« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年10月

2008年10月20日 (月)

VHS映画へのノスタルジー

ミシェル・ゴンドリー監督作。ただでさえ鬱陶しいジャック・ブラックが、神経を逆なでする鬱陶しい役で登場(笑)。

「僕らのミライへ逆回転」(2008年 米)
★★★★

Photo_10

今どきビデオしか置いていない小さく古びたレンタル店。市から再開発のために立ち退くか、建物を改修するかを迫られ、店主のフレッチャー(ダニー・グローヴァー)を慕う店員のマイク(モス・デフ)もひそかに心を痛める。しかし、フレッチャーが数日留守をしている間に、マイクの幼なじみのジェリー(ジャック・ブラック)のせいで店のビデオの映像がすべて消えてしまう事件が起き、2人は急場しのぎで「ゴーストバスター」や「ラッシュアワー2」をリメイク。これがなぜか大受けし...。という話。


リメイクした映画というのが、高校生が文化祭用に作るパロディ映画のテイストによく似ているのです。面白いアイデアはいっぱいだが、完全に身内受け。でも、同じ映画をビデオで何回も借りて観ているような、時代がどうあれ我が道を行くふうな町の住民たちには受けてしまうんだ。

そして、この映画の内容も、特にラストなどはすごく安っぽい感じがするのに、感動して涙だーだー流して泣きました。映画の最初のほうでビデオ店のレジの後ろに、私の好きな映画「タイムトラベラー/きのうから来た恋人」のポスターが貼ってあった時点で、この映画に好感をもってしまったんだと思います。

そして、ダニー・グローヴァーの温かみのある持ち味、モス・デフの素直でやさしいキャラクター、お客のミア・ファロー、クリーニング店の女の子が良かった。ライバルのDVDレンタル店の店長がキッド・クレオールだったとはねえ…。これは後で知った。
ファッツ・ウォーラーにまつわる話と、いつも通りのジャック・ブラックの演技には、いまいち乗り切れなかったんだけど、楽しい映画でした。映画の内容と直接関係ないけど、今ならブルーレイとかハイビジョンとか地デジ移行に困惑し、理不尽さを感じている人にもおすすめ???

2008年10月19日 (日)

缶詰というものを見直した。

そんな感想かい!
ピューリッツァー賞フィクション部門受賞作ですが、私を含め、映画「ノーカントリー」原作者の最新作ということで興味をもって読む人が多そうです。

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー著/黒原敏行訳
(早川書房 2008年邦訳)

Photo_11

数年前に起きた何かの大惨事によって、ほとんどの生き物...草木すらも死滅した世界。生き残った男とその幼い息子。空は晴れることなく、大地は灰におおわれ、町は焼けただれている。厳しさを増す冬の寒さから逃れるために、2人は南へ向かって旅を続ける...。


ほとんどが静寂。しかしたまに、生き残った人々が共食いしているところにも出くわす恐ろしい世界です。父と子は彼らの目を逃れながら、ときに火もたかずにふるえて眠り、孤立した民家などに略奪されずに残った缶詰などを見つけて命をつないでいきます。父親にとって息子は生きる理由のすべてだが、息子を愛するほど苦しみも大きい。大惨事後の世界しか知らない息子に、精いっぱいの生を享受させてやりながら、一方でいざとなったら銃で自殺する方法を教えたりしています。シンプルな構成で、驚くような展開もない。しかし、淡々とした文章に引き込まれます。

わずかな光も見いだせない世界の描写が続くなかで、父と子の会話が少しずつ変化していくところが面白いです。他人を信用するな、近寄るなと教える父に対して、困っている人は見過ごせないと次第に抵抗を示し始める息子。言葉では対立しているようでも、父親はそんな息子のなかに「火を運ぶ人」を見いだしています。火は希望です。
小説の中の出来事はほんの数十日間のことだと思いますが、その間に息子はみるみる成長し、最後には父親と立場が入れ替わったように思える瞬間がありました。父親が息子に託したかったものはしっかり受け継がれたと感じたので、ラストの一文は美しいけれど唐突でした。なくてもいい。いややっぱりあったほうがいい?


