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2008年9月

2008年9月29日 (月)

象が泳ぐんだよ、珊瑚の海で。

宣伝チラシのスーフィーダンスの写真が気になり、観にいきました。

「落下の王国」(2006年 インド/イギリス/アメリカ)
★★★★

1915年、ハリウッド。撮影中の事故で重傷を負い病院のベッドに横たわるスタントマン、ロイ。身体が動かず自暴自棄となり、自殺願望にとらわれていた。同じ病院に入院中のアレクサンドリアは、家族を手伝ってオレンジを収穫中に樹から落下して腕を骨折した5歳の少女。じっとしていられず敷地内を歩き回っていて、ロイの病室へと辿り着く。ロイはアレクサンドリアを呼び寄せると思いつきの冒険譚を語って聞かせる。ロイの語るめくるめく物語にすっかり引き込まれていくアレクサンドリアだったが...。 (allcinemaより)

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スペイン総督によって孤島に囚われた5人の男と木の精霊が復讐のための旅に出る、というのがロイの創作した「お話」。少女にせがまれて毎日少しずつ語られるその「お話」自体は、(ロイは自分のことで頭がいっぱいなので)成り行き任せもいいところなのだが、少女が思い描くビジュアルがすごい。世界24カ国以上でロケした風景と、いかめしいデザインの石岡瑛子の衣装のコラボによる映像美が圧巻!

でも、たくさんの世界遺産も舞台にした映像は、その場所を知らない人間には新鮮だが、よく知っている人にとってはどうなんだろうか。映像が地理的つながりを無視してあちこち飛び回るので、少女と一緒に「お話」の世界にひたる以前に、現実に引き戻されてしまいそうではありますが。地方を舞台にした2時間ドラマなどで、その土地の名所ばかりが脈絡なく登場するときの違和感に近いかも? しかし、世界をひとまたぎなスケールで、CGを使わず、時間をかけて最高のタイミングで撮影された映像をスクリーンで眺めるというのはかなり贅沢な気分です。

一方、青年ロイと少女アレクサンドリアの物語の部分では、アレクサンドリアを演じたインド系(訂正...ルーマニア人でした)の女の子があまりに自然にふるまい、可愛らしいので、ロイの役の人が食われてしまい、ロイの悲劇の印象があまり残っていません。しかし、どんな名優も子役にはかなわないといいますからね...。あの女の子のまん丸顔と、演技しているのか素なのか判然としない仕草は、個人的にはビューティフルワールドな映像以上に気になった。

ロイの「お話」は後半、予想に反する方向に進んでいく。子供のための「お話」にハッピーエンドを求める大人は多いが、子供のほうは、お話を聞きながら想像をふくらませたことを何より楽しんでいるのではないかと、最後に少女が蝶を見つける場面で思いました。あのラストがとても良かったです。

2008年9月22日 (月)

悪夢はつづく

2004年のCWAシルバー・ダガー賞受賞作。

『血と肉を分けた者』ジョン・ハーヴェイ著/日暮雅通訳
(講談社文庫 2006年邦訳)

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抑圧された生活の果てに16歳の少女を殺した少年が、13年ぶりに仮釈放された。彼を逮捕した元警部のエルダーは、事件当時に失踪して今も見つかっていない少女の捜査を再開。そんな最中、新たに過去の事件とよく似た状況での少女失踪事件が起きて...。


普段、いかに自分が巻頭にある「主な登場人物一覧」を頼りにミステリを読んでいるかに気付かされた。この小説はたくさんの人物が登場する割には、たった8人しか載っていないんだもの。読み終わったら、さしたる影響はなかったようなんで、どうでもいいことだけれど。

血と肉を分けた者(原題はFlesh and Blood)とは、主人公のエルダーと娘のキャサリンのことでもあるし、13年前に失踪した少女とその両親のことでもあるのだな、ふむふむ。目新しさはあまり感じない作品だったけれど、これほどショッキングな少女暴行犯ものはそうはないかもしれない。敬遠したいタイプのミステリなのに、CWA受賞作ということで手に取ってしまった。

