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2007年7月 9日 (月)

私家盤・元気になる音 その33

ジャッキー・マクリーンmeetsゲイリー・バーツ。キャリア的には一世代ほど違うアルトサックスの共演。2人ともあまりアルトアルトしていないところがお気に入り。バックのピアノ、ドラム、ベースはこの頃のマクリーンのバンドメンバーかな。技量的にはそれほど秀でた演奏ではないかもしれないが、アルバム自体は好き!
1973年録音のスティープルチェイス盤。

Jackie McLean & Gary Bartz 『Ode To Super』

Fi2621480_1e アルバムに出会ったのは30年近く前。当時はゲイリー・バーツのサックスに惹かれており、自分もこんなソロが吹けたらいいなと、3、4曲はきっちり採譜もしてみた。ジャッキー・マクリーンについては名演と呼ばれるものが他にいろいろあるし、ここでもソロフレーズをちょっと聴けば、ああいつものマクリーンだと分かる。でも、ゲイリー・バーツがこれだけオーソドックスな4ビートジャズをやっているアルバムは珍しいと思うので、貴重なのです。

1曲を挙げるとしたら、アルバムタイトルにもなっている「Ode To Super」。少し憂いを帯びたドラマチックなナンバーで、2人のサックスによく合ってる。8小節ずつ交互に吹くテーマ部分でのマクリーンの音色のもつ説得力はさすが! バーツはソロがいい。何かのミュージカルの曲らしく、曲の終わりで2人がいきなりユニゾンで歌い出すんでたまげる! 微妙に合ってないのにかっこいい。ニヤニヤする。

後は、マクリーン作曲のファンキーなナンバー「Great Rainstreet Blues」、そしてラストに入っている「Red Cross」もなかなかよいです。アルトサックスのバトルといったらパーカーの曲! いやが上にも盛り上がるね! たまに聴くと、やっぱり魔法だと思う、パーカーのアップテンポな曲は。誰が演奏していても楽しいもんね。


で、派手ではないが妙な色気のあるゲイリー・バーツのこと。

私はもともとテナーサックスが好きだった。でも、女が演奏すると身体的にハンディが大きいかもしれないと思い、最初に始めた楽器はアルト。これが後で思うと、アルトもテナーも使う身体能力にそれほど違いはなかった。むしろやりたい楽器にたどり着くまで、ずいぶんな遠回りをした。頭の中にはいつもテナーの音やフレーズが鳴っているのに、手にしている楽器はアルトというのは一種の同一性障害みたいなもので、やっぱりどうしてもアルトには馴染みきれずにテナーに転向したときには、自分で言うのも変だけど「けっこうまともにサックス吹けるじゃないか」と驚いた。水を得た魚の心境?

というよりは、単にテナーよりアルトのほうが難しい楽器ってことだと思う。テナー好きということもあり、憧れのテナー奏者はたくさんいたが、アルトの場合は、あの人は音色は好きだけどやってる演奏スタイルは古くさい、または個性的すぎる。あの人はフレーズは面白いけど音色はいまいちだなどと、理想のアルトを求めていちいち難癖つけながら聴いていた。今から思うとおバカな話。しかし、それだけ個性が出やすく、アクが強くなりがちな楽器なんじゃなかろうか。
また、さらにアルトという楽器においてはチャーリー・パーカーの影響が絶大すぎ。多くのアルト奏者が、時代を経て曲調はモダンになっても、ソロのフレーズとなるとビバップ時代からあまり変化していないというのが、コルトレーンをきっかけにジャズを聴き始めた自分には大いに不満だった。

そんなこんなでアルトを学んでいたときは、モード以降に登場した知名度的には二流・三流のアルトの人ばかりを漁って聴いていたのだが、ゲイリー・バーツを見つけたときには、これぞ私が手本とすべきアルト! と浮き立った。コルトレーンのフレーズをそのままアルトでやってしまうような人だが、ときどきエモーショナルで美しいメロディを聴かせる。バーツを二流と言っては失礼かもしれない。しかし、少なくとも私が熱心にジャズを聴き始めた70年代終わりには、人気のあるアルト奏者といったら相変わらず昔からの人たちばかりだった。

しかし、そのゲイリー・バーツのアルバムが、最近やたらCDで再発されているんで正直驚く。当時よりよっぽど入手しやすいなんて! 今聴いて面白いアルバムばかりではないと思うんだけどね。

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コメント

私はジャズよりジャンプ・ブルースを聴く事が多かったので、どうしてもアルトに馴染んでますね。でもテナーの方が「なんとなく」幅が広い気もします。しかし、人間「馴染まない」事はあくまで馴染まないんですね。自分の耳が感じる事って大事だとつくづく思います。

>k.m.joeさん1週間ほど留守していました。バンドでサックスやろうとすると、テナーは1本でも活躍できる音楽の幅が広く、アルトだとホーンセクション以外ではやれる音楽が限られるかなと思います。すごーくうまい人などは別ですが。人の音楽や音の好みの違いは面白いですね。環境だけでなく、生まれもっての生理にも関係している気がするのですが、どうだろう。

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