**********************************

最近また、何年かぶりに、毎日お弁当を作るようになりました。ひとり暮らしなので残ってしまう食材を、冷蔵庫の中で腐らせてしまうことがなくなり、食費が抑えられる。作ったおかずを晩と昼に分けて食べることでダイエットにもなる。安い弁当に使われている材料に神経質になる必要もない。いいことづくめだ...。 何より堅実な生活を送っているという満足度が高い。残業さえ増えなければ続けたいです。しかし、残業がないと会社がやばい気もするし、不安はくすぶっている...。

2008年10月14日 (火)

9月に借りたDVD

少し時間がたってしまい、記憶がおぼつきませんが。

Photo_12

「サン・ジャックへの道」(2005年 フランス)
★★★★★
心洗われるような自然の風景、笑わせて最後にちょっと泣かせるロードムービー。こういう映画がもっと観たい!
フランス国内からスペインを横断し、カトリックの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500キロに及ぶ巡礼ツアーの御一行様は、母の遺産を相続するために渋々参加した仲の悪い3兄妹弟や、好きな女の子に近づくために参加したアラブ系移民の少年とその従兄弟、夫と別れガンが治癒したばかりの女性など、動機がばらばらなのが面白い。物質に囲まれた日常の便利さから離れて、身一つで(携帯電話はあるけど)毎日ひたすら歩く旅の面白さも十分に堪能しました。コリーヌ・セロー監督作品。
右の写真は好きな場面の一つ。前日、どこの宿泊施設も満室だったため学校の教室で寝ることになった一行が、この日はなんとかまともな夕食と宿泊所にありつけた、その交渉場面。宿泊予約ができないというのは、歩いての旅だからなのだろうけど、こういう自由さも旅の醍醐味の一つですね。自分にはできない体験なのだけれど...。

「その名にちなんで」(2006年 アメリカ/インド)
★★★★
インド系作家ジュンパ・ラヒリのベストセラー小説を映画化。1970年代、インドからアメリカに渡った若い夫婦。やがて子供たちが生まれ成長していく中で、ベンガル人としてのアイデンティティにこだわる両親とアメリカ育ちの子供たちの間で溝が生じる...。
登場するベンガル人が裕福でインテリ。職を求めて移住する貧しい人たちではないので、移住先でも暮らしは安定しており、何か特別な展開があるわけでもないのだ。割と普遍的な親子関係の話になっていて共感しやすかったです。インドとアメリカを行き来する映像が美しい。私はてっきり父親が、冒頭のインドでの列車事故で前妻と娘を亡くしたと勘違いして見ていたので、息子にゴーゴリという名前をつけた理由も勘違いしていた。「ゴーゴリの外套から生まれた」という台詞は父親の言葉だと思ったら、ドフトエフスキーだったんですね...。
DVDにはどこかの大学で行われたこの映画製作についてのシンポジウムの様子が入っているのだけれど、ミーラー・ナーイル監督はじめ、製作、脚本、美術、衣装、編集も女性だったのが印象的だった。

「黒猫・白猫」(1998年 フランス/ドイツ/ユーゴスラビア)
★★★★
サラエヴォ出身のエミール・クストリッツァ監督作品。ベオグラードはドナウ川のほとりの貧しいロマ集落の日常を描いたドタバタコメディなんだけど、マフィアのゴッドファーザー(最強キャラ)の存在によってなんとか秩序が保たれているものの、そのあまりにはちゃめちゃな生活ぶりに最初は戸惑った。出演者の多くが素人で、その素人のロマたちの風貌にも戸惑ったと、正直に書いておこう。
親のギャンブルのかたとして好きでもない娘と結婚させられそうになる若者が、なんとか寸前で逃れ、本当に好きな娘とともにロマ集落を出て行こうとするとき、「行きなさい。ここには太陽はない」と言ってこっそり蓄えていたお金を渡す祖父...。バカ騒ぎ映画が一瞬にして締まった気がした。

