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2008年3月22日 (土)

人に厳しすぎる世界

日比谷スカラ座の一番大きいスクリーンで観ました。
一番大きいところは初めてでしたが、いいですね、ここ!

「ノーカントリー」(2007年 米)
★★★★★

Fi2621563_1e メキシコ国境近くのテキサス・・・小説でも映画でもここを舞台にしたものは、個人的には当たりが多いのだ。とりわけこれは文句のつけようがない映画で、エンドロールが終わった後もしばらくは座ったままぼーっとしていた。またこの映画館というのが、スクリーンが真っ黒になってもすぐには明かりがつかないところが気が利いている。
昨年、日本でも一部で話題を呼んだコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』の映画化。米アカデミー作品賞受賞作。原作も映画も原題は「No Country For Old Men」。

麻薬取引に絡んだ殺人現場から大金を失敬してしまったトレーラーハウス住まいのベトナム帰還兵モス(ジョシュ・ブローリン)が、見るからにまともじゃない酸素ボンベを抱えた男シガー(ハビエル・バルデム)に追われ逃げ回る。シガーはアメリカ側組織に雇われた金回収の仕事請負人だが、行く先々で容赦ない殺人を重ねていく。そして、その凄惨な現場を目にして大いに戸惑いながらも、なんとか気持ちを奮い立たせ職務をまっとうしようとする老保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)…。

逃げる者と追う者。ありふれたストーリーのようでテンポのいい展開、細部の妙なリアリティに意表を突かれっぱなし! また、どのシーンもこれぞ映画と言いたくなる構図だったり、照明だったり、その場面にふさわしい音響だったり…。これほどに充足感を覚えながら観ていられる映画というのは、そうは巡り会えません。ユニークな殺人方法をはじめ、一つひとつの題材は原作小説(未読)のままだとしても、その見せ方にコーエン兄弟の抜群のセンスを感じます。

しょっぱなのメキシコの闘犬に追われるシーンから怖い! とぼけた風味が一層怖さを引き立たせる。といって、コーエン兄弟は残虐なシーンをスタイリッシュに演出して遊んでいるふうでもない(唯一、車爆破を仕掛けるシーンに多少違和感を感じたけれど…)。
何ものにも惑わされることなく自らを神と信じて行動しているようなシガーが醸し出す恐怖は、知らぬ間に私たちを取り囲んでしまったように思える現実世界のさまざまな恐怖と重なる。抵抗するすべが分からず、流されるしかないという諦めに似た麻痺状態に置かれてしまう類いの恐怖。しかし、その麻痺状態からはっと醒める瞬間があった。モスの妻が、殺されるのを分かっていながら、シガーが仕掛けたコイントスのゲームに乗らなかった場面。

さらに、昔気質の老保安官が独り言のようにつぶやくセリフにより、映画は単なるバイオレンス・ムービーで終わっていないと思うが、一方でこの作品を何かの寓話としてとらえ、解釈を掘り下げてみても単なるこじつけとなり、映画のもっている味わいを損なってしまう気がします。

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コメント

うん。深く考えずに、映画の間だけ楽しめればそれで良いのよね。フツーに面白かったよ。構図、照明、音響、、、目の付け所が違います!さすが細部までよく見ていらっしゃいます。私なんて、音楽がかからない時点で、恐怖ばかりが先走って、、何でも良いから、音をくれぇ~~っと(笑)ちょろっと出て来たマリアッチ?の音楽で、やっと息がつけたって感じ。最後、妻と何やら夢の話をしているシーンで、ちょっとウトウトしてしまったんですが、大事なところだったのではないか?と心配してましたが、どうかな?あの犬って、マジに訓練された犬だったそうで、追いつかれたら咬みつかれちゃうんだから、ジョシュ・ブローリンもさぞ恐ろしかったろう。。。必死ですよね。アカデミー賞の時、顔でかっ!と思ったけど、やっぱりジョシュ・ブローリン!注目ですねっ!

>えむさん特に映画のつくりにとらわれて見ていたわけではないですけど、こういう映像のセンスが好きなんでしょね。セリフに無駄のない。まあ、ほかに感想書こうと思っても、うまく書けないし(笑)。最後は字幕を一度見ただけでは分かりにくかったです。父親がその先に待っていたというようなことを言ってたと思うけど。ブローリンいいね。少しかっこよすぎる気もしたけど、どんな役でもいけそうな俳優ですよね。出演者みな良かったです。

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