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2008年11月24日 (月)

この地からは逃れられない

新刊紹介で見て、『アラビアの夜の種族』の東北地方版みたいなものか?と興味を持ち、書店を何軒か覗いたけれど見つからない。そこでネットで注文して、届いてびっくり。まるで辞典みたいに分厚くて、ひるんだ。それでもバッグに入れて持ち歩き通勤電車の中で読んだよ(笑)。家でだけ読んでいたらきっと挫折していたでしょう。

『聖家族』古川日出男著
(集英社 2008年)

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京の都の鬼門に位置し、表の日本史からは無視されてきた東北地方を舞台に、異人(まれびと)の記憶や血統、武術を受け継ぐ一族の物語……いや、単に妄想癖のある一族の物語かも?いくつかの媒体に発表したものに書き下ろしを加えて一つの小説にまとめたものだそうで、孤立しているように思えるエピソードもあるし、多くの謎は謎のまま放っておかれる。しかし、その世界にどっぷり浸ったという長編なりの充足感があればいいんだけど、正直、今はなんだか空しい思いにかられています。

実験小説のようなところがある。言葉遊びがとても多い。同じ内容が言い方を変えてくり返し出てきたり、東北弁の文章まるまる標準語で言い換えてみたり。その部分が正直あまり面白くなく、むだに小説の嵩(かさ)を増しているだけに思えてくると、もうダメです。ちょっと冷めます。

中世の貿易港・十三湊や馬産地としての歴史、軍用のための犬狩り、八郎潟の干拓事業など、東北の歴史にまつわる話から、妄想のフィクションに逸れていくところはとても面白いです。史実や現実と創作の区別がつかない部分が面白い。郡山のビッグアイなんて、なんだその不気味なタワーは?と検索しちゃったくらいだもの。八郎潟干拓についてはもちろん知っているし、仕事で現地に行ったときに暇つぶしに干拓の資料館にも立ち寄ったことがあるけれど、この小説の中ではフィクション以上にありえない話に思えてくる。十三湊のあった辺りにも一度行ってみたいと思った。
しかし、そんなふうに興味をもって読めるのも、津軽平野の狗塚家が物語の中心となっている中盤くらいまでで、後半、郡山の冠木家に中心が移ってからは、文体に飽きてきたというのもあるし、史実部分もあまり面白みなく、飛ばし読みしたくなってしまった。

しかし、作家の熱心なファンや、作家と同じく東北出身者なら、感慨深い本なのかな。なんとなく現代になっても、東北は西日本に比べると、北海道と比べても、影が薄いイメージが、東北外出身の私にはあって、「俺たちは最初から、鬼門をあてがわれ、この地に生まれた。この列島に。この世にだ。莫迦にした話だろ? まるで俺たちみたいだろ?」という狗塚家の長男の言葉が、読んでいる間ずっと頭の中で響いていました。

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