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2008年3月17日 (月)

盗まれた御神体

1868年に書かれたミステリ小説の古典。T・S・エリオットが「最初の、最大にして最良の推理小説」と称した名著。とにかく長編なのだが、レジナルド・ヒルも「お気に入りミステリベスト10」に選んでいたので読んでみる。

『月長石』ウィルキー・コリンズ著/中村能三訳
(創元推理文庫 1962年訳)

Fi2621558_1e それに触れた者には必ずや災いが襲うとの伝説をもつインド寺院の秘宝「月長石」=大きな黄色ダイヤモンドが、数奇の運命を経て、イギリスの若きヴェリンダー卿令嬢のもとにやってくる。変わり者の伯父が、彼女の誕生日に渡すようにと託した遺産であったが、受け取ったその夜のうちに秘宝は忽然と消えてしまう。令嬢に思いを寄せる従兄とエリート部長刑事が捜査に乗り出すが、なぜか当の令嬢は非協力的。そして、秘宝の消息を追う先には、決まって謎の3人組のインド人の姿があった…。

物語は、何人かの関係者が手記をバトンタッチしていくことで事件を振り返るという体裁を取っている。最初に登場するのが『ロビンソン・クルーソー』を人生のバイブルとするヴェリンダー家の老執事で、このパートが長い。事件の概要説明を兼ねているせいもあるが、いい加減にくどい。だって老執事だから、つい思い出話とか主人への忠誠心といった話に脱線するの(笑)。さらに、その脱線をまた長々と詫びてみたりして。
その次に、狂信的キリスト教徒であるおせっかいな親族女性の手記に引き継がれると、俄然面白くなってくる。出版時にもこのパートが人気を博したそう。嫌われ者がその自覚なしに書く、独善的で気取った手記ほど滑稽なものはありません。ブログなどをやっていると、このような物言いは、そのままこちらに打ち返される恐れがあるのでほどほどに。
一転して、わけありな過去をもつ医師助手のパートは、哀切を誘う。推理よりは、手記から感じ取れる関係者それぞれの気質とか感性の違いが、豊かな読み物にしている。それぞれにくせがある。わずかしか登場しない弁護士の使いっ走りの小僧までが、一筋縄ではない個性を発揮。
黄色いダイヤモンドがたどってきた運命というのが、また魅力的だ。今読むと人種蔑視な表現が、登場人物の手記で構成されているのでなおさら露骨であったりするけれど、締めくくりはその嫌な感じも払拭され、満足満足。

これを読む時間があったら、別の本を数冊は読めた気がするけど…。

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