ネタバレになるが、犯人の死を結末に持ってこないのは、イギリス人作家らしいと思った。アメリカの小説だったらまずは100%、正当防衛による射殺で終えそう。意外な真相も交え、最悪の結末にならなかったのが救い。仮釈放された男を、その素性を知りながらも匿おうとする、孤児の少女エンジェルちゃんにはホロリとさせられたよ。

2008年9月21日 (日)

股旅ヒーローの復活だそうです。

清水次郎長や国定忠治などの名前をあまり聞かなくなったのは、浪曲や講談の衰退に加え、ヤクザを美化しているとの批判を見越してテレビ局が自主規制しているせいもあるのでしょうか。でも、娯楽作品の題材としては普遍的。

「次郎長三国志」(2008年 日本)
★★★☆

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初日の舞台挨拶付きで鑑賞しました。監督のマキノ雅彦(津川雅彦)、中井貴一、鈴木京香、北村一輝、温水洋一、近藤芳正、山中聡が壇上に。いつもどおり北村一輝が目当てですが、着物姿の鈴木京香が美しかったあ...。映像より実物のほうがぜんぜん綺麗と思いました。

マキノ雅弘作品のリメイクという色合いが濃く、私はオリジナルを見た記憶がないのだけど、再現しようとしている世界は見えた気がする。思っていたより面白かった。なんといっても北村一輝が光っていました! これはうれしかった。贔屓目でもなんでも、北村がいちばん良かったと言い切るよ!
女優陣では、高岡早紀が印象に残りました。元力士の親分を演じた蛭子能収は、演技は下手だけど、あの人相をあの役に当てはめたのはナイス笑 不満だったのは音楽、古いんだか現代風だかはっきりしないチープなBGM、テーマ曲のロックアレンジもあまり好きではなかったです。

2008年9月20日 (土)

思い出映画館といえばここか三鷹オスカー

学生時代にはよく行っていたギンレイホール。休日とあって朝一から入館待ちの人たちが長い列を作っていて、噂通りの盛況ぶり。ガラガラの館内で脇目に痴漢を警戒していた頃の雰囲気とはまったく違っていましたが、地下のトイレは昔のままで懐かしい。

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「悲しみが乾くまで」(2008年 アメリカ/イギリス)
★★★☆
デンマークのスサンネ・ビア監督作品。突然の悲劇から夫を失った女性(ハル・ベリー)とその子供たちが、亡き夫の代わりに夫の親友であったヘロイン中毒の男(ベニチオ・デル・トロ)の面倒をみるなかで、喪失感から立ち直っていくという物語。
監督が女性だからでしょうか、デルトロの演じた役は、ある種の、女性が理想とする男性そのものという感じがしました。デルトロ・ファンの友人はかなり満足していました。確かに魅力的でした。 一方で、ハル・ベリーの魅力というのが相変わらず分からない。綺麗すぎるからか。日本だと黒木瞳などのイメージと重なる。演技の評価は低くないようですけど...。ジョン・キャロル・リンチは役幅の広い味のある脇役ですね。


「美しすぎる母」(2007年 スペイン/フランス/アメリカ)
★★☆
大富豪の息子が母親を殺害し、その後に刑務所の中で自殺を図るという、実際にあったスキャンダラスな事件を題材にした映画。貧しい母子家庭に育ち、美貌を武器に大富豪ベークランド(ベークライトを発明して財をなした人物の孫)の妻の座を射止めた女性をジュリアン・ムーアが演じているけれど、そういう野心に満ちた女性の役がムーアにはあまり似つかわしくなく、今こういう話を映画化しようと考えた動機もよく分からずに戸惑います。息子役の“そばかす”エディ・レッドメインがもろそうな雰囲気をたたえていて、ちょっと良かったです。

2008年9月19日 (金)

70年代の音を作った人がまた一人

Normanwhitfield

今月16日、音楽プロデューサー/コンポーザーのノーマン・ホイットフィールドが死去。
テンプテーションズのプロデュースで頭角を現した人ですけど、個人的には映画音楽としても大ヒットしたローズ・ロイスの「カーウォッシュ」が思い出深い。ファンクを、当時子供だった私にもそのかっこよさ、楽しさが分かるポップチューンに仕上げ、親しむきっかけを作ってくれた一人です。

