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2007年9月25日 (火)

この街では毎日が最後のチャンス

1作目の『曇りなき正義』がカーティス・ハンソン監督によって映画化(2010年)されることが決定している黒人探偵デレク・ストレンジ・シリーズ第2弾。

『終わりなき孤独』ジョージ・P・ペレケーノス著/佐藤耕士訳
(ハヤカワ文庫 2004年邦訳)

家族のいないワシントンの探偵デレク・ストレンジにとって、少年フットボール・チームのコーチをすることは生きがいだった。少年たちを指導し、犯罪に手を染めないようにさせる。しかし、そんな彼の情熱をこの街は無情に嘲笑った。練習後、デレクが目をはなした隙に、チームの少年が何者かに射殺されてしまったのだ。己への怒りと深い哀しみを背負い、デレクは犯人を追い始めるが…。
(文庫の裏表紙より)


Fi2621499_1e 「1997年6月27日 ワシントンDCで拳銃を持った犯罪者によって銃殺された デニス・K・アシュトン・ジュニア 7歳に捧ぐ」
↑本書の扉にある言葉。ペレケーノスは前作でも、地元ワシントンDCで犯罪に巻き込まれて死んで行く貧困層の子供たち(主にアフリカ系)の多さと、それが1行のニュースにもならないことを嘆いたが、今作はそこにテーマを集中して書き上げた作品。

自分をコケにしたからという理由だけで人を殺す若者たちはどうしようもなくひどいやつらだ。しかし、ペレケーノスの小説は、そんな極悪人にも、親がいて友達がいて、どこか人間らしいところを持っていることを必ず描く。一方で、強さと優しさを備え、完ぺきなマン(男)に見えるストレンジにも、人にはおおっぴらに言えない欠点を持たせ、弱さを持った人間に変わりがないことを描く。

ペレケーノスの人間に対する優しい視線が好きだ。今作は読み終えた瞬間に、胸がいっぱいになった。軽い読み物と侮るなかれ。綺麗ごとと言うなかれ。こういうストレートな主張をもった小説もあるべきなんだと思う。
そして、音楽の使い方は相変わらず、自分の趣味のど真ん中。音楽の趣味が合う人は、それだけで信用してしまうという、別の作家の小説にあった言葉をまた思い出す。

ストレンジとは、ウエスタン映画好きという共通の趣味を持つ相棒のクインが、ジェイムズ・カルロス・ブレイクの小説を読んでいるシーンが出てくる。ペレケーノスもやはり意識しているのだろか。作風が似ているし。あと、今作登場した友人の娘婿が、次作からレギュラーとなりそうな予感で、ちょっと楽しみ。

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