« RATATOUILLE(rat・a・too・ee) | トップページ | 今年2本目 »

2007年8月 8日 (水)

コレクター対決

1950年代に出版され、名作とうたわれたサスペンスの新訳復刊だそう。

『ハマースミスのうじ虫』ウィリアム・モール著/霜島義明訳
(創元推理文庫 2006年新訳)

Fi2621486_1e 独身の青年実業家(ワイン商)として優雅な生活を送っているキャソン・デューカーは、知人の銀行家が珍しく深酒をしているのを見る。銀行家から事情を聞き出すと、見知らぬ男からいわれのないことで恐喝され、大金を払わされたという。兼ねてから犯罪者などの“珍種の人間”に並々ならぬ関心を寄せるキャソンは、わずかな手がかりをもとに卑劣な男を探し出し…。

単純なストーリーの中に繊細な味わいを隠しもった話で、確かにこれ、英国サスペンスが好きな人には受けそうな作品かもしれない。イギリスの作家は、エンターテインメントの中に人間のいやらしさをそっと紛れ込ませるのがうまいなあ。

物語は犯人を追うキャソン側と、キャソンに見張られていることに気付いていない犯人側から綴られる。犯人側の物語パートで、犯罪の動機らしきものが合間合間に語られていなかったとしたら、冤罪を疑ってみたくなるような、後味の悪い話になっていたのではないか。読む人によって印象は違うだろうけど、実際、今のままでも後味は微妙で、残酷でもあり、滑稽でもある。

犯人は自分を選ばれし人間だと思っている鼻持ちならない男なのだけど、“珍種の人間”コレクターのキャソンも、正義感から犯人探しを買って出た半面、どこかで人を見下しながら、金持ちの暇つぶしで犯罪者狩りをやっているようなところがあって、どっちもどっち、誰にも共感してはいけないような、いや、共感したくないという気分にさせられるのが、この本の面白さか。もちろん、作家はそれらしきものを十分意図して書いているはず。

« RATATOUILLE(rat・a・too・ee) | トップページ | 今年2本目 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1175528/28622789

この記事へのトラックバック一覧です: コレクター対決:

« RATATOUILLE(rat・a・too・ee) | トップページ | 今年2本目 »

インデックス

無料ブログはココログ