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2008年8月

2008年8月31日 (日)

齢七十の腐れ縁コンビ

紙の値上がりのためか、文庫本の値段もいきなり上がっているみたいだ。講談社文庫はただでさえ文字が大きいのに、この程度の厚みで上下巻合わせて1840円ってのがちょっとした衝撃で、以来ネット上では中古商品を選んで購入。しかし、自分が購入するのは年間せいぜい40、50冊程度とはいえ、翻訳小説が売れなくなっていることに荷担してしまうことのジレンマもあるのだ。...と、殊勝なことをたまには言ってみる。

『還らざる日々』ロバート・ゴダード著/越前敏弥訳
(講談社文庫 2008年邦訳)

50年ぶりとなる空軍時代の同窓会に出席するため、かつて基地だったスコットランドの城館に向かったハリー・バーネット。列車で同行中の一人が失踪し、さらに不審な事件が旧友たちを襲う。直前に参加を取りやめたバリー・チップチェイスと共に、警察から嫌疑をかけられたハリーは...。 (文庫裏表紙より)

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『蒼穹のかなたへ』『日輪の果て』に続くハリー・バーネット・シリーズだそう。あいにくその2冊は読んでいないのだが、楽しい本だったよ。暗めの歴史ミステリを書く作家のイメージが強かったゴダードだけど、これは登場人物たちの会話にユーモアがあって軽快!
ハリーとバリーの年寄り腐れ縁コンビは『オールド・ディック』みたいだなあと思ったら、解説者の方も例に挙げておられた。何よりもバリーのキャラが良いわ。口の達者な前科者の詐欺師なのだけど、ハリーに対してだけはしおらしい一面があり憎めない。いわゆる和みキャラ。

殺人の嫌疑をかけられたハリーとバリーは、自分たちで真犯人を見つけようとするのだけれど、手がかりを求めて動き回っても、いちいち期待はずれに終わる。あんまりそんな調子が続くと、読んでいるほうもいらいらしてきそうなものだが、直後のハリーとバリーのやりとりが楽しいので、その「期待はずれ」が次第にお約束のように思えてくる。読後感もさわやかでよかった。


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このブログにお気に入りページとしてリンクを貼っていた洋書店ブログ「ランダムウォークの日々」が、しばらくぶりに覗いたらNot Foundになっていた。親会社である海外書籍・雑誌輸入販売の最大手、日本洋書販売が倒産していたのだった。私自身は洋書を読むことはまずないのだけど、スタッフによる海外文学ニュースは、とても親しみやすく、面白く読んでいたので残念です。

2008年8月30日 (土)

「大の男がよってたかって…」

1991年度「このミス」第1位の帯が目にとまり、手に取りました。

『行きずりの街』志水辰夫著
(新潮文庫 1991年)

女生徒との恋愛がスキャンダルとなり、都内の名門校を追放された元教師。退職後、郷里で塾講師をしていた彼は、失踪した教え子を捜しに、再び東京へ足を踏み入れた...。 (文庫裏表紙より)

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日本のミステリ作家のことはほとんど知らないので、たまに読むとしてもまったくの手探り。宮部みゆきも東野圭吾も京極夏彦も高村薫ですらも一冊も読んだことがないのに、たまに読むとなるとあまり聞き覚えのない作家に手を出してしまうという要領の悪さで、いわゆる努力しているように見える割には学校の成績も仕事もぱっとしない人間の典型なのだなあと思います。わかっちゃいるけど、この性格は直らない。

そんで、本書は正直、ハズしたと思いました。読み終わった後にAmazonのカスタマレビューを見ても、やはり辛口な意見が多い。しかし、そうなると逆に良かったところを見つけたくなる性格。ハードボイルド小説としては悪くないんじゃないの? 読みにくい文章とも思わなかったし。でも、中盤の男女の会話部分がうっとうしく退屈なのはどうしようもない。主人公がしゃべっているところをごっそりカットしたら、案外タイプな小説になるかも?  余計なお世話ですね。

2008年8月25日 (月)

