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2008年3月

2008年3月30日 (日)

死神の片思い

なかなか個性的な小説でした。

『天使の牙から』ジョナサン・キャロル著/浅羽莢子訳
(創元推理文庫 1995年邦訳)

Fi2621571_1e 癌で余命いくばくもないかつての人気TV番組のスター、ワイアットは知人から死神に取り憑かれているとの相談を持ちかけられる。一方、若くしてハリウッドを去りウィーンで隠遁生活を送る元女優のアーレンは、いくつもの戦火をくぐり抜けて来た報道カメラマンと恋に落ち、人生で最高のときを迎えていた…。

ダーク・ファンタジーというジャンルらしい。ジョナサン・キャロルはその代表的作家の一人らしい。衝撃の展開も読者を引きつけているようだが、読み終えてからキャロルが男性作家と知ったときが、自分には一番の驚きだったかも・・・てっきり女性だと思って読んでいたもので。文庫の表紙イメージに惑わされたか!

死への恐怖が紡いだ小説ととらえると、テーマはシンプル。結末も力強く、印象に残るのだが、そこに導かれるまでのお膳立てが・・・。構成が凝っている割には、人物に地に足がついた感が乏しく、エピソードの一つひとつが薄っぺらとしか思えず、恐怖を煽られるには至らなかった。それは私がこれまで生きてきて、死への恐怖をあまり感じたことがない(頭が考えることを拒否している)せいかもしれないと思ったりした。
また、いろいろな人物が登場し、その人物の視点で綴られる部分もあったりするが、読み終わってみると、アーレンの物語ばかりに偏って力が注がれているように感じ、もう一人の主人公であるワイアットの存在の意味がよく分からない。前半のパートは何だったんだろうと思ってしまいました。

ミステリを読み慣れているせいで、ついプロット重視で小説をとらえてしまうけれど、ジョナサン・キャロルの場合は、思いのままに書き進めていく中で、少しずれた(突飛な)感性が浮き彫りになってくるタイプなのかなと思った。そのずれ加減は面白かった。

2008年3月29日 (土)

お姫様ファンタジー万歳。

数年前にキル・ビルを観て以来、映画館に行っていないという学生時代の知人が「血や死人の出ない映画なら」というんで、選んだのがこれ。よほどのトラウマになっていたらしい。

「魔法にかけられて」(2007年 米)
★★★★

Fi2621570_1e ディズニー・アニメの世界から実写による現代のニューヨークへ、意地悪な女王によって追放されてしまったお姫様が、本当の恋に目覚めるまでを描くミュージカル・コメディ…。

お姫様役のエイミー・アダムスがとにかく良かった! 役の年頃と実年齢とのギャップをまったく感じさせず、表情も歌も素晴らしくチャーミングで、たわいない話を飽きさせない。彼女の演技力に★4つ。
現代社会にやってきて天然のボケっぷりを発揮するお姫様だけど、アニメの中では召使いもなく独り暮らし。実は生活力のあるしっかりものという前提があったので、いらいらもせずに観られたかも。ラブ・コメとしても、ちゃんとツボを押さえていて楽しめた。
パトリック・デンプシー、お久しぶり。

2008年3月26日 (水)

ネゴシエーターとしての腕前はいかに?

まずは出だしの2章目までが、ダルジール&パスコー・シリーズを読み続け、新刊翻訳を待ち続けていた者にはニヤニヤ笑いを禁じ得ない楽しさ! このシリーズの面白さが凝縮された始まりであると思う。翻訳がまた絶妙なんだなあ…。今作も満喫しました! これぞ現代英国ミステリー小説の底力。

『ダルジールの死』レジナルド・ヒル著/松下祥子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2008年邦訳)

通報してきたのが無能で鳴らすヘクター巡査でなかったら、通報を受けたのが無頼で鳴らすダルジール警視でなかったら、爆破事件の様相はまったく違っていたかもしれない。だが現実には、爆発に巻きこまれたダルジールは瀕死の重傷で生死の境をさまよい、パスコーがただ一人爆破事件を追っている。
事件の背後には、反テロを標榜してテロ容疑者や支援者を殺してゆく〈新テンプル騎士団〉と名乗る謎のグループが介在しているらしい。だが、敵のメンバーは公安捜査の中枢にも……ダルジールの容態を気づかいつつも、パスコーは単独捜査に突っ走る!