「オリバー・ツイスト」(2006年 イギリス/チェコ/フランス/イタリア)
★★★☆
チャールズ・ディケンズの名作をロマン・ポランスキー監督が映画化。プラハの撮影所に再現された19世紀ロンドンの街並みが見事です。お金かかってます。
もちろん原作はフィクションと承知で・・・日本では江戸時代かそれ以前から子供をみんなで可愛がって育てる風習があったけれど、以前のヨーロッパはそうではなかったみたいだから、オリバーをはじめとする幼い孤児たちが救貧院で労働力として酷使されたり、5ポンドで身売りされるのもまんざらありえない話でもなさそう。その流れで、子供も一人前の個人として扱われるところもあるのだろう。
オリバーくんと少年スリ団のリーダーの子役が可愛かった。そのスリ団を束ねるフェイギン役にベン・キングズレー。すごい変装ぶりと演技で、出演を知らないで見ていたらキングズレーと気づくまでしばらくかかっただろう。

「天然コケッコー」(2007年 日本)
★★★☆
くらもちふさこの漫画を映画化した青春もの。山下敦弘監督。映画館で予告を見たときから見たかった。少女漫画が原作とは知らず、もっとファンタジー色の強い作品と勝手に想像していたら、のどかな田舎での中学生の少女と転校生の少年の淡い恋をストレートに描いた映画だった。なんとなくアッバス・キアロスタミ監督作品を思い出した。特に最後のほうで、誰もいない教室をカメラがゆっくり回って映し出し、風にそよぐカーテンをとらえるところとか。
子供たちが一緒に海に行く場面も良かった。同じド田舎育ちなら、ああいうきれいな海のあるところで育ちたかったなあ。ロケ地の島根県浜田市にとっては、いい記録映像になったでしょうね。時間を経てからのほうが価値が出そうな映画。

「プラネット・テラー in グラインドハウス」(2007年 アメリカ)
★★★
ロバート・ロドリゲス監督のゾンビ映画。本来はタランティーノの「デス・プルーフ」と2本立てで公開されるはずだった作品を再編集。昔のB級映画らしくしようとして、だけど、いくらなんでも自由奔放すぎるだろうと思いました。しかし、それがこの映画の本当のテーマか?
ローズ・マッゴーワンとマーリー・シェルトンという女優2人の人選が良かった。さらに、ジョシュ・ブローリンが出ていたのが儲けものだった。でも、実はいちばん楽しかったのは、本編前に入っているダニー・トレホ主演の架空のアクション映画の予告だったりする。トレホ好き。

「幸せのレシピ」(2007年 アメリカ)
★★☆
ドイツ映画のリメイク。キャサリン・ジョーンズが美しい。最初のほうでエプロンを着け、腰辺りのシワをさっと手で伸ばすときの姿勢の良さや優雅な動きにはうっとり。しかし、それ以外がどうだったかよく覚えていない...。アーロン・エッカートはけっこう好きなのに、この映画の役はつまらないなあ。

「魍魎の匣」(2007年 日本)
★★
京極夏彦原作“京極堂シリーズ”の映画化第2弾(1弾と間違えて借りた)。原田眞人監督。原作は知らないけれど、舞台は1952年の東京なのに映っているのはすべてが大陸サイズ。中国の撮影所ということが丸わかりで、これがかなり致命的だった。山の上の研究所の建物内部も、さっぱり分からない構造。キャストは豪華な感じで、ユーモアのある会話の雰囲気も伝わるけど、それ以外に好きなところはなかったです。

2008年10月13日 (月)

中年仕様のアメコミヒーロー映画

あのロバート・ダウニー・Jrがアメコミ・ヒーローを演じるというだけで、観る気まんまんだった映画。予想していた以上に楽しかった!

「アイアンマン」(2008年 アメリカ)
★★★★★

Photo_13

天才発明家であるとともに、親の跡を継いで米国一の軍需企業トップの座にも納まっているトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)。彼が開発した最新兵器というのが、悪名高きクラスター爆弾の破壊力をもっと高めたようなしろもので、そのデモ実験のために赴いたアフガニスタンで、米軍一行は武装グループに襲撃され、トニーは重傷を負ったまま捕らわれてしまう...。
(以下、大いにネタばれしてます。)


この時点までのトニーは、発明することと、大金持ちの立場を利用して美人と片っ端から寝ることにしか興味のない人間。しかし、武装集団に兵器開発を強要されながら、自社の名前入りの兵器が彼らのアジトにすでに山積みになっていることを目の当たりにしたトニーの中で大きな変化が起こる。彼ほどの頭のいい人物がそんな可能性にいままで思い至らなかったのが不思議でもあるのだが、一緒に拘束の身となっていたアフガニスタンのドクター(ショーン・トーブ)が、彼の命を人工心臓で救うとともに、2人の間に芽ばえた友情によってトニーのハートも再生したということなのでしょう。

武装集団の目を盗んで開発したパワードスーツで脱出し、生還してからの記者会見で、もう武器製造はやめると発言。共同経営者のステイン(ジェフ・ブリッジス)が猛反発し、マスコミが大騒ぎをする中でトニーが発した「これで君たちもしばらくネタに困らないだろう」には笑ったよ。クールだ!

