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2007年6月

2007年6月24日 (日)

私家盤・魅惑のエロサウンド その15

前々から言っているけど、コール・ポーターの曲が大好きなもので、その曲を集めたオムニバスアルバムなどもつい買ってしまう。
これはリー・コニッツが、アルバム丸ごとコール・ポーターの曲をやっている1974年録音の、ベースのレッド・ミッチェルとのデュオ作品。なんというか、いい意味で、ゆるーいアルバム(リラックスしているとも言う)。しかし演奏は素晴らしい。

Lee Konitz & Red Mitchell『I Concentrate On You ーa tribute to Cole Porter』

Fi2621475_1e 好きなホーン奏者というと、やはり黒人が多いのだ。ピアノやギターになるとその限りではない気がするが、ホーンの場合はより人間の肉声に近く、もともと黒人ボーカルが好きだから当然の嗜好かもしれない。
しかし、例外的存在がリー・コニッツ! いやむしろ、4ビートジャズのアルトサックス奏者の中ではいちばんよく聴いていた。それも、代表作として必ず取り上げられるクールジャズ時代の作品じゃなくて、もっと後の時代のやつ。
そもそも持っているジャズアルバムは1960年代後半から70年代のものが多い。例えばソニー・ロリンズにしても、演奏が充実していたのはもっと前の時代というのは承知しているが、やはり70代を聴いてしまう。ほぼオンタイムで聴いてきたサウンドだし、録音がいいというのが大きい。

んで、この時代のリー・コニッツの何がいいかというと、音色もフレーズも両方、すごく自然で無理がなく、気持ちにしみ入ってくるようなところ。それも人間の声によるおしゃべりのように。サックスはマウスピースに装着したリードに舌を当てて、音を切ったり、音圧や音量もコントロールして、それをタンギングというのだけども、どうも私はリー・コニッツのタンギングに惹かれているふしがある(笑)。

コニッツのサックスのしみ入り方は、例えばビリー・ホリデイの歌を聴いているときのしみ入り方とよく似ている。暗闇の中に1本のロウソクの光が灯っているのを見つめているような感覚。こういう少人数編成の演奏だと余計に際立つ。「Easy To Love」なんて、ちょっとテーマを崩した程度の短い演奏なんだけど、昔、これを聴いた途端に泣きそうになっていた記憶があるのだが、あの時はいったいどういう心境で聴いていたのだろうか。

水石とはマニアックな。

二度のMWA賞に輝く実力派が贈る、
心ゆさぶる感動のミステリー(文庫の帯より)。

『ブラック・ウォーター』T・ジェファーソン・パーカー著/横山啓明訳
(ハヤカワ文庫 2003年邦訳)

Fi2621474_1e オレンジ郡の若き保安官補が自宅の外で頭に銃弾を受けた瀕死の状態で発見され、その妻はバスルームで、夫の銃により射殺されていた。捜査が無理心中説に傾いていく中で、納得のいかない殺人課女性巡査部長マーシ・レイボーンは、夫婦が身分不相応な贅沢な暮らしをしていたことから、何かの事件に巻き込まれたのでないかとの疑いを深めていく…。

昨年読んだ『サイレント・ジョー』が、個人的には今ひとつしっくりこなかったものだから、再チャレンジしてみたT・ジェファーソン・パーカー。こっちは普通の、子供を育てながら働く女性が主人公だから、もう少しなじめるかなと思ったが、やはり、どうにも生理的に合わないというか・・・。内容は嫌いじゃないし、巧い小説だとは思うけれども、自分の場合は、シリアスな中にもユーモアとか滑稽さとか皮肉とかが行間から感じ取られる、もっとドライな感じのミステリーのほうが好きなので仕方ない。となると、やっぱり英国ミステリーのほうがしっくりくる確率が高いんだな。

新作と思って文庫を買ったら、シリーズものの3作目ということで、それも失敗した。しかし、前作2作が講談社文庫で、これはハヤカワ文庫なんだもんなあ…。それでも機会に恵まれたらもう1冊、パーカーの別のを読んでみようかしら。見過ごせない魅力をもつ作家ではある。

2007年6月23日 (土)

運に翻弄される人々

先週の公開日に観た。実在の有名な連続殺人事件を取り上げた、デヴィッド・フィンチャー監督のクライムサスペンス。

「ゾディアック」(2006年 米)
★★★★

Fi2621473_1e 1969年の独立記念日に、カリフォルニアで車で密会中の男女が銃で襲われる。犯人はその後、3つの新聞社に声明文を送りつけ、一緒に添えられた謎の暗号文を紙面に掲載しないと、また殺人を決行すると脅迫してきたのだった…。