↑本の裏表紙より。最初の一文がいい感じなのでそのままコピー。

Fi2621566_1e_2 2005年の夏に起きたイスラム教徒過激派によるロンドン地下鉄爆発事件から影響を受けて書かれたと思われる今作です。このダルジール&パスコー・シリーズにおいては常にユーモアを忘れないレジナルド・ヒル。こんな深刻な題材も、なんと軽やかに調理してしまうことでしょう! しかし彼は老練だ。最後の最後でズシーンときました。なんと悩ましい課題を投げかけてくれちゃうのでしょう!

読み終わった瞬間は、パスコーの妻エリーに対して腹が立ちましたが、自分の夫が生真面目であるとともに、いざとなったらダルジールのような無鉄砲な行動も取れることを確信してしまった今では、ああするのも分からないではないと納得しました(させました)。そして、さまざまな背景をもった数多くの登場人物について、その人生について、もう一度じっくり考えてみたくなる余韻が残りました。

そうか、パスコーはカメレオンだったのかー。長く読み続けているにもかかわらず、上司のダルジールや同僚のウィールドに比べ、今一つ、つかみどころがなく面白みに欠けるキャラと感じていたパスコー(というか、ダルジールとウィールドの個性が強力すぎるのだが…)。要するに彼は、下品で奔放に振る舞うダルジールとのバランスを常にはかりながら行動していたために優等生にならざるを得なかった?。
でも、今回のようにダルジールが乗り移った活躍を見せてくれても、インテリで見た目もスマートなパスコーでは、やはり野生の勘をもったデブで大男のダルジールの代わりにはならない思うので、心配していた展開にはならずほっとしました。いや、心配はしていなかったけど…。
ダルジールの周囲を圧倒する性格をいずれ継ぐ者が現れるとしたら、それはロージーかな(笑)。パスコーとエリーのまだ幼い娘。今後の成長が楽しみです。ウィールドの活躍は少なめでしたが、ウィールドらしい出番がクライマックスにちゃんと用意されていたのも満足。あそこは先が読めていたので可笑しくてたまらなかった。

しかしそれより今作は、誰もが「どうしてあいつが警官になれたんだ」と首を傾げるぼんやりヘクターが、実にいいキャラ! 脱力させられて、ほのぼのとさせられて、あげくに泣かされそうになるという・・・。そして、そのヘクターのことをダルジールだけは以前からちゃんと目にかけていたというところが、いいじゃないか。さらにそのダルジールの期待にしっかり応えたヘクター、お手柄!

昨日、職場近くの小さな書店に寄ったら、いつもは本棚に1、2冊挟まっている程度のポケミスが、この『ダルジールの死』については、海外小説コーナーでは一番の高さに平積みされていた。出版社も相当に力を入れているのでしょうか。たくさんの人に読まれるとうれしいです。今作はこれまでのシリーズを読んでいなくてもあまり関係ないし、ここ何作かの中ではとても読みやすい。


追記。小説のラストの衝撃から立ち直る間もなく、あとがきの一文が私にはもう一つの大きなショックだった! あの作家のあのシリーズがそんな理由で終了していたなんて! 
そっちの翻訳が出るのももうそろそろかな……。

2008年3月22日 (土)

人に厳しすぎる世界

日比谷スカラ座の一番大きいスクリーンで観ました。
一番大きいところは初めてでしたが、いいですね、ここ!

「ノーカントリー」(2007年 米)
★★★★★

Fi2621563_1e メキシコ国境近くのテキサス・・・小説でも映画でもここを舞台にしたものは、個人的には当たりが多いのだ。とりわけこれは文句のつけようがない映画で、エンドロールが終わった後もしばらくは座ったままぼーっとしていた。またこの映画館というのが、スクリーンが真っ黒になってもすぐには明かりがつかないところが気が利いている。
昨年、日本でも一部で話題を呼んだコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』の映画化。米アカデミー作品賞受賞作。原作も映画も原題は「No Country For Old Men」。

麻薬取引に絡んだ殺人現場から大金を失敬してしまったトレーラーハウス住まいのベトナム帰還兵モス(ジョシュ・ブローリン)が、見るからにまともじゃない酸素ボンベを抱えた男シガー(ハビエル・バルデム)に追われ逃げ回る。シガーはアメリカ側組織に雇われた金回収の仕事請負人だが、行く先々で容赦ない殺人を重ねていく。そして、その凄惨な現場を目にして大いに戸惑いながらも、なんとか気持ちを奮い立たせ職務をまっとうしようとする老保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)…。