浪花節だよジャック・フロスト

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みんな大好きフロスト警部!
これだけシリーズ続編の翻訳が待たれていたミステリもないでしょうね。私も待ったよー。なにせ前作から7年降りだもの(もう7年もたったのかとの思いもあるけど)。 この間に作者ウィングフィールドの訃報が伝えられ、ますますやきもきしました。享年79歳だったそう。ミステリ作家として本格デビューしたのは50代半ばってことになる。若い世代にしか書けない小説もあるけれど、フロスト警部シリーズは、人生経験の長い作者ならではの機微の豊かさが持ち味になっており、すべての世代に面白く読まれる内容だと思う。翻訳者が変わらないのもうれしい。あ、表紙のイラストもね。この上巻表紙はフロスト警部と、万年巡査部長のビル・ウェルズですね。

『フロスト気質』R・D・ウィングフィールド著/芹澤恵訳
(創元推理文庫 2008年邦訳)

ハロウィーンの夜、行方不明の少年を捜していた新米巡査が、ゴミに埋もれた少年の死体を発見する。そのうえ連続幼児刺傷犯が新たな罪を重ね、15歳の少女が誘拐され、謎の腐乱死体が見つかるなど、デントン警察はいつも以上に忙しい。よんどころない事情で払底している幹部連の穴埋めをするべく、これら事件の陣頭指揮に精を出すのは、ご存じ天下御免の仕事中毒、ジャック・フロスト警部その人。勝ち気な女性部長刑事や、因縁浅からぬ警部代行とやりあいながら、休暇返上で働く警部の雄姿ここにあり!警察小説の大人気シリーズ、待望の第4弾。(文庫扉より)

相変わらずの冴えない服装、 相変わらずの下ネタジョークとセクハラ発言、 相変わらずの間の悪さ(間の良さ?)、 相変わらずの思いつき捜査、 相変わらずの不眠不休、 相変わらずのニコチン中毒、 相変わらずのマレット署長との対立、 相変わらずの受付係ウェルズ巡査部長とのやりとり etc.

おなじみのことがおなじみのままであることがうれしいっす。でも、フロスト警部ったらこんなに浪花節な性格だったっけ?(笑) いつもより出ずっぱりで、いつもより上司としても有能な気もしたけど、もう前作までのことはほとんど忘れてしまっているからな...。

しかし、面白さは期待を裏切りませんでした! モジュラー型の複雑なプロット、たくさんの登場人物(巻頭3ページが登場人物一覧)にもかかわらず、途中でまったく混乱することなく読めてしまう。それだけみんなキャラが立っているということだろう。それぞれがどこかユーモラス。一部の犯罪者を含め。そして、読み終える頃には自分もフロスト警部チームの一員として、ひと仕事を終えた心地よい疲労感を共有している......これは長編ゆえの醍醐味でもあるけど、一見だめオヤジのようなフロストと、そのフロストに確かな信頼をおく仲間たちの関係が、実にいい感じだからなのだと思う。

いくつもの事件の解明とともに、フロストを軽蔑しているモード部長刑事と、過去の出来事でフロストに恨みをもつキャシディ警部代行が、いつフロストの性格に懐柔されるか(笑)も読みどころの一つになっているわけだが、それをさらりと行間だけで伝えてしまうところも憎い。これぞ大人の関係。そうそう、前作までと変わらないことがもう一つ。部下の独身男女の関係を取り持つキューピットのような役割も相変わらずでした。

2008年8月11日 (月)

破滅へのカウントダウン

2003年英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。

『夢の破片』モーラ・ジョス著/猪俣美江子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2004年邦訳)

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長期滞在のハウスシッター(留守番)をなりわいとする老女ジーンは、派遣会社から、今の屋敷での仕事を最後に解雇を通告されてしまう。生涯独身で、帰る家もないジーンは、その瞬間から正気でない行動に出る。自分の家族を妄想し、屋敷の主のように振る舞いはじめたのだ。やがて、ケチな泥棒でなんとか生計を立てていた不運の男マイクルと、恋人に捨てられ途方に暮れる若い妊婦ステフも屋敷に身を寄せることになり、3人での疑似家族生活が始まった...。