結局この事件は、有力な容疑者がいるのに決定的な証拠がないまま、その容疑者が病死したことによって未解決のままとなるわけだが、映画ではその間、約20年間、犯人解明にのめり込むあまりに家庭を顧みなくなる新聞社の風刺漫画家(ジェイク・ギレンホール)、アル中となり堕落していく名物記者(ロバート・ダウニー・Jr)、捜査班が縮小されても執拗に事件にこだわる刑事(マーク・ラファロ)の3人を中心に、犯人を追う側の人間模様が描かれる。

この映画がもしフィクション小説だったら、自分の好みのど真ん中! いつもこんな内容の物語が読みたくて、警察小説や探偵小説を漁っているといっても過言ではない。演じている俳優たちが渋いねえ。メインの3人以外の捜査関係者も、出番は少ないのに、それぞれ人間的な奥行きを勝手に想像させる。犯人が、本物の知能犯なのか、単に運に恵まれただけなのか、そのあたりを曖昧にしているのが良いのだ。突き放したような終わり方も、作りものぽくなくて良い。

しかし、映画館で観ているときは何度も睡魔に襲われ、いくつかの台詞を聞き逃してしまった…。体調が今ひとつだったろうか。

現実の事件はいまだ解決していないが、映画の中では、犯人が掛けてきた電話の声と、その後に登場する人物の中に明らかに同じ声の人物がいることによって、犯人が決定づけられている。と思ったが、一度観ただけなので定かではありません。

最初にカップル殺傷事件が映し出され、次に新聞社に場面が変わるときに流れるサンタナを初め、時代ごとの流行曲がたくさん、さりげなく使われており、その選曲もまた、ずばり好みだった。

一見さんお断り

映画が、日本では娯楽のための単なる消耗品として認識されていた時代を思い起こさせる、ある意味で潔い映画。大笑いはしなかったけどくすくす笑えた。

「舞妓Haaaan!!!」(2007年 日本)
★★★★

実は、ほんのわずかしか登場しない北村一輝を目当てに観にいった。ものすごーくキモイ役と聞いて、見ないわけにはいかない。いいスパイスになっていた(笑)。こういう役はこのくらいの出番がちょうどいい。

内容自体は、予告が始まった時から近くの席に座っていた二人組が気になって、いまいち集中できなかった。一人は明らかに映画館に不慣れである。とにかく落ち着きがないの。お菓子が入っているらしい袋をガサゴソ。映画本編が始まっても長々とおしゃべり。音響が静かな場面になると話を止めるのが余計に気になるじゃないか。腕を突き出し、スクリーンを指差しながら笑ったり話したりしているのも横目に目障り。たまに携帯電話を取り出し画面確認する光が眩しい。おまけにその携帯のストラップが鈴付き!ときている。ここに至ってはむしろ可笑しい。何をやっても間が悪い人っているよね。って、そういう問題じゃないか…。

京都の舞妓・芸子遊びに憧れる食品会社勤めの男をハイテンションに演じた阿部サダヲと、その男にライバル視される役の堤真一がともに良かった。この二人の掛け合いが楽しい。
宮藤官九郎の脚本。映画の中にもカメオ的に登場する植木等へのトリビュート映画という側面もあるようだ。そういえば、亡くなったときにテレビで追悼として放映された「日本一のホラ吹き男」に、テンポのよい展開がよく似ていた。

2007年6月11日 (月)

魔法のブラウニー

DVDで鑑賞。
メキシコのアカデミー賞で11部門を獲得した異色コメディーだそう。

「ダック・シーズン」(2004年 メキシコ)
★★★★


Fi2621471_1e 退屈な日曜日。留守番を言いつけられた14歳の少年と、その親友の少年、オーブンを借りにきた隣に住む年上の少女、ピザを届けにやってきた宅配人の男性という、ちぐはぐな4人が繰り広げるにわか○○パーティー…。