前日にはピンク・フロイドのキーボード、リチャード・ライトの訃報もありました。日曜日は昼間から雨戸を閉め、部屋を真っ暗にして、飽くことなくステレオにかじりついていました。若い頃にお世話になった方々が亡くなると、何かひとこと書かずにはいられません。

2008年9月15日 (月)

アメリカからやってきた超ファミリー

映画脚本家としても知られるフランス人作家の、一般的にはミステリに分類されるんだろうけど、映画で使われるクライムコメディのジャンル名がしっくりくる小説。

『隣りのマフィア』トニーノ・ブナキスタ著/松永りえ訳
(文春文庫 2006年邦訳)

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フランスの田舎町に、闇夜に紛れて引っ越してきたアメリカ人4人と犬1匹。彼らはFBIの証人プログラムによって保護されたマフィアの大物一家だった...。


実は一家のフランス国内での引っ越しは3度目。過去に2度、身元がばれそうになる失敗をやらかしているわけで、まーそれも納得。小さな田舎町で、アメリカ人というだけで興味を持たれているのに、この一家はそれぞれが我が道を行き、ほどほどにやりすごすということを知らない。FBIの監視をよそに、元コーザ・ノストラの父親は作家と偽り、生意気な配管工の腕をへし折る。母親はボランティアにいそしみながらも、客あしらいの悪いスーパーに放火。娘と息子も、この親にしてこの子あり。ある種の才能で学校で一目置かれる。そして、気付けば一家揃って、町の人気者になってしまっていたのだ!

一家の居場所がニューヨーク・マフィアの大ボスに感づかれてしまう経緯が面白い。「グッドフェローズ」などの映画ネタが盛り込まれていて楽しい。でも、この小説で輝いているのは、本筋とは関係なく挿入される、たくさんの登場人物たちのウイットに富んだエピソード。原題は「Malavita」なので、邦題は映画「隣のヒットマン」を意識してますよね。


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『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』ギルバート・アデア著/松本依子訳
(ハヤカワミステリ 2008年邦訳)

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ロジャー・フォルクス大佐の邸でのクリスマスの集いに参加したのは、大佐とその妻と娘、娘のボーイフレンド、牧師夫妻、医師夫妻、女優、女流作家。そしてもう一人、半ば強引に押しかけてきたゴシップ記者が、翌日射殺死体となって見つかる。折からの猛吹雪で警察にも連絡が取れず、人々は近隣に住む元警部に助けを求める...。


内容も本のタイトルも、アガサ・クリスティー作品のオマージュであり、パロディだそう。そしたら、少し前に読んだ『切り裂かれたミンクコート事件』もオマージュなのかな。密室ものなどの本格ミステリーの古典が大好きな人なら、きっと大いに面白がって読めるのでしょう。私にも本格ミステリーのパロディと分かるのは、本の扉にあるフォークス邸の見取り図くらいだろうか。読み終わって、何の意味もなかったことに気づいた(笑)。


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新書で上杉隆著『ジャーナリズム崩壊』も読みました。

著者の経験をもとに、特に記者クラブについて批判した内容。担当した政治家が出世すれば自分も出世する仕組みになっている新聞の政治記者に、政治批判は期待できず、そのためスクープ報道をものにするのは週刊誌の記者。また、そのスクープを新聞が後追いする場合には「一部週刊誌が」とか「・・・とわかった」という表現で、情報源をはっきりさせないのは、盗作行為ではないかと言っているところがいちばん頷けた。新聞の驕りですね。「・・・とわかった」とある記事については、どこかから送られてきたニュースリリースをそのまま載せているだけのことが多く、以前から胡散臭く思っていた。宣伝広告と変わらない記事が、新聞には多いよね。

2008年9月11日 (木)

ゆるキャラなんか興味なかったのに

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家に帰ってきてテレビをつけたら、「ゆるキャラ王選手権」というのをやっていた。ふだんバラエティ番組はあまり見ないんだけど、これはもう、なんというか、映像があまりにシュールで、さんざん笑い転げた。

なかでも笑撃的だったのが、かけっこ競技でのコシロちゃんと、跳び箱みたいな競技でのとしぼうといーねくん......あら、なぜか膨らんだキャラばかり。写真は優勝したわたるのホームページから勝手にいただいてきてしまった。まずいかな?


