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2007年12月

2007年12月30日 (日)

人が死ぬと何が起きる?

一昨日、「死ぬまでの短い時間」再び。2回目を観ても、分からないところが減ったわけじゃない。でも、後半、シミズが一人で崖っぷちに出かけ、シェーンかむばーっくと叫んでみた気持ちは分かった気がした。それと、秋山菜津子のぶれなさぶりがすごい。本当に上手いんだこの人。

たまたまだけど、この1週間ほどかかって読んでいたのが、この世とあの世の境目を扱ったSF小説。そもそもあの世=死後の世界などあるのかというのが大きな疑問だが、三途の川と称される、その川を渡る間くらいは現世とは別な世界がありそうじゃないか?
一瞬の居眠りの間にも夢を見るのと一緒で、脳が最後のショートをする1秒くらいの時間が、この世から消える者にとっては長い旅かもしれない。そして死にゆく者の幻想と、生きている者の幻想がたまたま重なることもあるのかもしれない。


『航路』コニー・ウィリス著/大森望訳
(ヴィレッジブックス 2004年文庫化)

Fi2621527_1e 認知心理学者のジョアンナは、 NDE(臨死体験)現象の科学的解明のために大病院にオフィスを構え、患者の聴き取り調査をする日々。しかし、病院には彼女のライバルがいる。いかがわしい臨死体験本がベストセラーにもなったノンフィクション作家のマンドレイク。病院で新たな臨死体験者が出るたびに、彼女より先んじて患者に接し、誘導尋問によって「あの世が存在する」という意識を植え付けてしまうのだ。
しかし、彼女にも頼もしい味方が現れる。新たに赴任して来た神経内科医のリチャード。彼は臨死体験そっくりの幻覚を誘発する薬物を発見しており、被験者に擬似NDEを体験させ脳の状態を記録するプロジェクトを立ち上げ、ジョアンナに協力を求める…。

文庫本上下巻合わせて1200ページ以上。3部構成の1部を読み終えた時点では、話が進展している気がぜんぜんしない。科学的・医学的な臨死体験の解明といっても、小難しいのは脳内分泌物質の名前が登場するところくらい。迷路のような大病院でのジョアンナと彼女を取り巻く人々の日常がコミカルに描かれていて、読みやすい内容なのだが、同じコントをしつこく繰り返しているだけのような気もしてくる。
しかし、突如としてやってくるんだ、思いがけぬ展開が。
その思いがけなさから得る衝撃は、長編小説ならでは。

人が死んだとき何が起こるのか。もちろん本当のことは誰にも分からないし、ましてや小説なんだからどう話を作っても構わないわけだろうけど、この本の結末の違和感のなさといったら、見事でした。きちんとテーマは完結している。著者なりの精一杯に誠実な答えが導き出されていると感じ、そこに共感した。
しかし、「思い出が走馬灯のように」というのは、ばらばらになっていく記憶の欠片を一つずつ投棄することというドライな描写には参った。うろたえた。

2007年12月24日 (月)

魅惑のエロサウンド その16

知らない間に出ていたCDで買い直し、久しぶりに聴いた70年代のスティーヴ・グロスマン……やっぱり好きだ! 初期のリーダー作2枚。

Steve Grossmanの『Some Shapes To Come』『Terra Firma』

Fi2621526_1e グロスマンは1951年、ニューヨーク・ブルックリン生まれのユダヤ系。10代でマイルスのバンドに参加した早熟なミュージシャンの一人だけれど、一般にはそれほど人気はなかった。しかし、同じサックス吹きには熱心なファンが多かった。私も一聴して惚れた。この人のこの頃のサックスの音色がとにかく好きだった。その時代の音というのをサックスで表現できていた人なんだろう。 

テナーもソプラノもめちゃくちゃ気持ちよく鳴ってる。テクニックはあるのにリードミスも音外しも気にしない。ちまちましていなくて奔放。本人も当時ははちゃめちゃな行動が目立つ人だったらしいが、その性格が楽器からそのまま伝わってくるとでもいいましょうか。そして、ただ豪快な音色というだけでなく、どこか退廃的な色っぽさを兼ね備えているところがたまらないです。

Fi2621526_2e 『Some Shapes To Come』(写真上、CDではジャケットデザインが異なる)は73年録音の初リーダー作。『Terra Firma』(写真下)は76年録音。どちらもストーン・アライアンスの同胞であるドン・アライアス(ds、per)、ジーン・パーラ(b)とともに、マハビシュヌ・オーケストラのヤン・ハマー(key)を迎えた作品。
ハマーのエレピやムーグシンセのおかげで、ストーン・アライアンスよりはずっと親しみやすい音になっている。前者では2曲目「Haresah」、3曲目「Zulu Stomp」、後者では2曲目「In It」、5曲目「Inmate Man」などは、ジャンルを超越したファンキーな楽曲。