逃げる者と追う者。ありふれたストーリーのようでテンポのいい展開、細部の妙なリアリティに意表を突かれっぱなし! また、どのシーンもこれぞ映画と言いたくなる構図だったり、照明だったり、その場面にふさわしい音響だったり…。これほどに充足感を覚えながら観ていられる映画というのは、そうは巡り会えません。ユニークな殺人方法をはじめ、一つひとつの題材は原作小説(未読)のままだとしても、その見せ方にコーエン兄弟の抜群のセンスを感じます。

しょっぱなのメキシコの闘犬に追われるシーンから怖い! とぼけた風味が一層怖さを引き立たせる。といって、コーエン兄弟は残虐なシーンをスタイリッシュに演出して遊んでいるふうでもない(唯一、車爆破を仕掛けるシーンに多少違和感を感じたけれど…)。
何ものにも惑わされることなく自らを神と信じて行動しているようなシガーが醸し出す恐怖は、知らぬ間に私たちを取り囲んでしまったように思える現実世界のさまざまな恐怖と重なる。抵抗するすべが分からず、流されるしかないという諦めに似た麻痺状態に置かれてしまう類いの恐怖。しかし、その麻痺状態からはっと醒める瞬間があった。モスの妻が、殺されるのを分かっていながら、シガーが仕掛けたコイントスのゲームに乗らなかった場面。

さらに、昔気質の老保安官が独り言のようにつぶやくセリフにより、映画は単なるバイオレンス・ムービーで終わっていないと思うが、一方でこの作品を何かの寓話としてとらえ、解釈を掘り下げてみても単なるこじつけとなり、映画のもっている味わいを損なってしまう気がします。

2008年3月17日 (月)

盗まれた御神体

1868年に書かれたミステリ小説の古典。T・S・エリオットが「最初の、最大にして最良の推理小説」と称した名著。とにかく長編なのだが、レジナルド・ヒルも「お気に入りミステリベスト10」に選んでいたので読んでみる。

『月長石』ウィルキー・コリンズ著/中村能三訳
(創元推理文庫 1962年訳)

Fi2621558_1e それに触れた者には必ずや災いが襲うとの伝説をもつインド寺院の秘宝「月長石」=大きな黄色ダイヤモンドが、数奇の運命を経て、イギリスの若きヴェリンダー卿令嬢のもとにやってくる。変わり者の伯父が、彼女の誕生日に渡すようにと託した遺産であったが、受け取ったその夜のうちに秘宝は忽然と消えてしまう。令嬢に思いを寄せる従兄とエリート部長刑事が捜査に乗り出すが、なぜか当の令嬢は非協力的。そして、秘宝の消息を追う先には、決まって謎の3人組のインド人の姿があった…。

物語は、何人かの関係者が手記をバトンタッチしていくことで事件を振り返るという体裁を取っている。最初に登場するのが『ロビンソン・クルーソー』を人生のバイブルとするヴェリンダー家の老執事で、このパートが長い。事件の概要説明を兼ねているせいもあるが、いい加減にくどい。だって老執事だから、つい思い出話とか主人への忠誠心といった話に脱線するの(笑)。さらに、その脱線をまた長々と詫びてみたりして。
その次に、狂信的キリスト教徒であるおせっかいな親族女性の手記に引き継がれると、俄然面白くなってくる。出版時にもこのパートが人気を博したそう。嫌われ者がその自覚なしに書く、独善的で気取った手記ほど滑稽なものはありません。ブログなどをやっていると、このような物言いは、そのままこちらに打ち返される恐れがあるのでほどほどに。
一転して、わけありな過去をもつ医師助手のパートは、哀切を誘う。推理よりは、手記から感じ取れる関係者それぞれの気質とか感性の違いが、豊かな読み物にしている。それぞれにくせがある。わずかしか登場しない弁護士の使いっ走りの小僧までが、一筋縄ではない個性を発揮。
黄色いダイヤモンドがたどってきた運命というのが、また魅力的だ。今読むと人種蔑視な表現が、登場人物の手記で構成されているのでなおさら露骨であったりするけれど、締めくくりはその嫌な感じも払拭され、満足満足。

これを読む時間があったら、別の本を数冊は読めた気がするけど…。

2008年3月10日 (月)

ポップスグループ扱いか?

k.m.joeさんのブログを見て、『レコード・コレクターズ』3月号を買いました。ざっとめくっただけですが、60-70年代のSOUL/FUNK BEST100の選者それぞれ、挙げているアルバムは違っても、挙げているミュージシャンは驚くほどかぶっている。今聴いても輝いている人たちといったら、淘汰されて、そんなものかもしれない。
18位にオージェイズの『Back Stabbers』が入っていたり、オハイオ・プレイヤーズが複数枚入っているのにニヤリとしました。でも、これが選ばれるのだったら、ザ・ドラマティックス、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ、スピナーズあたりが入っていないのはなぜだ!と思うアルバムもありました。若い頃の思い入れは譲れない。

