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2008年10月 6日 (月)

信頼している者こそ疑え。

ネット上で評判が良いのもあって読みました。著者デビュー作にして、CWAスティール・ダガー賞(最優秀スパイ・冒険・スリラー作品賞)受賞作。

『チャイルド44』トム・ロブ・スミス著/田口俊樹訳
(新潮文庫 2008年邦訳)


44

スターリン体制下のソ連。国家保安省のエリート捜査官レオ・デミドフが、狡猾な副官ワシーリーの計略にはまって失墜。国家反逆者として妻ともども命を狙われるまでに追い詰められながらも、各地で発生している少年少女惨殺事件の謎を追う...。


これは評判になるのも素直にうなずけるよ。題材が斬新だし、面白かったー。本編の1953年をさかのぼること20年前の、飢餓に苦しむ寒村での出来事を描いたプロローグから一気に引き込まれた。文章がうまいし、人物描写も巧みです。
スターリン政権下のモスクワ。誰もが疑われた時点で罪が確定したのも同じという粛正の恐怖が支配する社会、それを取り仕切る国家保安省内では一部腐敗も進んでいる。ハラハラ、ムカムカしどおしで息苦しくなりながらも、罠にはめられたレオの行く末が気になって、読み続けないではいられません。

巻末に著者が参考にした文献を挙げており、スターリン時代のロシアについてある程度の真実をもとに書かれていることがうかがえます。そして、この小説、各国で翻訳出版が進んでいるが、現時点でロシアでは発禁になっているのだそう(著者はイギリス人)。グルジア紛争をきっかけに、冷戦時代に逆戻りしつつあるなんて言われているけれど、小説のどの部分が問題になったのか、気になるところです。まさか卑劣な副官の名前が、スターリンの息子と同名なのが問題ということはないと思いますけど。かなり社会派。でも、文学の堅苦しさはない。これはやっぱり娯楽作品。後半になるとさすがに現実離れな展開が目立ってくるけど、そこが今風の小説たらしめている気がします。

あとがきによると、リドリー・スコットとメル・ギブソンが映画化に名乗りを挙げ、結果、スコットが競り落としたそう。わかりやすー(笑)。いかにもこの2人が好きそうな世界観。個人的にはスコットで良かったし、映像だけでもかなり楽しみ。主人公レオは有名な俳優になると思うけど、この前「イースタン・プロミス」を見た流れで、私が思いつくのはヴィゴ・モーテンセン(少々体格が良すぎかな)。妻もナオミ・ワッツでいいよ。


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『チャイナタウン』S・J・ローザン著/直良和美訳
(創元推理文庫 1997年)

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ニューヨークのチャイナタウンを舞台に、中国系の女性探偵リディアと、パートタイムの相棒である白人男性の探偵ビルが活躍するシリーズもの第1巻。
美術館から盗まれた貴重な中国磁器をめぐる話で、中国マフィアも登場。チャイナタウンに暮らす人々の横のつながりとか、受け継がれる風習とか、食べ物のことなど細部は面白かったけど、続けて読むかどうか微妙。リディアがスーパーウーマンじゃなく描かれているところはいいかもしれないけれど、普通の女の子以上に女の子の性格だし、探偵にしては素直だし上品だし、結局、男たちに助けられてるんだよね...。うん、単に好みの問題です。

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