この後にフランス録音された、もっとストレートなジャズのピアノトリオを従えた『Born at the Same Time』も、グロスマンのサックスに絞れば評判いいけど、サウンドの面白さでは上の2枚のほうが勝る。今聴いても十分に刺激的と思う。リズムや曲調が突然変わったりするのがスリリングで、改めて面白いと思う。

鍋焼きうどんののぼりが…。

新宿で映画。第一候補は男同士のフィギュアスケート映画だったのだが、渋谷の小さな映画館だけでしかやってないのが残念。

「再会の街で」(2007年 米)
★★★☆

9.11で妻子を亡くしてから、楽しいこと以外は自分の感情に向き合えなくなってしまった男(アダム・サンドラー)と、彼の学生時代のルームメイトで、恵まれた生活を送りながらもその生活に息苦しさを感じている男(ドン・チードル)が偶然再会し、再び友情を育んでいくといった話…。

インディペンデント映画のような、マニアックな小ネタとかは嫌いじゃない。でも、ストーリーは凡庸に感じた。9.11に頼りすぎの感じがする。これを題材に持ち出されると、あらかじめ同情を強要されているような、居心地の悪い気分になる。
でも、コメディを交えてさらっとしたつくりになっているところは良かった。特にドナルド・サザーランド演じる判事が、いかにもアメリカ的な弁護士を一喝するところは痛快。
音楽はロルフ・ケントという人だけど、ギターがグスターボ・サンタオラヤそっくりだったなあ。

2007年12月16日 (日)

元気になる音 その34

車のCMに使われているジョルジ・ベンジョールの「タジ・マハール」。前より音量が大きくなったように思うのは気のせいかな。単純なサビの部分だけなのに、聴こえてくるたびにウキウキしゃちゃいます。ほかに今年のCMで印象的だったのは、やはり車のCMに使われていたキング・クリムゾンの「イージー・マネー」。この選曲には意表を突かれた! あとiPod Nanoのファイストという人の歌声にもクラッと来ました。

久々にCDピックアップ。上記とはぜんぜん関係なくソウル・ファンク系。
フィリーソウルは大好きだけど、サルソウルになるとまったく興味がない。インスタント・ファンクはその過渡期の音を奏でるバンド。バンド名は「すぐにノリノリ」という意味らしいが、サウンドが即席という意味にも勘違いされかねないような器用貧乏さで、ファンクバンドとしての評価では少しばかり損をしている気がする。

Instant Funkの“The Funk Is On”

Fi2621523_1e 黒人と白人の混合バンド。イヴリン“シャンペーン”キングの1977年の大ヒット曲「Shame」のバック演奏で足固めをし、その後、80年代初頭にかけてダンスフロアで受ける音楽をひたすら追求してきたような人たちだ。ディスコ音楽というと音楽ファンからは軽く見られがちだが、自分の好みを基準にすると玉石混合だと思っていて、ディスコクラシックのようにすべて一緒に語られると、勘弁してくださいよと思ったりもするわけです。好きなものとそうでないもの、どこが違うのか説明するのはとても難しい。

最も有名な曲の「I Got My Mind Made Up」はさすがにもう聴き飽きた感がある。大ヒットするだけあって彼らの曲の中でもかなり軽めで聴きやすい。しかし、こうやって写真のベスト盤などを通しで聴いてみると、ここだけは譲れないという硬派な部分は一貫して持っている人たちのように感じられ、好印象。ボーカルが古いタイプのソウルシンガーだからかもしれないけど…。

特に好きなのは4曲目「Bodyshine」や5曲目「The Funk Is On」。Bodyshineなどはたぶん一般的には名曲でもなんでもないんだろうけど、これをライブで延々と演奏されたらたまらないなぁという思いがある。CDではちょっと伝わりにくい。The Funk Is Onはリック・ジェームス風アレンジとでもいうのでしょうか。元気が出る曲としてはこれが一番! あと、普通の歌もの曲として14曲目「It's Cool」のリフアレンジも好き。

死ぬまでの短い時間

アキ・カウリスマキ監督の映画に触発されて書かれた芝居、そして北村一輝主演。この組み合わせを知ったときからめっちゃ期待を寄せていた、岩松了作・演出の「死ぬまでの短い時間」を先週観劇。
ストーリー展開は少々難解で、ちゃんと理解できたとは到底言い切らないけれど、それがそれほど気になるわけでもなく、自分なりの解釈で十分に楽しめたと思う。いやぁ良かったよ! いままで見てきた北村主演の芝居の中では、内容的にも役柄的にもいちばん好き。というか、演劇というものに対し、苦手意識をもったり斜に構えたりせず鑑賞できたというのは、自分にとっては小学生の頃以来かもしれぬ(笑)。

