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2008年5月18日 (日)

バッジがあろうとなかろうと

ハリウッド署の“元”刑事ヒエロニムス・ボッシュ・シリーズ9作目。

『暗く聖なる夜』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(講談社文庫 2005年邦訳)

Fi2621596_1e 市警をやめたボッシュは、警官としてではなく個人の人生における使命を模索する日々を送っていた。そんなとき銃撃事件に巻き込まれ全身麻痺となった元同僚からの電話により、4年前の未解決事件を思い出す。両手を差しのべるように伸ばした姿で殺されていた女性・・・ボッシュにとっても心残りな事件であり、死者の代弁こそがやはり自分の使命なのだと心をかため、独自の再捜査を始める…。

長く続いているこのシリーズ、読んだ後の満足感において常に一定のクオリティを維持しているところがすごいすね。長編なのに長編のストレスをまったく感じさせないところも。
映画製作会社に勤める若い女性の死、その直後に起きた映画ロケ現場での200万ドル強奪殺人事件、そして事件を担当していた刑事たちを襲った事故、その刑事たちに事件の重要な手がかりを与えたと思われるFBI女性捜査官の失踪、さらにアメリカを狙うテロ組織の存在・・・さまざまな要素が複雑に絡み合っているがために解明に至らずにいたそれぞれの謎を、いつもながらの食いついたら離さないボッシュの行動力が一気に解き明かしていく。

真相を突き止めるためなら、卑怯者と言われたり、汚いと言われる手段もつい探究心にかられ使ってしまう・・・ここがボッシュの弱点であり、人間臭さになっているかな。他人が自分に不法な手段を使うと怒りで顔を真っ赤にすることもあるのに、自分が他人に同じことをしてしまうのを抑えることができない。潔癖な人なら、許しがたいヒーロー像だよね、ボッシュは。その矛盾をボッシュ自身は分かっているらしく、相応のしっぺ返しも食らうのだけど、現実の知り合いにこういう人がいたら嫌だ(笑)。
また、彼が動くと、事件の犠牲者よりもさらに多くの死者が出てしまうのも相変わらず。イギリスのジョン・リーバス・シリーズではまずありえない。しかし、これまたベトナム帰還兵という背景をもつボッシュ・シリーズの個性になっているから、安易すぎると批判するのは野暮ってものなのだろう。

読み終わって印象に残ったのは、全身麻痺の生活を送る元刑事と妻の関係。妻はボッシュが携帯フラスコのアルコール以上の災を持ち込むのを初めから予期していたのだろうか。ボッシュに対する非難がましい態度から一転、浮気を誘いかけるような瞬間があるのだけれど、あのときの彼女の心のうちの複雑さをいろいろに想像してみます。

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コメント

こんにちは♪現実の知り合いにこういう人がいたら嫌だ(笑)激しく同意する次第です(笑)うわ、嫌だ~~ と感じるシーンが少なからずあるにも関わらず読後感がどよ~んとしないところがいつもスゴイと思います、うん。

nadjaさん、こんばんは。読後感といえば、この本のラストはとりわけハッピーですね。でも、それだけに次の不幸を予感させてしまいます。ボッシュですから・・・。いじわるかな(笑)。

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