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2008年8月11日 (月)

破滅へのカウントダウン

2003年英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。

『夢の破片』モーラ・ジョス著/猪俣美江子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2004年邦訳)

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長期滞在のハウスシッター(留守番)をなりわいとする老女ジーンは、派遣会社から、今の屋敷での仕事を最後に解雇を通告されてしまう。生涯独身で、帰る家もないジーンは、その瞬間から正気でない行動に出る。自分の家族を妄想し、屋敷の主のように振る舞いはじめたのだ。やがて、ケチな泥棒でなんとか生計を立てていた不運の男マイクルと、恋人に捨てられ途方に暮れる若い妊婦ステフも屋敷に身を寄せることになり、3人での疑似家族生活が始まった...。


いかにも英国らしい鬱屈したサスペンス。雰囲気からしてラストは破滅が待っていると分かるのだが、緻密な文章で飽かず読ませる。失望と貧困の果て、もう何も失うものがないジーンとマイクル、そしてステフの3人は、田園の館ウォルデン・マナーで、それまでの惨めな人生を挽回するかのように、思いやりに満ちた共同生活を送るが、しかしそれも、屋敷の本当の主夫妻が帰宅するまでの8カ月という期限付き。途中、ステフの生後間もない子供が亡くなるという不幸があったものの、ベビーシッターで預かった赤ちゃんに慰みを見いだし、食べきれないほどに実った苺をみんなで摘む場面が幸せの頂点。そこから一転して、現実を見ざるを得なくなってくるという展開が鮮やかだ。

真っ赤に熟れた苺でジャム作りに励むジーンとステフ。その同じ時間、マイクルはというと・・・。(苺ジャムとあれを結びつける英国ミステリを読んだのはこれで2度目だ。) 静かに狂っていきながら、「わたしたちは悪人ではない、わたしたちはそっとしておいてほしいだけ」と日記に綴る老女ジーンに、共感するところはあまりないが、いよいよのときに下した「計画のちょっとした変更」には不思議なカタルシスがある。いえ、やっぱり狂っているんだけどもね。


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人呼んで「スケルトン探偵」。人類学教授ギデオン・オリヴァー・シリーズ。読むのは2冊目。

『呪い!』アーロン・エルキンズ著/青木久惠訳
(ハヤカワ文庫 1990年邦訳)

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発掘中のマヤ遺跡から人骨が見つかり、その鑑定を依頼されたオリヴァー教授。恋人とのヴァケーションを兼ね、メキシコ・ユカタン半島へ飛ぶ。

うーん、つまらなくはないのだけど、薄味。観光地ガイドにもなるミステリという以外に、面白さが見いだせませぬ。ユーモアも薄味で物足りませぬ。行ったことのある場所だったらもっと面白く読めるだろうか。もう一冊、エジプトが舞台の巻を読んでみよう。

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