ついでに書店で「クーリエ・ジャポン」4月号も買いました。この雑誌は月刊になってからは欠かさず買っていて、いつもお風呂に浸かりながらちびちび読む。
今月号も「モルディブ 知られざる独裁国家」とか「ノーベル賞作家7人の書斎」とか「祭り上げられたヒーローの素顔 『ホテル・ルワンダ』の主人公は、悪人だった?!」というミニコラムがあったりして、面白そうです。

そして、あったあったーー! レジナルド・ヒルの最新刊『ダルジールの死』。帯の文句を読むだけでめちゃくちゃ面白そう! 早く読みたい。!
でも、今読んでる本がやたら字数が多くて、分厚くて、捻挫した左腕がいまだに痛いので本を開いて支え持つのも苦痛で、なかなか読み進みません・・・。

2008年3月 8日 (土)

凧は好きかい?

上映最終日、最終回にようやく観てきました。

「君のためなら千回でも」(2007年 米)
★★★☆

Fi2621551_1e う〜ん、ポイントとなるエピソードを抽出してつなげてあり、小説の最後のほうの山場はそっくり削除されている。原作の大きな魅力だった普遍的要素、人間の複雑で繊細な心というものを、せめてどれか一つのエピソードで掘り下げて、映画独自の視点を加えてほしかったですよ。それではくどくなるか?
2時間の映画という制限があるけど、特にラヒム・ハーンのついた優しい嘘が省略されてしまっているのが残念でした。ハッサンの父親アリがほんの脇役扱いだったのも。

しかし、こんなふうに物足りなく思うのは原作を先に読んでしまっていたからで、読んでいない人には十分に感動的で、興味深いところも多い映画になっているかもね。撮影は中国で行われたようだが、ソ連侵攻前のカブールの街のセットとその後ろに連なる雪山の風景は見応えがありました。

2月に読んだミステリー

たまたま1980年前後に書かれた作品が続きました。

『マンダリンの囁き』ルース・レンデル著/吉野美恵子訳
(ハヤカワ・ミステリ 1985年邦訳)

Fi2621550_1e 引退した弁護士アダム・ナイトンの妻アデラが自宅で射殺される。事件を担当するウェクスフォード主任警部とナイトン夫婦とは、偶然にも、数カ月に中国で知り合っていた。そのときアダムが口にしていた李白の詩、また、アデラが中国で撮影していた写真だけが消え失せていることから、警部は事件の発端は中国にあると考え、ツアー参加者への聞き込みを始める…。

サセックス州キングマーカス警察のウェクスフォード警部シリーズは初読み。初期のものは探さないと手に入りそうにないと諦めてこの12巻目から手にしたが、警部が仕事を離れ、訪中団の一人として中国を旅する場面に前半を費やすこの巻は、シリーズ中では異色なのかも。長く続くシリーズだと、マンネリを防ぐためにいろいろと趣向が凝らされる。
で、その前半の、警部が中国人のガイドに引き回され、湖南省長沙から香港まで、緑茶をがぶ飲みしながらうだるような暑さに耐えて旅する様子が面白かった。エジプトから帰って来た直後に読んだミステリー小説が、旅行記のような内容だったのでいっそう楽しめた。旅行中の描写にはレンデル自身の体験が生かされているのだろうか。中国のこの地域に行ってみたくなりました。マンダリンは中国の官僚のこと。

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『切り裂かれたミンクコート事件』ジェームズ・アンダースン著/山本俊子訳
(扶桑社ミステリー 2006年邦訳)

Fi2621550_2e 1930年代の英国。映画好きのバーフォード伯爵は、アメリカの映画会社から新作の下調べとして邸宅に滞在させてほしいとの申し込みを喜んで受け入れる。当初の滞在者は映画プロデューサーとスター俳優の2人だったが、娘のフィアンセ候補2人、遠方の親戚夫婦が加わり、そしてどこかから話を聞きつけた脚本家、イタリアの大女優も押し寄せ、直後から不審なことが起こり始める…。

