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2007年10月

2007年10月 9日 (火)

信じる者は・・・。

首を長ーくして待っていた昨年の話題作がようやく公開。それにしても上映館数が少なくないか。これもテレビ局が映画館まで乗っ取ってる影響?

「パンズ・ラビリンス」(2006年 メキシコ/スペイン/米)
★★★★

Fi2621502_1e 1944年のスペイン。内戦で父親を亡くした主人公の少女オフェリアは、臨月の母親とともに、人民戦線の残党がゲリラ闘争を繰り広げる山奥にやってくる。彼女の新しい父親はこの地でゲリラ鎮圧の指揮をとる、冷酷で残忍なフランコ政権の大尉だった…。

オープニングで語られる地底の国のお姫様の伝説、そして血を流して横たわる少女の映像。それが、この物語の始まりなのか終わりなのか、かすかな胸騒ぎを抱えたまま、最後まで見入ってしまった。あのラストは、最近の映画としては意表をつくものかもしれないが、どこか懐かしい思いがして、それが何なのか思い出せない。
耳になじみやすい子守唄のメロディが何度も使われるところなんかは、昔の子供を主人公としたヨーロッパの戦争映画の伝統を踏んでいる気がするのだけども。

そうなのだ、これはファンタジー映画と名乗りながら、重きが置かれているのは内戦という現実の悲劇。そして、映画の中では特定の宗教に関係することはほとんど登場しなかったが、やはりギレルモ・デル・トロというカトリック圏の監督の作品らしく、宗教的な物語になっていると思う。
ラストは人によって解釈が違ってきそうだが、少女が見ていた牧羊神や妖精などはすべて、孤独感を募らせた少女の幻想だったのだと自分は解釈している。なぜなら映画に描かれるファンタジー部分は、おとぎ話や神話好きな少女なら十分に想像可能な範囲に留まっているからだ。しかし、だからといって絶望的な話ではない。少女は自力で苦しみから逃れる方法を見つけ、最後までそれを信じ続けたことが大きな慰めだ。
映画にテーマがあるとしたら、そこではないだろうか。

そして、物語のもう一人の主人公かと思わせるほど意味深に描かれていたのが義父の大尉。
軍人の家の生まれで、父親が戦死したときに持っていた壊れた時計を大切にしており、その時計をたびたび取り出して時間を確認する。スクリーンからカチカチという針の動く音は聴こえるが、その時計が本当に動いているのかどうかは疑わしい。そして、息子を持つことへの異常な執念…。
残忍な拷問をくり返し、平然とやってのけるのを見ると、彼の父親もまた彼同様に冷酷な男であり、息子に対してはいつも「おまえは弱虫だ」となじるしかない親だったのではないかと想像される。その結果、父親を絶対視するゆがんだ人格ができあがったのではないかと。映画のラストでちょっと引っかかるのは、いくら血も涙もない男とはいえ、私憤から子供に対してあそこまでするのかという点だが、彼もまた父親と同じ人生を歩まなければという、一種の妄想に取り憑かれた人間と解釈すると、納得させられてしまう。

2007年10月 7日 (日)

「あんたより罪の重いやつがいるのさ」

もう内容をほとんど覚えていないが、前作の『ボストン、沈黙の街』のほうが個人的には面白がって読んでいた気がする。

『ボストン・シャドウ』ウィリアム・ランデイ著/東野さやか訳
(ハヤカワ文庫 2007年邦訳)

Fi2621501_1e 1963年、ケネディ大統領が暗殺された同じ日。都市再開発が進むボストンの街では、連続絞殺魔による13人目の被害者が出ていた。長男は警官、次男は検察官、三男は空き巣を生業とする、アイルランド系のデイリー家3兄弟は、いつもは性格の違いから反目しあうこともあるが、それぞれが事件に少なからず関わることになり、さらに街を牛耳るイタリアギャングから目をつけられるという苦境の中で、次第に結束を強める。そして急遽浮かび上がってきた、前年の父親の死の真相…。

“ストラングラー”と呼ばれる実際にあったボストン連続絞殺魔事件をベースにしたクライム・サスペンス。と知ったのは、読み終えた後。複数の事件を並行して描くという手法はよくあるけれど、それにしても話の焦点がなかなか合ってこないなと思って読んでいた。不自然な端折り方もたびたびあるよう思ったし。
知っていれば、もっと面白く読めたと思う。
父親の死の真相解明がメインになる最後のほうは、エンターテインメント小説らしく、夢中になって読み進んだが、ストラングラー事件が現実の事件と知ってしまうと、このフィクション部分がいかにも作りものっぽく、妙に軽く思えてきてしまうのは仕方のないことだろうか。

この前映画になったゾディアックは、犯人とおぼしき人物が亡くなったこともあり事件は未解決のまま。ストラングラーのほうは犯人は逮捕されたが、証拠は自供しかなく冤罪説が根強いという。そのへんをこの小説ではどう扱っているかが、もう一つの読ませどころになっている。

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