いかにも英国らしい鬱屈したサスペンス。雰囲気からしてラストは破滅が待っていると分かるのだが、緻密な文章で飽かず読ませる。失望と貧困の果て、もう何も失うものがないジーンとマイクル、そしてステフの3人は、田園の館ウォルデン・マナーで、それまでの惨めな人生を挽回するかのように、思いやりに満ちた共同生活を送るが、しかしそれも、屋敷の本当の主夫妻が帰宅するまでの8カ月という期限付き。途中、ステフの生後間もない子供が亡くなるという不幸があったものの、ベビーシッターで預かった赤ちゃんに慰みを見いだし、食べきれないほどに実った苺をみんなで摘む場面が幸せの頂点。そこから一転して、現実を見ざるを得なくなってくるという展開が鮮やかだ。

真っ赤に熟れた苺でジャム作りに励むジーンとステフ。その同じ時間、マイクルはというと・・・。(苺ジャムとあれを結びつける英国ミステリを読んだのはこれで2度目だ。) 静かに狂っていきながら、「わたしたちは悪人ではない、わたしたちはそっとしておいてほしいだけ」と日記に綴る老女ジーンに、共感するところはあまりないが、いよいよのときに下した「計画のちょっとした変更」には不思議なカタルシスがある。いえ、やっぱり狂っているんだけどもね。


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人呼んで「スケルトン探偵」。人類学教授ギデオン・オリヴァー・シリーズ。読むのは2冊目。

『呪い!』アーロン・エルキンズ著/青木久惠訳
(ハヤカワ文庫 1990年邦訳)

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発掘中のマヤ遺跡から人骨が見つかり、その鑑定を依頼されたオリヴァー教授。恋人とのヴァケーションを兼ね、メキシコ・ユカタン半島へ飛ぶ。

うーん、つまらなくはないのだけど、薄味。観光地ガイドにもなるミステリという以外に、面白さが見いだせませぬ。ユーモアも薄味で物足りませぬ。行ったことのある場所だったらもっと面白く読めるだろうか。もう一冊、エジプトが舞台の巻を読んでみよう。

「黒いジャガー」の人

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アイザック・ヘイズ。享年65歳。安らかに永眠されることを祈ります。
映画のテーマ曲「Shaft」のインパクトはでかかった。



先月末から今月にかけて、ジョニー・グリフィン(80歳)、ジョー・ベック(62歳)、ハイラム・ブロック(52歳)も亡くなっていたのですね。合掌。

2008年8月10日 (日)

Zzyzx Road

元ロス市警刑事、今は私立探偵のハリー・ボッシュ・シリーズ第10弾。

『天使と罪の街』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(講談社文庫 2006年邦訳)

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コナリーの単発長編『ザ・ポエッツ』と『わが心臓の痛み』、それぞれの主人公が登場し、なおかつシリーズ作の『夜より暗き闇』の続編にもなっている本作は、構成がいつもよりあっさりしていて、単発長編のどちらも読んでいない者としては物足りない。『ザ・ポエッツ』くらいは先に読んでおくべきだったかもしれないが、これを読んでしまった後ではそっちの面白さは半減だろう。意外な犯人というのが、すでに分かってしまっているんだもん。それを考えると、ずいぶん大胆なコナリーの試みだ。

『わが心臓の痛み』はクリント・イーストウッド主演で映画化されているが、その主人公テリー・マッケイレブの葬儀にイーストウッドが現れるといった描写が面白い。何が現実で何がフィクションか、一瞬頭が混乱する。イアン・ランキンの名前もちょっとした鍵として登場。また、カリフォルニア州境の砂漠地帯に実在する道路の名前「Zzyzx Road」が印象的に使われている。

2008年8月 9日 (土)

過去音可聴能力者

『ロスト・エコー』ジョー・R・ランズデール著/北野寿美枝訳
(ハヤカワ文庫 2008年邦訳)

