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2008年1月22日 (火)

26年後の罪滅ぼし

全世界800万人が涙した大ベストセラーとのキャッチフレーズ、そしてこのライトノベルのような邦題。しかしそれより何より、アフガニスタン生まれの作家による小説という点に引かれます。『カイト・ランナー』として刊行されたものを、映画化(日本では2月公開)に合わせ、改題して文庫化。

『君のためなら千回でも』カーレド・ホッセイニ著/佐藤耕士訳
(ハヤカワepi文庫 2006年邦訳)

Fi2621533_1e 1963年にカブール指折りの裕福な家に生まれたパシュトゥーン人のアミールと、翌年その使用人の息子として生まれたハザラ人のハッサン。二人はともに幼くして母親はおらず、同じ乳母の乳を飲み兄弟のように育ったが、アミール12歳の冬の凧合戦の日、二人の仲が変わってしまう出来事が起こる。
以来、大きな罪の意識を背負って生きることになるアミール。それはまだ「世界にその名を知られていない平和なアフガニスタン」の時代。やがてソ連のアフガニスタン侵攻で、アミールは父とともにアメリカに亡命。しかし、凧合戦の年から26年後、パキスタンからの1本の電話によって彼は再び故国へ、タリバンが支配する「絶望の国」アフガニスタンへと旅立つ…。


これは泣くよ! 私でも。文庫上巻の途中からすでに泣く! あとはずっと数ページ読んではぼーっとして、また数ページ読んではぼーっと・・・とても読みやすい文章で、特に後半などはそんなのありえねーという都合のいい展開も多いのだが、いちいち胸が詰まる。
多民族の対立と大国の介入により不毛な戦争が続く国の話だからというのはむしろ二の次だ。もちろんそれはこの物語に欠かすことのできない要素なのだが、「普遍的文学テーマが、まるで精緻な機織り機によって織り込まれたかのように美しく描かれている」(あとがきより)物語だからこそ、全世界で800万冊も売れたのだ。それがとてもよく分かる。

アミールの自ら招いた痛手、ハッサンの子供らしからぬ献身(その背景にある社会的差別)。友情と人間の弱さがもたらす裏切りについて、どこかで読んだ覚えがあると思い立ったのは夏目漱石の小説だ。アミールと父ババが互いに対してもつ思いにも泣ける。そして父の友人であるラヒム・ハーンがアミールたちを思いやるゆえについた最後の嘘と、アミールの前から姿を消した理由・・・なんて繊細な。なんてやさしい人なんだラヒム・ハーン!

アフガニスタンやイスラムのしきたり、風習もとても分かりやすく書かれている。また、タリバン政権下の悲惨な状況もしっかり盛り込みながら、それが小説の硬さになっていないのも素晴らしい。
この作品は映画を見るより先に本を読まないと絶対損!と言い切ってしまおう。

・・・・・・・・・・・・・・・
映画はアフガニスタンでは、民族対立をあおるなどの理由で上映禁止とのこと。その理由ならば理解できなくもない。現状が現状だし。

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コメント

おはようございます。これ、痛いですよね。読みながら、はぁ、って溜息ついて、読み終わったら放心状態だったことヒメヒカゲさんの記事読みながら、まざまざと思い出してました。ブログはじめる前に 単行本(『カイト・ランナー』)借りて読んだんです。いつのまにか文庫化されてたんだ~。映画にもなるんだ~。これは、きっと サングラス必須で観なきゃ、ですねぇ。ところで、epi文庫って、なんで他の文庫よりもサイズが大きいんでしょうね。いつも、不思議に思ってます。

>nadjaさんこんばんは。一度話題になっているんですね。大きな本屋を覗くことがめっきり減り、ネット上でも文庫くらいしかチェックしないのでまったく知りませんでした。映画、一人でこっそり行くのがいいですね!epi文庫の高さ数ミリが、本棚に詰め込むときの邪魔になります。普通の文庫と平凡社ライブラリーの中間くらいですか。

ぼくが持っているepi文庫は”グレアム・グリーン・セレクション”だけなんだが、いま計ったら”高さ”が5mm高く、幅は普通の文庫と同じである、たしかになぜそうであるかは奇妙だね(笑)ところでヒメとnadjaさんは、このグレアム・グリーンとかル・カレとかは読まないのだろうか、それともとっくに読んだのだろうか。このふたりとも、ぼくは昔はだめだったが、最近面白い。イギリス的なものとアメリカ的なものって、ぜんぜん異質だよね。昔のロックもさ(笑)どうもアフガニスタンの話題じゃなくて、失礼!

>warmgunさんル・カレは「寒い国からー」と「パナマの仕立屋」を読みましたが、若さのせいか(笑)面白さがわかりませんでした。グレアム・グリーンは「情事の終わり」のみ。映画化された「おとなしいアメリカ人」は観ましたが、スパイ小説はあまり読まないなあ。でも今、精神がいかれて病院送りになった5人のスパイの話を読んでます。新刊のアメリカものですけどね・・。小説といっても、私の場合はほとんどミステリーですけど、断然イギリス派です! 登場人物に惚れることが多いです。アメリカの場合は内容は面白くてもあまり惚れません(笑)あと、シリアスな話でも、突き放したユーモアがあるのがいいですねイギリスもの。それを感じ取れない人がけっこういるのかな、イアン・ランキンなんかあまり売れてないもんで。

おじゃまします(笑)まず、warmgunさんへお返事。ル・カレは、『ナイロビの蜂』がおもしろかったよ~、と、読んだ人からもらったのですが苦手な上下巻なので(苦笑) いつか読もうと積んであります。今年こそ!(笑)ということで、未読でございます。グレアム・グリーンは、『第三の男』 と 『ブライトン・ロック』 読みました。映画は観てないけど。あ、『二十一の短篇』も読みました、たぶん・・・(苦笑)『ヒューマン・ファクター』 新訳につられて買ったものの、まだ積読です。わたしも、どちらかと言うと、切れ者スパイよりも、酔いどれ探偵とか一見さえない警官のほうに惹かれちゃいます。ヒメヒカゲさんいつごろ出発ですか?関東もすごい寒いらしいですね。 風邪ひかないようにしてね。

>nadjaさんまだいるんです。旅行は2月中旬です。そうなんでよね。周りからダメ人間と言われている警官や探偵のほうがね。でもル・カレのスマイリー(でしたっけ?)もシリーズで読んだら違うかもしれません。>warmgunさん

ヒメ殿、nadjaさま、まとめて返信(失礼)いやさ、ぼくも007以外はスパイ物には関心なかった。ル・カレはスマイリー3部作と、その『ナイロビの蜂』を読んだんだが、”蜂”はたいしたことないよ。映画の『リトル・ドラマー・ガール』はテロリストがかっこよい(原作はまだ最初だけ)グリーンはぼくもちゃんと読んだのは『ヒューマン・ファクター』と『情事の終わり』で、いま『事件の核心』を読みかけてて、好きだな。スマイリーにしろ、グリーンの人物にしろ”酔いどれ”ではないが、なんか地味に変なのがよいね。ヒメ、2月もあちらは暑いんだろうか(笑)、気温変化に注意!

warmgunさんも007は好きでしたか?!スパイ小説の場合は、映画の007みたいな派手なのを期待して読んではいけないんでしょうね。今、家にあった古い新潮文庫「情事の終わり」を開いて見たんですが、文字がものすごく小さいです!

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