1981年に出版された復古本格派のユーモア・ミステリー「オールダリー荘」シリーズ第2弾だそう。邸宅の中で殺人が起きて、犯人は滞在していたうちの誰かを推理するというやつです。気軽に読めて、最後の最後まで手抜きのない内容。でも、それだけ。たかがユーモアミステリーであっても、その時代、その土地柄、なんでもいいけど、推理以外にも読んで充実感のあるものでないと最近は虚しさが残ります。本は読んでいる間、楽しめればいいと割り切っているつもりでも。

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『ホッグ連続殺人』ウィリアム・L・デアンドリア著/真崎義博訳
(ハヤカワ文庫 2005年邦訳)

Fi2621550_3e 雪に閉ざされたニューヨーク州スパータで連続殺人事件が発生。HOGと名乗る犯人は、殺人を巧妙に事故や自殺に見せかけたうえで、最初の事件の目撃者である新聞記者に声明文を送りつけてくる。被害者に共通点はなく、捜査に行き詰まるなか、天才犯罪研究家ニッコロウ・ベネデッティ教授が犯人推理に乗り出す…。

1979年のMWA最優秀ペイパーバック賞受賞作。おそらくこの小説の一番の個性は事件のからくりにあると思うのだけど、からくりそのものは途中で薄々予想がつく。しかし、最後で明かされる動機がチープ。いやそれよりも、天才と呼ばれる変わり者の教授のキャラクターがあまり魅力的に思えず残念だった。単に好みの問題でしょうが。あと、心理学者ジャネットが単なるロマンス要員なのもなんだかな…でした。


今月刊行されるレジナルド・ヒルのダルジール&パスコー・シリーズ最新巻が待ち遠しい!

2008年3月 1日 (土)

団塊的(?)映画2本

新宿の映画館ではしご。

「団塊ボーイズ」(2007年 米)
★★★

ぱっとしない人生を送っている中年男4人が、一時的にすべてのしがらみから解放され、バイクに乗って計画なしの大陸横断ツーリングに出かける…。

邦題は原題どおり「Wild Hogs」のほうが良かったのにー。「団塊」という言葉を使ったのは、話題づくりのためだろうが、映画においては中年という意味でしかありません。
同じく敗者たちのロードムービー「リトル・ミス・サンシャイン」のような、最後にはほろっとくる内容を勝手に期待していたのだが、まったく違った。あちらが本物のカニ肉としたら、こっちは大量生産のカニ風味かまぼこ。消耗品として一時的に楽しめればいいという、志の低さが透けて見える気がする。
内容が浅くて、予定調和がすぎるのだ。映画「イージー・ライダー」に対するトリビュート的趣向があったり、題材こそ中年向けなのだけど、ストーリー展開、笑いのネタなどが子供センス、子供向け(と思ったらディズニー制作)。でも、映画を観ている間は大いに笑ったし、乾燥した大陸の広大な風景の中でのツーリングは本当に気持ちが良さそうでした。

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「潜水服は蝶の夢を見る」(2007年 仏/米)
★★★

Fi2621545_1e 42歳のときに、突然全身が麻痺してしまうロックトイン・シンドロームという奇病に冒された雑誌「ELLE」元編集長ジャン=ドミニク・ボビーが、唯一動く片方の目の瞬きだけをコミュニケーション手段に上梓した自伝を映画化…。

昨年数多くの映画賞を受賞したりノミネートされたりで話題になった作品。不自由な状況に置かれても想像力だけは何にも縛られないというテーマから、ハビエル・バルデム主演の「夜になるまえに」に似ていると思って観ていたのだが、監督が同じであることを後で知りました。
冒頭から主人公の目を通したぼやけた映像で、ファッション雑誌編集者ジャン=ドーが置かれた世界を忠実に表現した意欲は買うべきかと思うけど、すみません、疲れもあり途中で少しうとうとしました。
映画は、これでもかというほどジャン=ドーに共感することを迫ってきて、観客がこの映画をどう楽しむかという鑑賞の自由をも束縛する。これが、ジャン=ドーほどの想像力のない私には、ただ息苦しいだけで、映画として面白みに欠ける。あと、直前に「団塊ボーイズ」を観たせいで、この映画のほうがよほど音楽の使い方などのセンスで団塊臭がするなどと余計なことを考えた。監督がその世代だからかな。
しかし、映画の最後はジャン・ドーがああなるとは知らなかったから衝撃的だった! エンドロールの映像を観ながら深い感慨に襲われた。

(追記)
★の数はあくまで好み評価だが、この2作品が★3つだと、先日の「ラスト、コーション」が★3つ半というのは辛すぎる気がしてきたので、★4つに訂正。

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