この夏のテレビは、北京オリンピックもいろいろおもしろかったけど、それ以外の個人的ベスト3は以下に決定。

・NHKスペシャル「幻のサメを探せ 秘境 東京海底谷」
・NHKスペシャル「解かれた封印 米軍カメラマンが見たNAGASAKI」
・TVチャンピオン「ゆるキャラ王選手権」

2008年9月 8日 (月)

本能に導かれて

ジョン・クラカワーのノンフィクション『荒野へ』を映画化。

「イントゥ・ザ・ワイルド」(2007年 米)
★★★★★

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あらすじと主人公クリス・マッカンドレスの印象は原作の感想に書いたとおり(ネタばれしてます)。とても丁寧に作られた映画だった。原作のもっていた繊細さがまったく損なわれることなく、映画化されていることに驚いた。出演者たちの演技もみな良かった!

一つ一つの映像に、監督ショーン・ペンの目を感じた。主人公クリスと一緒にショーン・ペンも、まっさらな心に戻って旅をした。そんな映画だった。エミール・ハーシュ演じる主人公クリスが映画を撮影しているカメラと戯れる、まるでメイキングのような映像が何カ所かはさまれるのが、その印象をいっそう強くした。

青年のやったことを無謀と非難するのは簡単だが、その無謀を許さない社会はつまらないと思う。しかし、映画を見て改めて、残された人々の悲しみに胸が締め付けられた。特に孤独な老人を演じたハル・ホルブルック、出番はわずかながら父親役のウィリアム・ハートには泣かされた。


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同じ日に見た映画。「イントゥ・ザ・ワイルド」とは真逆ともいえるコメディだが、テーマ的には似ていなくもない?(笑)

「デトロイト・メタル・シティ」(2008年 日本)
★★★☆

自分が嫌いなタイプの音楽を演奏しなきゃならないというのは、実際には相当な拷問だと思う。私には、主人公の根岸くんが本来目指していたオシャレなポップミュージックのほうが、演奏するのも聴くのも苦痛。クラウザー様のデスメタルのほうが好みです(吹き替えのボーカルの人がうまかった)。

でも、もっとはちゃめちゃにできたのになあという思いが残る。クライマックスのジーン・シモンズとの対決はちょっとしょぼかった。原作の漫画どおりなのかもしれないが…。
今をときめく映画スター(?)松山ケンイチは、クラウザー様に扮したときの走り方が良かった。母親役の宮崎美子がいい味を出していた。

2008年9月 7日 (日)

いま最もスーパーヒーローの似合う男

といったら、そりゃもうウィル・スミス。今作は、ひねくれてて荒っぽくて、みんなから迷惑者扱いされているスーパーヒーローなのだけど、やはりこういう超人的な役のウィル・スミスは魅力的。何があろうと、しめっぽくならないところがいい。

「ハンコック」(2008年 米)
★★★

ロサンゼルスに暮らす酒浸りの自堕落な男ハンコックは、実は不死身で空も飛べ、しかも驚異的なスーパー・パワーの持ち主。その類い希な能力を使い、事件が起きればすぐさま現場に駆けつけて解決してくれるが、事件の度に周囲へ大損害を与える乱暴なやり方と何一つ反省しないぶっきらぼうな態度が災いし、人々から非難されてばかり。そんなある日、踏切内で身動きがとれなくなり列車に轢かれそうになった1台の車をいつもの強引さで救う。その車を運転していたPR会社勤務のレイにとって命の恩人となったハンコックはやがて、彼から正義のヒーローとしてのイメージ・アップ計画を持ちかけられるのだが...。 (allcinemaより)

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ウィル・スミスのスター性で持っている映画であることは予想していたので、それ以上の期待はしていなかったのだけど......。それにしても、ウィル・スミスとシャーリーズ・セロンの顔のアップが多すぎ! 視界が狭いシーンが続くと、だんだん息苦しくなってきます。特にPRマンの妻役のセロンは、登場するやハンコックに対して意味ありげな態度を見せるんだけど、そこのところの見せ方とかどうなの?「表情のアップを増やせば、バカでも分かる映画になる」との、製作者側の指示でもあったんだろうか。
でも、嫌われ者ヒーローの活躍場面は楽しかった。ヒップホップな音楽をバックに登場するウィル・スミスはやっぱりかっこいい。

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