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2008年11月10日 (月)

寵児3人の共通点は?

文庫化を待っていたダイヤモンド警視シリーズ。

『漂う殺人鬼』ピーター・ラヴゼイ著/山本やよい訳
(ハヤカワ文庫 2005年邦訳)

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海水浴客でにぎわう浜辺で、休暇を楽しんでいた女性が絞殺される。証拠は波に洗われ目撃情報も一向に集まらず…。しかしやがて被害者はバース在住の精神分析医であることが判明。ボグナー・リージス署との合同捜査に加わったダイヤモンド警視は、被害者が公安からある殺人事件のプロファイリングを依頼されていたことを突き止める。その事件とは著名人ばかりを狙う連続殺人で、公にはまだ知らされていない事件だった…。


これは傑作!! 面白かったー!! P・D・ジェイムズの後に読んだせいか、ピーター・ラヴゼイのすっとぼけたユーモアや下ネタ系ジョークがいつもよりもいっそう冴えわたっていたように感じた(笑)。シリーズ中はもちろん、いままで読んだラヴゼイ作品の中でも、個人的にいちばん好きかもしれない。凶悪な事件と、登場人物たちが醸す軽妙さとのバランスが絶妙といいますか…。
原題は「The House Sitter」で、やはりユーモアのあるしゃれたタイトルなのに、この邦題は違和感あるかな。文庫表紙のイラストもあまり雰囲気を伝えていない気がする。連続殺人犯が現場に残していったコールリッジの詩「古老の船乗り」か、凶器のクロスボウをイメージに使うほうがしっくりきそうだけど。

仕事もできるが性にも奔放な美人犯罪心理捜査官の殺人事件と、映画監督を手始めに元アイドル歌手と天才若手プロゴルファーの命を狙う連続殺人の捜査が並行して行われる中で、バース署のダイヤモンド警視、ボグナー・リージス署の主任警部ヘンリエッタ・マリン、サセックス署の若手刑事ジミー・バーネストンという3人の指揮官が登場。ダイヤモンド警視は、いつもよりアクが控えめだが、他の2人のキャラクターがそれを補っている。
特にマリン主任警部は、これまで読んだミステリにはいなかったタイプだ。女性ながら葉巻を愛飲し、食事は肉と炭水化物をがっつり取る主義。といって男っぽく振る舞うわけでなく、あくまで自然体で冷静な判断ができ、部下からも慕われているらしいという。同性から見て実に魅力的でした。本作だけとはいわず、また登場してほしいです。


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初めて読んだカズオ・イシグロ。

『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ著/土屋政雄訳
(ハヤカワepi文庫 2006年邦訳)

ある施設で育った子供たちの物語。これ以上はあらすじもネタバレになりそうで書きにくい。読み始めてすぐに、この施設はなんのためのものかは想像がつくようになっているのだけども…。

ジャンルとしてはやはりSFだろうか。施設で育った女性キャシーの回想によって綴られる、キャシーとルース、トミーの親友3人の関係は、It's the same old storyといってよく、誰もが若い頃にある程度は似たような体験をしていそう。だからこそ、この小説の背景の特殊さが際立つとともに、より身近な恐怖ややるせなさを想像できるようになっていると思う。知らされて育つことと、知らないで巻き込まれる子供たちが現実にいること、どちらがむごいんだろうかと考えると、頭の中がこんがらがる…。
読んでいて、調査捕鯨にも断固反対しながら、家畜は平然と食べる人々の理屈を思い浮かべた。この小説の世界から遠いようで遠くない気がするが。

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