製作総指揮にアルフォンソ・キュアロンが名前を連ねていたので借りてみました。
全編モノクロ映像で、インディーズ風味な映画。
最初は険悪だった見ず知らずの4人(親友同士の少年は別として)の関係が、互いが抱える孤独な悩みを知ることで、打ち解けていく。なんてことのない話なのだが、見え見えの優しさで涙を誘う映画よりよっぽど芸がある。
コーラとポテトチップをお供にテレビゲームに興じるしか暇つぶしの方法が見つからない少年たちが、年上に対しても思いやりを示せるというのは、想像力が育っていないと無理なんじゃなかろうか。パーティーがお開きとなって、最後に一人ずつ去っていくところがとても良かったので、★1個プラス。

監督・脚本のフェルナンド・エインビッケは、MTVミュージックビデオなどで実力をつけてきた1970年生まれ。私が漠然と感じている日本人のこの世代の人に共通する感性を感じる。

2007年6月 7日 (木)

余情

ひさびさに百鬼園先生。最高。

『百鬼園随筆』内田百閒著
新潮文庫 平成14年(昭和8年)

Fi2621470_1e 代表作の一つらしいです。そんなのを今ごろようやく読みました。
昼休みに職場近くの、あんまり大きくない書店で目についたものを買うことが最近多いのですが、これもその1冊。大きくない書店だと、本選びに迷わないという良い点があります。

短編小説風随筆。とにかく面白いという言葉以外に、感想を述べるうまい言葉が浮かびません。浮かんでくるのは内田百閒の人柄そのものなのですが、どんな人柄なのか、うまく言葉で表せません。
竹中直人が以前よく「笑いながら怒る人」という芸をやっていましたが、百閒先生は、ものすごい形相で人を睨みつけながら、今日の晩は何を食べようかなと考えているような可笑しさがあります。しかし、そんなに単純なものでもないような…。やっぱりうまい表現が出てきません。

まとまって載っている借金生活の話が、どうしても印象に残ります。その中で、森田草平とのやりとりを綴った「大人(たいじん)片伝」は、読みながら電車の中で顔がにやけそうになるのを堪えるのに難儀しました。

文庫は新字新かな遣いにしたもの。前に福武文庫で出ていた作品も現代かな遣いでした。案外雰囲気は損なわないものですね。
表紙の絵は芥川龍之介が描いた百閒先生図。

2007年6月 6日 (水)

5月に観たレンタルDVD

ネタバレ注意。

Fi2621469_1e 「ヨコハマメリー」(2006年 日本)
★★★★
戦後50年、横浜の伊勢佐木町で娼婦として立ち続けた“ハマのメリーさん”の半生を、さまざまな人々の証言をもとに明らかにするドキュメンタリー。

白塗りの顔に白いふりふりドレスの老女が、夜はビルの廊下に置かれた折り畳み椅子で寝泊まりしている姿は痛々しい。年のせいで背丈が縮まっているうえに、そのような生活を続ける中で背中も湾曲してしまっている。
といって、彼女を街の人たちが見て見ぬ振りをして通したかというとそうではなくて、彼女のプライドを傷つけない程度にさりげなく援助しつづけた人々がいたというのが心温まる。
一時恋人だった米軍将校が忘れられず、その帰りを心のどこかで待ち続け、白塗りはいつしか彼女の「仮面」となったという山崎洋子の説は説得力がある。
きっと大抵の人は、そういう物語が好きだ。
白塗りをすることで、彼女は時間を止めたとも思う。
メリーさんが姿を消してから、街自体が変わったように見えると語るカメラマンの話も印象的だ。
若い頃は男娼をしていたというシャンソン歌手の永登元次郎をはじめ、登場する証言者たちが、これまたかなり個性的な面々。いつも刺激にあふれてい たという大衆酒場「根岸屋」の話が面白かった。


「隠された記憶」(2005年 仏/オーストリア/独/伊)
★★★☆
妻と一人息子と暮らすテレビの人気キャスター、ジョルジュのもとに、ある日、送り主不明のビデオテープが届く。そこには彼らの家を正面から、固定カメラによって延々と隠し撮りした映像が映っていた…。

「ピアニスト」のミヒャエル・ハネケ監督によるストーカー・サスペンス。
住宅街の通りが映っているだけの最初のシーンに、少しイライラさせられた。しばらくしてそれは犯人から送られてきたビデオテープの中身だと分かるわけだが。
人間の心に潜む「やましさ」をあぶり出す映画。主人公ジョルジュが爆発させる怒りはやましさの裏返し。そのやましさは、彼自身の子供の頃の出来事に由来するものであるとともに、彼が恵まれた生活を送っているフランス人であることから感じるものでもある。
最近のフランス映画は、アルジェリア移民に関係したものが多そうだ。
ニワトリのあの場面は、私も子供の頃に一度目撃したことがある。しかし、誰かから聞いたことを自分で見たことのように錯覚している可能性もある。