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子供の頃の高熱が原因で、暴力や恐怖に関係した過去の出来事が、音を媒介として見えるようになってしまったハリー。特殊な能力は、ハリーにとっては苦痛をもたらすものでしかなく、また誰にも理解されず、苦学して大学に通いながらも、アルコールに溺れてその苦悩を紛らわす日々を送っていた。しかし、彼にかけられたある嫌疑を晴らすために、特殊能力によって見たものを口にしたことで、おぞましい事件に巻き込まれていく...。


特殊な能力を生かして、埋もれた犯罪を暴き、未解決の事件を次々と解決・・・そんなヒーローを期待すると肩透かし。でも、ちょっと考えてみれば、主人公がそのような人間で面白いミステリ小説が成り立つはずはなく。かといって、少年の成長物語としても特に感じ入る要素がないのに、読み出したら止まらない面白さはあるのだ。文庫帯にある「青春小説とサスペンスの二重奏」のキャッチどおりの内容だった。

ランズデールの小説はどれも出身地であるテキサス州が舞台。そして、前に読んだ『ボトムズ』の扉にあった言葉から想像すると、この小説の主人公ハリーの家庭環境・・・裕福ではないけれど、子供には精一杯の愛情をもって接する両親も、著者の生い立ちに重なるところがあるのかな。そのハリーとは対照的に、幼なじみのジョーイは暴力家庭で育った。読み終わっていちばん印象に残ったのは、脇役にすぎないこのジョーイの扱われ方とジョーイの孤独だったりする。

2008年8月 8日 (金)

ウルトラ怪獣のウーも出演(ウソ)

月曜日にプレミア試写会で観ました。

「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」(2008年 米)
★★★

ブレンダン・フレイザーが好きで、ハムナプトラシリーズも好きだった者としては、物悲しいものがある。何がって、まずは上映前の舞台挨拶だよ! 肝心の出演者へのインタビューよりも、会場に招待されただけの「セレブ」たちの紹介とご挨拶に多くの時間を費やすとは何ごとかと。また、そのセレブというのが、デビューしたてのアイドルだったりするのだよ。映画の宣伝にはむしろマイナスじゃないの? 少なくとも自分は、そのセレブとやらの顔ぶれを見て、映画への期待が一気にしぼんでいくのを感じましたけど...。
さらに、日本語版の吹き替えを担当した今人気絶頂のアイドル男性に進行を頼ってしまう司会者のダメっぷりにもイライラしたよ。会場はその男性のファン以外、確実にしらけていたぞ。先週の「ダークナイト」試写のときも同じ司会者だったが、ほかに人材がいないのか。

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気を取り直して、映画はというと・・・続編は重ねるごとに劣化していくとの法則どおりといいますか。単品として見れば、ストーリーは十分に楽しめる。なので、わがままかもしれないけれど。
(以下少しネタばれ)


オリンピックイヤーに合わせ(?)舞台をエジプトから中国に移し、内容はシリーズ(特に前作「2」)の焼き直し。これはある程度は予想していたけれども、それにしては見たことのある展開の連続で、意外性に欠しい。秦の始皇帝をモデルにしたと思われるジェット・リー演じる役は、イムホテップとスコーピオンキングを合わせたようなキャラだが、生身の見せ場がそれほどあるわけではないので、もったいない。突然のイエティ(雪男)の登場は面白かったけど、前作の小さくて凶暴な森の種族ほどのインパクトはない。

まあ、だいたいに笑いどころが少ない。 しかし、そんなことよりも何よりも、前作まではひしひしと感じられた、作り手のバカ映画にかける情熱みたいなものが、今作ではあまり感じられないのが残念だった。映画を楽しむというより、テーマパークのハムナプトラ・アトラクションを体験している気分だ。ハムナプトラの持ち味は監督スティーヴン・ソマーズの持ち味だったのだ。そのソマーズが製作側に引っ込んでしまったのが痛い。

あと、主人公リック・オコーネルの息子役が、個人的にはミスキャスト。「2」の子役は可愛かったのに、今回の息子役はまったく可愛げがないうえに、まったく息子らしくない。舞台挨拶でブレンダンが「親子関係に注目してほしい」といっていたが、むしろ敵同士に見えたよ。あの息子役は「1」に登場した粗暴なアメリカ人冒険家あたりを演じているほうが似合っていると思う。