(以下少しネタばれ)

海辺の町を舞台に、暗い過去を背負い自殺にやってきた女フタバを秋山菜津子が演じ、自殺の名所まで客を送ることで自殺幇助していると非難されているタクシー運転手シミズを北村が演じる。ほかに出演者は田中圭ら5人のみ。それに生バンドによる演奏と歌がところどころに入る。
印象的なセリフを散りばめた短い場面をつないだ構成。現実と非現実、現在と過去が入り組んだ内容で、脇のもう一組の男女の役割がいまひとつ掴めなかった感があったけど、フタバとシミズの人物像とか、男女としての関係にカウリスマキ作品の面影を見た気がした。特に最後の場面が、いい余韻となって今も残っている。シチュエーションはぜんぜん違うけれど、この前に観た「街のあかり」のラストを思い出した。

会場はベニサン・ピット。染色会社の古いレンガ造り風の工場を劇場やスタジオに改造しているため、とても雰囲気がある。東京の下町にこんなところが残ってたんだとちょっと驚く。劇場は客席が160程度。ステージのふちの部分がタイル貼りで、ここはもしかしたら元は銭湯か?と思ったんだけど、あれは染料を入れる槽だったのだろうか。

でも、銭湯の湯船の上がステージという思いつきにはまって、あそこの壁には富士山が描かれていたのかなぁーなどとボーっと考えていたら、会場が暗くなって北村が一人で登場。ステージの先端までやってきて腰をかけ、無言でパンを食べ始める。なんと最前列席に座っている私の真ん前、至近距離。始まっていきなりのことで頭の中が真っ白になる。つい食い入るように見つめてしまいそうになるのをセーブして目をそらすのが精一杯。他の出演者が出てきてセリフを言い始めても、しばらくは耳に入ってこなかった。
私としたことが、いい年をして不覚をとった。北村ファン熱も相当落ち着いてきていると思っていたが、そうでもなかった(笑)。
今月末にもう1回行きます。

2007年12月10日 (月)

生まれる環境は選べない

ワシントンDCの黒人探偵デレク・ストレンジ・シリーズ第3弾。

『魂よ眠れ』ジョージ・P・ペレケーノス著/横山啓明訳
(ハヤカワ文庫 2006年邦訳)

Fi2621521_1e ストリートギャングの大ボスであるオリヴァーが逮捕され、オリヴァーの生い立ちに責任を感じているデレクは、彼が死刑になることだけは食い止めようと証人探しに奔走する。一方、街では新たなボスの座を巡り、2つのギャング団が一触即発の関係にあった…。

前作『終わりなき孤独』からつながる内容。貧民街アナコスティア地区で生まれ育った、30歳まで生きられれば長生きとされるようなストリートギャングたちが物語の中心を占め、内容的にはシリーズ3作目にしてすでにまったく新鮮味はないのだけれど、作家ペレケーノスは地元ワシントンDCの、ひいてはアメリカ社会の暗部を、探偵といえども等身大の主人公を通じて描き続けることが彼のライフワークであり、使命とすら思っていそうだ。

貧困や麻薬など問題はいろいろあるが、今作は銃社会に焦点が当てられる(ペレケーノス自身、10代のときに銃の暴発で友人に怪我を負わしてしまった過去がある)。
イケてるとされるファッション、車、音楽などと同等に、さまざまな銃の名前が出てくる。そして、デレクと白人の相棒クインの銃に対する考え方の違いも浮き彫りになる。デレクは護身の必要があるときもナイフとこん棒しか持ち歩かない。しかし、クインは警官時代に誤って仲間の警官を射殺してしまった経験があるにもかかわらず、銃が必要なときもあるとの考えを変えない。

最後にデレクが取った行動は、深い絶望をたたえているように思える。

「何か変な臭いがするわ」

読み終わって本棚に片付けようとして、またやった、同じ本が2冊…ため息。
まったく記憶がないパート2。前に読んだことには違いないが。

『A型の女』マイクル・Z・リューイン著/石田善彦訳
(ハヤカワ文庫 1991年文庫化)

探偵アルバート・サムスンを1冊目から読み始めようと買ってみたのです。出ばなをくじかれた思い。悪いのは私であって、本は悪くない。
真面目に働いて、それで一体何がどう変わるのか?という思いが年々澱のように積もり、他人目に分からない程度に手抜きをすることにささやかな快感を覚えている今の自分には、なんだか親しみを覚える主人公探偵。といっても、共通するのは頭の中で考えていることだけですが。
1971年に書かれた作品。依頼人の女子学生がいきいきと描かれていていい。独り暮らしの中年探偵の住まい兼事務所にいきなり飛び込んできて、吐いた言葉が「何か変な臭いがするわ」・・・笑。知り合いの部長刑事とのやりとりも面白く、メインの事件解決は二の次。