「もしも昨日が選べたら」(2006年 米)
★★★★☆
建築士のマイケルは家族のためにと懸命に働くうちに、家庭を顧みない仕事人間になっていた。そして、ある日、人生も自在にコントロールできる万能リモコンを手に入れたことで、彼はそれを利用して一足飛びに出世の夢をかなえようとする…。

アダム・サンドラー主演のヒューマンコメディ。
サンドラーの映画は、レンタル店で目に留まると必ず借りてしまう。
今回は前半こそ笑えるが、話が進むにつれて冗談ではすまない切ない話になっていき、涙腺がやばかった。主人公が手に入れた万能リモコンは、時間を一気に早送りできるが、後戻りしてやり直すことができず、操作記憶機能のついたリモコンがやがて暴走し始めるのだ。ピンポイントでしか生きられない人生なんて悲しすぎる!
でも、サンドラー映画ですから、最後はちゃんと軌道修正するのです。
時間が飛んでいる間も主人公は普通に生活しているわけで、それがパーマンの身代わりロボットを思い出させた。かなり例えが古いけど(笑)。
クリストファー・ウォーケンがリモコンを提供する思いっきり怪しいショップ店員役。こういう役のウォーケン、大好き。もう最近はワンパターン気味だけどさ。それでもこの味は他の人では出せない気がする。

2007年6月 4日 (月)

おごり極まる。

日本で一番だったら何でも許されるのか。
とゆうか、何がいったい一番なんだよ。

今日、NHKスペシャルで東京湾の生き物特集を見てから、チャンネルを変えたら
スマップの番組をやっていて、過去に外国人ミュージシャンと共演したときのSP
ということで、うっかり見てしまったのだ。
もう屈辱的! 許しがたい。
へたくそなんてもんじゃない。こんなもの電波で流すな。
この人たち、最近ますますもって調子に乗りすぎ。
身の程知らずにも程度ってものがある。
そうやって敵がどんどん増えていることを自覚してるんだろうね?
そのうち暴動が起きるぞ!

はあーなんでこんなことで頭に血をのぼらせなきゃいけないのだか。

2007年6月 2日 (土)

1919-1963

黒人差別が根強く残るアメリカ南部の田舎町を舞台とした大河警察小説。

『警察署長』スチュアート・ウッズ著/真野明裕訳
(ハヤカワ文庫 1987年文庫化)

Fi2621467_1e ジョージア州デラノ。綿花農業を営むウィル・ヘンリー・リーは、象虫被害が広がる畑に見切りをつけ、町で初めての警察署長に立候補するために、デラノ銀行頭取で市議会議長でもあるヒュー・ホームズの元を訪れる。実は警察署長の職を切望していた男はもう一人いたのだが、議会で選ばれたのは性格が真正直で知られるリーのほうだった…。

これは面白かった。名作といわれているらしいが、さすがに文句のつけようがない。1981年のMWA最優秀新人賞受賞作だが、新人とは信じられないほど、話の運びが巧みで、最後の章の締めくくりに満足して余韻に浸る。
「大河警察小説」とは文庫の紹介にあったコピーだけど、言い得てる!

核となるのは、40年以上に及んだ大量殺人事件の解明であるが、それに絡ませて、実にさまざまな物語が並行して描かれる。それらは、町が形成されてから半世紀に及ぶ町そのものの歴史であり、町を育ててきた一人の名士の一生であり、3代にわたる警察署長の話であり、息子は政治家の道を歩むことになるウィル・リー一家の物語であり、フランクリン・ルーズベルトからジョン・F・ケネディに至る民主党の歴史であり、
公民権運動の背景となった南部における黒人の境遇であり・・・。
そして、一発逆転、因果応報ともいえる結末。
ハラハラするところもたっぷりで読み応えがありました。

ずいぶん前にドラマ化されたものがNHKでも放映されたらしいが、覚えていない。キース・キャラダインが犯人役だったらしい。当時ファンだったのに、気づかず見落としていたら残念だ。

スチュアート・ウッズは何年か前に『草の根』というのを読んだが、その小説の主人公は、この小説に登場する初代警察署長ウィル・リーの孫。こっちもすでに内容はよく覚えていないが、『警察署長』のように歴史が絡んだもののほうがたぶん好みだ。

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