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2008年6月 8日 (日)

女にもてる宦官探偵登場!

イスタンブールが舞台の歴史ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。

『イスタンブールの群狼』ジェイソン・グッドウィン著/和爾桃子訳
(ハヤカワ文庫 2008年)

Fi2621599_1e オスマン帝国のスルタン、マフムート2世が、無頼の集団との評判を落としていたイェニチェリ軍を撃滅してから10年後の1836年。閲兵式を控えた新たな近衛軍の士官4人が失踪し、そのうち1人が惨殺死体となって発見される。一方、トプカプ宮殿のハレムでは、その日スルタンに召されるはずだった女奴隷が何者かに絞殺される。切れ者として知られ、今は仕える主人のいない宦官ヤシムが、その2つの事件解明を任される…。

著者はイギリス人。オスマントルコ史に詳しい歴史著述家だそう。そのためイスタンブールの歴史と、街についてもやたら詳しく描かれており、観光ガイドにもなりそうな1冊。というか、まるでイスタンブールに行ってきた気分(いつか行きたいー)。
登場人物のキャラクターも、主人公の宦官ヤシムをはじめ、その友人のアル中気味なポーランド大使パレフスキー、コサック舞踏手であり男娼でもあるプリーン、マルティニーク出身のフランス人との説に則ったスルタンの母など、気になる人がいっぱい。また、ヤシムは週に一度、パレフスキーを招いて食事を作るのだけど、その調理シーンもめったにないくらい興味をそそられます。代々スーダン出身の黒人宦官がハレムの運営を任されてきたというのも面白いなあ。エジプトのマムルークもそうだけど、イェニチェリや宦官など、イスラムにおける異教徒出身の奴隷の地位は、西洋でいう奴隷とはずいぶん違っているんですよね。誰かの所有物であることには変わりはないようですが。

面白かったけれど、文章は人物視点がくるくる変わるせいもあり、かなり読み辛かった。会話も抽象的な表現が入ってくると、何を指しているのか理解できずに部分的に読み直してもやっぱり理解できないところが何カ所か。そのために登場人物たちに愛着がわいてきたのは、実はかなり後半になってからです。しかし、この人物たちと舞台設定をこれ1巻で終わらせてしまうのはもったいなく、シリーズ化はむべなるかな。巻末に訳者による、トルコ好き丸出しの熱心な解説が添えられていて、これも楽しい。勢いで本書にも登場するメフレヴィー教団の開祖メヴラーナに関係する小説を見つけて購入した。

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『偶然の音楽』ポール・オースター著/柴田元幸訳
(新潮文庫 1998年邦訳)

Fi2621599_2e 初めて読む作家。日本では大人気作家のうちに入るのでしょうね。私も10年前に大学生の年頃だったら、とっくに飛びついて読んでいたかもしれない。そんな作風。
小説から思ったのは、おのれの現状。加齢とともに些細な夢や希望を持ち続けるにも体力がいると感じているこの頃。昨日心に留めたことを、今日はほとんど忘れてしまい、日々の積み重ねというのは自分にとって何なんだろうと一応は落ち込んでみたりするが、それも明日になれば忘れている。若い頃に予想できていたら発狂しそうな成果に乏しい人生なのに、それが辛いか悲しいかというとそうでもなく。ただ、無気力に追い込まれていっているという自覚はあり、習慣によって最低限の生活の営みは維持しつつ、流されていっている感じだ。だけど、流されていくことと、人間としての規範を捨てることは別なので、小説の主人公がその点は貫けてよかったと思います。
たぶん、まったく的外れな感想文(笑)。前半が退屈すぎて、投げ出そうかと思った。

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『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午著
(文春文庫 2007年文庫化)

Fi2621599_3e 以前に読んだフランスの古典ミステリーとよく似たオチ。あれも読んだ後にどっと虚しくなったが、まだコンパクトにまとまっていたからね。この小説はそこそこ長編なので、これだけ引っぱってきて、そのオチかよ!というバランスが悪さが余韻を不快感に変えてしまった。といいますか、これはオチというほどのものなのか? 最初から分かっていたほうが、個性的な探偵ものとして読後感は良かった気がするけど。
文庫裏表紙に「二度、三度と読み返したくなる」とあるので、出だしだけ読み直してみた。なるほどとは思うけれど、残念ながら再読に耐えるほど魅力的な文章とも内容とも思えず。ただ、2003年に書かれた本なので、社会的素材が今では目新しくもなんともなくなっている点は大目に見るべきなのでしょうか。何カ所かで年間ベストミステリに選ばれた1冊。自分には日本の「本格ミステリ」と呼ばれる小説との相性の悪さを再確認した1冊。

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