このように、皮肉やユーモアをきかせた小気味よい会話が随所に出てくるでの、ストーリー自体は単純でも、大人が観て楽しめる映画になっていると思います。映画ラストでの、同じく記者会見での一言も痛快でした。多くの人がスーパーヒーローになってやってみたいと想像することを全部見せてしまったような映画。こんなオチが滑らずにすんでいるのは、ロバート・ダウニー・Jr自身の個性によるところが大きい。ちょっといかれた役というのがすごく自然。

自分が作った兵器を自分で破壊するためにアイアンマンになるという発想が、なんといっても面白いです。自らやったことの後始末は自分でするという、限られた範囲での正義というのが好きだわ。続編が作られるらしいが、そうなるとこの面白さが薄れてしまうのではないかと思う。なので、正直、それほど続編には期待していないのだ。

映画の中盤はパワードスーツの改良の様子に費やされるが、空中を飛ぶのに足の裏からの噴射だけでは身体のバランスがとれず、掌にも噴射機能をつけて制御する方法を考案するところなんかが面白かった。そして、失敗を繰り返し傷だらけになって開発に没頭する役を中年ダウニー・Jrが演じているから、私なんかにとってみれば共感度大。いままで見てきた実写のアメコミ・ヒーローの中では、間違いなくセクシー度ナンバーワンです。

グウィネス・パルトロー演じる秘書ペッパー・ポッツ(面白い名前だ)もまた、とてもいいキャラクターでした。バッドマン・シリーズでの執事アルフレッドとよく似た役割。トニーと一夜をともにした記者の女性が、翌朝、シャツ1枚の姿でトニーの屋敷内でくつろいでいるところに突然現れるペッパーの沈着冷静ぶりが可笑しい。心を入れ替えた後のトニーとは、異性としても引かれ合う関係になりながら、最後までいままでと同様の関係を維持し貫くのがむしろエロい。スキンヘッドでイメージを一新して登場したジェフ・ブリッジスには驚いた。悪役がすごく似合っている。空軍中佐でトニーの友人役のテレンス・ハワードも好きな俳優だが、彼とのエピソードは今のところは少し印象が弱い。

監督のジョン・ファヴローは、俳優としても有名というので画像を確認。ああ、この人か!と思った。見た目で才能は分からないものです。監督というイメージじゃないもん。

コールドケースを追う

読み続けてきたハリー・ボッシュ・シリーズ。ようやく最新刊にたどりつく。

『終決者たち』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(講談社文庫 2007年邦訳)

Photo_14

元相棒キズミン・ライダーの誘いで、3年ぶりにロス市警に復職となったボッシュ。配属されたのは優秀な刑事が集う未解決事件班で、DNA分析によって新たな手がかりを得られた17年前の少女殺人事件が、さっそく2人に割り当てられる...。


日本には時効が存在し、時効になった事件を窓際部署の警官がひまつぶしに捜査するというドラマがあったが、時効のないアメリカの、ロサンゼルスには迷宮入りの凶悪事件を専門とする部署があり、「終決者(クローザー)」を自任する選り抜きの刑事たちが捜査に当たっているということらしい。 該当案件は8000件(本書より)もあり、再捜査の対象に選ばれるのはかなり低い確率。しかし、そのかなり低い確率に当たってしまったのが例のロス銃撃事件ってことになるのかなと、ちらっと思い浮かべながら読んだ。

本の扉にある「深淵を覗きこまなければならない刑事たちに捧ぐ」という言葉が、読み終わってずしりと響く。深淵とは、未解決事件の関係者の心の中に巣くい、深く根を下ろしてしまったもの。

