気づいていなかった! だってキャラクターが違いすぎるからさー。

やたら大きな音で人々を熱狂させ、一方ではうるさいだけと煙たがる人も多かったバディ・ボールデンが、毎夜の演奏で神経をすり減らし、ライ・ウイスキーにおぼれ、やがてアヘンやコカインで自滅していく様が、彼のコルネット演奏の描写から伝わってくるのがすごい。
著者デイヴィッド・フルマーは、雑誌の音楽ライターの仕事もしていたそうで、そういう描写はお手のもののようです。ノワールといっても、ヴァレンティンの恋人である娼婦ジュスティーンや孤児院出の少年ビーンスープのエピソードは心和むもので、暗い気持ちにさせられる事件の顛末とのバランスが良かったです。

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