ミシェル・ヨーをはじめ、中国人キャストは贅沢感があった。ジョナサン役のジョン・ハナーが引き続き出ていたのもうれしかった。彼が登場すると、あーハムナプトラだあとホッとする。レイチェル・ワイズが降板してしまったために余計に。

文句ばかりになってしまったけど、舞台挨拶のくだらん演出がいけないのだということでお許しください。

2008年8月 3日 (日)

善と悪のせめぎ合い

月曜日のプレミア試写会で一足早く観ました。
「バットマン・ビギンズ」の続編。The Dark nightではなくThe Dark knight。バットマンが正統派ヒーローではなくて、闇の部分を抱えたヒーローとして人々に認知されるに至るまでの物語って感じか。

「ダークナイト」(2008年 米)
★★★★★

Fi2621630_1e いやいや圧巻でした。見終わって口の中がカラカラに乾き(ずっと半開き状態だったらしく…笑)、しばらく席を立つ気にならないという経験は、今年は「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」に続いて2回目かな。見応えがあった。
(以下、いつものようにネタばれ)

ピエロ顔でにやつきながら「バットマンが存在しなければ、自分はちんけな悪党で終わっていた」と語るジョーカー(ヒース・レジャー)がとにかく怖い! プラス(+)が強くなればマイナス(ー)も強くなって、この世の均衡は保たれるというような言いっぷりである(ある部分では当たっていそうだが)。
バットマンの正義にダメージを与えることだけが目的。人々に恐怖を植えつけ、憎しみを芽ばえさせ、次々と悪に引きずり込んでいくのが彼のやり方。規範は持たず、自分の命すら惜しまない。そして指紋もDNAもない。まるでブラックホールのような悪。銃は使わない、殺人は犯さないといったルールを固持するバットマン(クリスチャン・ベイル)がだんだん影薄く見えてくるほどだ。

一方、ジョーカーの仕掛けたブラックホールに引きずり込まれるように、正義の検事から理不尽な復讐鬼へと180度豹変するハーヴェイ・デント(アーロン・エーカット)のもろさも印象的だ。結局、まっすぐな正義などを唱えていられたのは、自分が優秀な人物であるという驕りにすぎないのではないか…。悪が感染していく中で、唯一救いを感じさせたのが、バットマンでも検事デントでもなく、ジョーカーによって追い詰められた一般の人々や囚人であるというのが、うまい対照をなしていた。
もちろん、締めを飾るのはバットマン。とりわけ最後に下した決断は、ジョーカーのような男が二度と現れないように釘を刺すと同時に、人々が正義の存在への希望を失わないようにとの配慮なのだろう。元恋人が残した手紙の内容をブルース・ウェイン(バットマン)が知らないことは幸いではあるが、知らされないことが気の毒でもある。なんとも切ないよ。

出演者は豪華! のっけからウィリアム・フィクトナーがちょい役で出るし、前作の悪役スケアクロウも登場して、キリアン・マーフィーがほんの一瞬だけ素顔を見せる。前作でケイティ・ホームズが演じたレイチェル役はマギー・ギレンホールに変わり、顔が似ているから選ばれたのかもしれないが、彼女だけはあまり役にしっくりこないように感じた。
メインの3人の配役は文句なし! 特にジョーカー役のヒース・レジャーは、いままでの彼の演技から受ける想像を超えてきた。この映画の完成直後に亡くなったという先入観をできるだけ持たないようにしていたつもりだけれど、観たあとでは、ヒースの死がこの映画に箔をつけることは間違いないと確信してしまった。ジョーカーを演じたことで、彼の中の何かが変わってしまい、死を呼び寄せた。そう考えたくなるほどの深みを感じさせる演技だった。
また、映画が始まる前から低く鳴っていた放水サイレンのような音楽も、恐怖と不気味さをあおる。

実は映画の前半が、場面展開が速くよく理解できなかったし、見落としたところもいっぱいありそうなので、もう一度観たいと思う。でも、重すぎてしばらく観る気にならないかもしれない。あと、クリストファー・ノーラン監督作品は個人的にはヒット続き! 今後も追っかけたい。

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