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こっちは約半世紀前に書かれたフランスのミステリー。

『殺人交叉点』フレッド・カサック著/平岡敦訳
(創元推理文庫 2000年文庫化)

Fi2621520_2e 初めの章が淫らな感じで、これはインモラルな小説なのかとちょっと期待してしまった(笑)。最後に読者をあっと驚かせる仕掛けが用意されている「○○トリック」と呼ばれるジャンルは、読んだ後に虚しくなるよ。併録されている「連鎖反応」のほうがユーモアがあって好きです。

2007年12月 9日 (日)

12月だからというわけでもないがゴスペル。

先週の土曜日、ビルボード・ライブ東京でサウンド・オブ・ブラックネスのコンサート。
誘われて一緒に行った友人によると「前にも一緒に見た」と・・・え? そ、そうでしたっけ? 記憶にないー! 同世代の二人、いったいボケているのはどっちでしょう。

サウンド・オブ・ブラックネスはゴスペル・グループ。94年のアルバム『The Journey of the Drum』はかなりくり返し聴いたが、結局聴いたのはそれ1枚。でも、その中の曲をけっこうやってくれたと思うので、今も代表作なんでしょう。本当はメンバー40人くらいのグループだが、今回来日したのはボーカル7人、ぷらすバックバンド7人(キーボード2人、ドラム、パーカス、ベース、ホーン2人)の14人編成でした。

抜粋メンバー7人では、聖歌隊の迫力は望めません。けど、ひさびさに大編成バンドのコンサートを楽しみました。サウンドはコンテンポラリーなブラック。ラップを交えたり、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの曲をメドレーでやりながら、コール&レスポンスで客を煽ったり、その辺りのショーマンシップは商業バンドと変わらない。そもそも、キリスト教徒でもないし、歌詞も分からない人間にとっては、どっちでもいいことだ。
こういうのを見ると、ますます本物のファンクバンド(ギターもいるバンド)のライブが見たくなるねーと話しながら帰ってきました。赤坂のムゲンみたいな場所はもうできないんだろうかとか、生のファンクバンド自体がもういないから無理なんじゃないのかとか…。

残念だったのは座席位置。予約したのが遅く、今回は1階の後方の、2階席が張り出している下になってしまった。どの会場でも、天井が低く張り出している下というのは、音響的にライブの臨場感が著しく欠けるのを改めて痛感。

2007年12月 7日 (金)

ランキングが気になる季節

忙しくて放置状態に近いブログですが、一昨日あたりからカウンターがいつもより回っている。なぜだろうと考えたら、あちこちで今年のミステリー小説ランキングが発表される時期でした。たぶん、この前の記事の『路上の事件』が検索で引っかかったのでしょう。ほとんど参考になるようなことを書いてなくてごめんなさいだ。

私も毎年「IN・POCKET」「このミス」「週刊文春」あたりの、特に翻訳ミステリー・ランキングはやはり気になって確認してみる。大抵は、読んだものがベスト20に2冊入っていればいいほうだけど、今年は、文庫が多く選ばれているせいか、読んだ本、読んだことのある作家の本がちょこちょこランクインしていて、なんとなくそれぞれのランキングの傾向がわかって面白い(文春は来週発表ですね)。

毎年、新翻訳だか復刊だかの古い作品が必ず上位にランクインしてるけど、これまでそれで買ってみてぴんときたことがあまりない…。あと、謎解き重視のいわゆる本格ミステリーとか、刺激的な猟奇殺人ものもいつも人気が高いが、あまり興味がわかない。と言いつつ、今年もさっそく本屋で何冊か仕入れてきたりしている(笑)

いくつかでランクインしているコーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』は気になるが、コーエン兄弟が「ノーカントリー」のタイトルで映画化した作品がかなり評判良さそうなので、原作を読むか、読まないで映画を観るか大いに迷うところです。

さて、そんな中で「月刊プレイボーイ」の第1回ミステリー大賞翻訳部門の1位が、ヘニング・マンケルの『目くらましの道』というのが嬉しい。今年のランキング対象本で自分が読んだのは、数えてみたら14冊ほどにすぎないが、その中では一番満足度が高かった。
加えて、『病める狐』『市民ヴィンス』『殺し屋の厄日』『異人館』が私的ベスト5(順不同)といったところ。


<追記>

といわけで、nadjaさんのブログへの返答は『目くらましの道』にします。
今年刊行限定ですが。

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