相変わらず面白かったけど、本作はいままでのシリーズとは雰囲気が少し異なる。初心に戻ったというか…。はみ出し者だったボッシュが、市警本部長じきじき励ましを受けたり、パートナーを常に気遣ったり。本流の刑事として組織のルールを守って活躍するところが違う。そして、前作の感想で「かかわった女とすぐに関係をもつ」とケチをつけたのが聞き入れられたのか笑、本作にはそのような場面がないのが画期的じゃん。元妻のエレノアすら登場しないのが良かった。私はあまり好きじゃないんだエレノア。それでもボッシュが動くと新たな不幸が生まれるさだめなのは変わりなく、ボッシュ・シリーズの個性は失われていない。

しかし、新しい本部長もかなりの策士だわ。どうやらボッシュが1週間で事件を解決できると見越してもいたようで。今は良い関係でいるが、敵に回したらそうとうに手強そうです。

2008年10月 6日 (月)

信頼している者こそ疑え。

ネット上で評判が良いのもあって読みました。著者デビュー作にして、CWAスティール・ダガー賞(最優秀スパイ・冒険・スリラー作品賞)受賞作。

『チャイルド44』トム・ロブ・スミス著/田口俊樹訳
(新潮文庫 2008年邦訳)


44

スターリン体制下のソ連。国家保安省のエリート捜査官レオ・デミドフが、狡猾な副官ワシーリーの計略にはまって失墜。国家反逆者として妻ともども命を狙われるまでに追い詰められながらも、各地で発生している少年少女惨殺事件の謎を追う...。


これは評判になるのも素直にうなずけるよ。題材が斬新だし、面白かったー。本編の1953年をさかのぼること20年前の、飢餓に苦しむ寒村での出来事を描いたプロローグから一気に引き込まれた。文章がうまいし、人物描写も巧みです。
スターリン政権下のモスクワ。誰もが疑われた時点で罪が確定したのも同じという粛正の恐怖が支配する社会、それを取り仕切る国家保安省内では一部腐敗も進んでいる。ハラハラ、ムカムカしどおしで息苦しくなりながらも、罠にはめられたレオの行く末が気になって、読み続けないではいられません。

巻末に著者が参考にした文献を挙げており、スターリン時代のロシアについてある程度の真実をもとに書かれていることがうかがえます。そして、この小説、各国で翻訳出版が進んでいるが、現時点でロシアでは発禁になっているのだそう(著者はイギリス人)。グルジア紛争をきっかけに、冷戦時代に逆戻りしつつあるなんて言われているけれど、小説のどの部分が問題になったのか、気になるところです。まさか卑劣な副官の名前が、スターリンの息子と同名なのが問題ということはないと思いますけど。かなり社会派。でも、文学の堅苦しさはない。これはやっぱり娯楽作品。後半になるとさすがに現実離れな展開が目立ってくるけど、そこが今風の小説たらしめている気がします。

あとがきによると、リドリー・スコットとメル・ギブソンが映画化に名乗りを挙げ、結果、スコットが競り落としたそう。わかりやすー(笑)。いかにもこの2人が好きそうな世界観。個人的にはスコットで良かったし、映像だけでもかなり楽しみ。主人公レオは有名な俳優になると思うけど、この前「イースタン・プロミス」を見た流れで、私が思いつくのはヴィゴ・モーテンセン(少々体格が良すぎかな)。妻もナオミ・ワッツでいいよ。


********************************************

『チャイナタウン』S・J・ローザン著/直良和美訳
(創元推理文庫 1997年)

_

ニューヨークのチャイナタウンを舞台に、中国系の女性探偵リディアと、パートタイムの相棒である白人男性の探偵ビルが活躍するシリーズもの第1巻。
美術館から盗まれた貴重な中国磁器をめぐる話で、中国マフィアも登場。チャイナタウンに暮らす人々の横のつながりとか、受け継がれる風習とか、食べ物のことなど細部は面白かったけど、続けて読むかどうか微妙。リディアがスーパーウーマンじゃなく描かれているところはいいかもしれないけれど、普通の女の子以上に女の子の性格だし、探偵にしては素直だし上品だし、結局、男たちに助けられてるんだよね...。うん、単に好みの問題です。

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

インデックス

無料ブログはココログ